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彼女が遺していった圧倒的な世界

2017年05月27日 | 映画
「僕とアールと彼女のさよなら」2015/アメリカ
  監督:アルホォンソ・ゴメス=レホン
  脚本:ジュシー・アントリュース(自作の小説を脚本に)
  出演:トーマス・マン(グレッグ) オリビア・クック(レイチェル) RJ・サイラン(アール)

映画大好きな男子高校生ふたり(グレッグとアール)は名作映画をパロディ化した作品を作って楽しむ日々を送っていた。
そんな中、同級生の女の子(レイチェル)が病に侵されていて、グレッグは母親に彼女の話し相手になるよう促される。
グレッグもレイチェルもとてもぶっきらぼうで、訥々と緩く緩く相手を理解していく。
ふたりの短い放り投げのような言葉が虚を突いてくるときがある。
余命は長くないことを悟っているレイチェルの淡々とした覚悟の有り様がハっとするほど独自で
こちらの固定観念がぐらついてくる。

ラストにとてつもなく驚く。
レイチェルはグレッグとアールの初めての完成されたオリジナル作品を観ながら満足して静かに逝っていく。
死後、グレッグはレイチェルの部屋を訪れて
そこで彼がまず発見したものは本だった。

その分厚い本を開いてみると・・・

え、え、レイチェルは本の中に彼女の世界を構築していた。丁寧に緻密に彫られたページ


息もできないとはこういうことを指すんだな、と実感した瞬間。
病によって生命を閉ざされる前にレイチェルが残しておきたかった自分の生きた足跡を
ここにしっかり刻み込んでいた。
部屋の隅々にも豊かで繊細・可憐な思春期の情感が溢れていた。
創作過程の心情を思うと愛しくてたまらなくなる。

死という重くなりがちなテーマを「こんな描き方もあるんだな」と強いインパクトを受けた作品だった。
(確か、これジャンルがコメディに入っていたけど?)
コミカルに飄々と描きながらとてつもなく豊穣な世界を導きだしている。
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