津留崎直紀 Violoncelliste

フランス在住34年のチェリスト

都響 堤剛 野平一郎 ブーレーズ

2012-01-25 | 音楽
昨日はサントリーホールで野平一郎指揮で自作曲の"triptique"とチェロコンチェルト「響きの連鎖」を聞いた。
「3部作」はともかく「響きの連鎖」、、、なかなかな題名をつけるなと脱帽。
この曲は実は氏から初演時のDVDをもらって聞いていたので初めてではない。
後半は指揮者が替わって杉山洋一指揮でブーレーズの「エクラ/ミュルチプル」

あのサントリーホールというのはいつ行ってもあまり感心しない。
音がよそよそしいというのか、(周りの環境も同じくよそよそしいのが居心地を悪くする)
なんだか遠くから聞こえてくるようでヴォリュームボタンがあったら回して強くしたいようなもの足りなさがある。
だんだん聞いているうちに慣れてくるのだが。
そういう訳で野平氏の1曲目は慣れるのに時間がかかった。
特に弦楽器の響きがもう一つというか、歯切れがないというか、曖昧で細部が聞こえてこない。
曲の真ん中あたりからだんだん、彼の音楽が聞こえて来た。(僕には)

「響きの連鎖」も同様な印象だった。チェロがあれっと思うくらい小さい。
打楽器は鮮明にむしろ生々しく聞こえてくるのだが、、、
しかし、これも堤氏がだんだん音が出て来たのか、僕の耳が慣れて来たのか次第に気にならなくなった。
ただし、時折金管などにかき消されたするのはチェロという楽器の限界なのか、バランスなのか。
何しろこの2曲とも後期ロマン派ばりの大編成オケだ。

後半はブ―レーズ。
この曲に限らず、ブーレーズの曲名はいつも難解だ。
カタカナで書いても日本語では意味をなさないと思うがどうだろう。
「炸裂 / 複合」とでも訳すか?
炸裂は解りやすいが、multipleと書けば英語がわかる人は少なくともわかるはずだ。
要するに「マルチ」。かけ算の意味でもある。ひょっとして「かけ算」そのものなのか。
プログラムノートを読むと砕け散ったものが様々に変化して行く様のようなので、かけ算の概念はあたっているかもしれない。
"Double"と言う曲もある。「ドゥーブル」って言うんだろうか。綴りを見れば一目瞭然「ダブル」だが、
これにも様々な意味合いがある。この曲の場合はある種の「変奏曲」。
バッハのパルティータなどでも使われている言葉で、バロック時代は「変奏曲」の意味であった。
Multipleも同じような意味で使っているのかもしれない。

ブーレーズはいつも思うがその鮮烈でクリアーな響きに冒頭から魅せられる。
しかしだんだん途中で飽きてしまうのです。
お前はよく解っていないからだと人に言われそうだが正直な感想。
大体、何がどのように"multiplier"(かけ算)されているのか全くわからない。(僕には)
しかし、それにしてもなんと言う素晴らしい響きだろう。
増幅したギターやマンドリン(あるいはバラライカ?)ハープの響きが印象的。
もちろんピアノ、ピアノプレパレ、チェレスタなども。
しかしここでも、前に並んだ9人の弦(全部ヴィオラ?)も曖昧な、覇気のない音がしていて残念だった。

それにしても、パリやリヨンでこのプログラムだったらおそらくガラガラだろうが、、、
あの大きなサントリーホールが7割がた埋まっていた。東京って本当に凄い町だと思う。



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オーケストラ コンソノ第1回コンサート ハイドン(ハ長調)チェロコンチェルト

2012-01-23 | 音楽
前回も書いたように今週始めから楽器のなりが悪くて気になっていたが、
木曜日についにおかしいと判断。行きつけのSさんに電話してアポを取ろうと思ったら全然出ない。
そうだ、木曜は定休日だと気づく。あらららっっ、と思ったが時既に遅し。
木曜は手を壊さない程度の音階練習であきらめる。
これで無理してさらうと絶対手を壊す。その失敗を今まで一対何回やったか。
馬齢58年を重ねてやっと手に入れた知恵だ。
20日は修理で半日以上つぶれて、夕方から練習再開。
もう出来ているのだが、何回か通し練習が絶対必要だ。
これはどんな精神状態、肉体状態でも本番で最低限の事を出来る為の貯金練習である。
この段階ではもう音楽的にも、技術的にもいっさい変更はしない。
してはいけない。
ところがこういう時に必ずと言っていいほど、良い考えやいいフィンがリングを思いつくものだ。
精神はハイになっているので、頭の回転が良くなっているせいだ。

土曜はコンソノと最後の会わせ。
アマチュアのオケの特権で3回も合わせをつき合ってくれる。
プロオケだったら多くて1回、ゲネプロだろう。
だけど、ハイドンのようなスタイル的にいろんな取り組み方がある曲をそんなんでは到底無理。
だけど、それはプロオケの自己増長と言う面がある。
今回は指揮の柏木さんには越権行為だが、かなり僕の要求をオケに聞いてもらった。
フレーズの作り方、バトゥート(battuto)奏法を入れた弾き方、ボーイングレガート、、、
基本的にヴィブラート無しで、(自分は少し使うのだが)全てのエクスプレッションは右手で行う。
ヴィブラートをかけない分あらゆる弓のテクニックを駆使して、表現的に演奏しなければならない。
よく、ヴィブラート無しを誤解して「真っ白」な無表情な音楽が目的と思う人がいるが(最近は減ったけど)
全く反対である。ヴィブラートという「猥雑物」を排除して音楽の本質が聞こえるようにするのが目的。
ただし、あらゆるテクニックを駆使してと書いたように、そこには当然「ヴィブラート」という選択肢も残っている。
それをどういう所でどういう風に使うかと言う事が問題になって来る。

さて、昨日の本番会場第1生命ホールはなかなかきれいなホールだ。
音響的には最上級とまでは行かないし、むしろちょっと弾きにくく感じたが、僕はホールの音響は絶対気にしない事にしている。
何故かといって気にしてもどうしようもないからだ。
ガルネリカルテットの本にも同じような事が書いてあって、彼らも会場に合わせて弾き方を変えたりナンダリしないそうだが同感である。
会場入りしてからわずか数時間でそんな事を出来ない。少なくとも僕には。
結果的にはなかなか良い音響で、オケとのバランスも良かったようだ。

終わってからしきりに話題にもなり、FBにもコメントが載った僕の自作カデンツァのいたずらの種明かしをしましょう。
前半部と終わりは、ハイドンの自筆譜から一緒に見つかった当時の作者不明のカデンツァを使った。
質素だが様式的にも非常に良い感じの名作だ。
これを増幅して大体同じ様式観で自作カデンツァを数年前に弾いた時に書いたものを少し書き換えて弾いた。
さて、そこでちょっといたずらをしたくなった。
ハイドンの愉快な気分をちょっとオーバー気味にしてやろう。
自作の真ん中にさらに、昨日のプログラムの「オールC」のパロディーを入れた。
弾いた順番に、「ジュピター」(フィナーレ)「運命」(フィナーレ)、シューベルト「第9 グレート」(フィナーレ)
最後にちょっとだけベートーヴェン「第1」のアレグロの冒頭。言うまでもなく全部ハ長調の交響曲。
そして、何よりこれらの名作は全て「パパハイドン」から何らかの、または大きな影響から生まれているという含みもある。
偉大なりハイドン。

この部分は1週間前くらいに考えが浮かんだので本番は結構プレッシャーだった。
それを悟られては困るというのもプレッシャーだったし、ゲネプロでもこの部分は弾かなかったのでぶっつけ本番。
敵を欺くには味方をもである。
シューベルトは冒頭部チェロパートをそのまま弾いたが、これがちょっとした難物。オケで弾くと大勢でひくのでなかなか巧く弾けない。
大体オケではちゃんと弾けたのかどうかすら解らない代物。昨日はちゃんと弾けて嬉しかった。
こういうパロディーめいたものでも随分まじめに何度もさらいました。けどちょっとトチッた。やっぱり。

あの美しいアダージョは、アゴギークを随分使える所までオケが着いて来てくれるようになって気持ちよく弾けた。
このアダージョはチェロコンチェルトの緩叙楽章の中でもとびきりの名作だと思う。
コンソノの皆さん、柏木さんありがとう。

フィナーレは僕の悪い癖で速すぎないようにと思いつつやっぱり凄い速さになった。
多分2分音符76くらい。最大瞬間スピードは80近くなってたと思う。
まあ、軽快で良かったんじゃなかったかな。
最後のソロで16分音符が何個か抜けてしまったのは少し焦った。
柏木さんに後で随分からかわれたがしょうがない。
あの最後は難しい!
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楽器修理

2012-01-20 | 音楽
明後日本番だというのに楽器の調子が変なので朝から楽器屋に行く。
剥がれていた。
どうしていつもこういう本番前のタイミングが悪い時に、、、

結構なっていたので剥がれているとは思わなかったが、、、
ほんの10センチほど。どうも音の出方がクリアじゃないとは思っていた。
これで無理して続けていると、手を痛める。
というか少し手が疲れ過ぎだとは思っていた。
というか、手がだるくなるのはおかしいのだ。

ただ貼り付けるだけなので修理というほどではない。
万力とニカワさえ持っていれば誰にでも出来るくらいだ。
リヨンでは一応道具があるのでやった事がある。
東京でも、万力を買っておいた方が良い。
本番の前日とかに剥がれた時とか、楽器屋さんに行く時間がない時は、
応急処置が出来る。

ニカワは場合によって要らない。お湯を剥がれている所に刷毛で塗って、
ニカワを少し溶かす。
それを万力でとめて乾くのを待てば良いのだ。
ニカワはつけすぎてはいけないそうだ。
強く貼付けすぎると板は動くので、剥がれずに割れる。
そうなると本当の修理。それも高額の大修理。

とにかく、それで今日は半日以上それでつぶれる。
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楽器修理

2012-01-20 | 音楽
明後日本番だというのに楽器の調子が変なので朝から楽器屋に行く。
剥がれていた。
どうしていつもこういう本番前のタイミングが悪い時に、、、

結構なっていたので剥がれているとは思わなかったが、、、
ほんの10センチほど。どうも音の出方がクリアじゃないとは思っていた。
これで無理して続けていると、手を痛める。
というか少し手が疲れ過ぎだとは思っていた。
というか、手がだるくなるのはおかしいのだ。

ただ貼り付けるだけなので修理というほどではない。
万力とニカワさえ持っていれば誰にでも出来るくらいだ。
リヨンでは一応道具があるのでやった事がある。
東京でも、万力を買っておいた方が良い。
本番の前日とかに剥がれた時とか、楽器屋さんに行く時間がない時は、
応急処置が出来る。

ニカワは場合によって要らない。お湯を剥がれている所に刷毛で塗って、
ニカワを少し溶かす。
それを万力でとめて乾くのを待てば良いのだ。
ニカワはつけすぎてはいけないそうだ。
強く貼付けすぎると板は動くので、剥がれずに割れる。
そうなると本当の修理。それも高額の大修理。

とにかく、それで今日は半日以上それでつぶれる。
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ハイドン C dur(ハ長調)チェロコンチェルト

2012-01-15 | 音楽
この前ここでも書いたように、オーケストラ コンソノの第1回コンサートが来週の日曜にあります。

詳細はこちら

今回弾くハイドンのチェロコンチェルトはご存知のように、1960年代だったかにプラハの図書館で発見されるまで知られていなかった。
チェコの名チェリスト ミロス サドロが世界初演をし、同時にチェコの出版社からサドロの校訂で楽譜が出ていたと記憶している。
その後あっという間に世界のチェリストのレパートリに加えられ、僕が芸大の学生だった頃はみんな競うようにさらっていた。
確かに、面白い曲だ。第2番と言われているニ長調と比べると第1楽章はともかく、アダージョが僕の好みではこちらの方が優れているように思える。
それからこの前も書いたように、フィナーレがなんと言ってもエスプリに富んだ、非常に発明的音楽(inventif )な音楽なのが好きだ。
チェリストにとっては大ハイドンが2曲もチェロコンチェルトの超のつく名作を書いてくれた事は、幸運だったとしか言いようがない。

それにしても、この曲のチェロパートの作りは驚異的に良く書けているといつも思う。
まるでチェリストが実際に弾いて書いたのかと思えるほどだ。ボッケリーニだってこんなに巧く書けただろうかと思うくらいだ。
例えばボッケリーニの場合は高音域の開拓に専念するあまり、肝心な一番美しい中音域それと言わずもがなの最低音域を、どうも
ないがしろにしている傾向がある。だから時に知らずに聞いているとヴァイオリンの曲かと勘違いするほどいつも高音域だ。

その点ハイドンはこの3つの音域をもの凄く上手に使いこなしているのみならず、重音と低弦の解放を交互に鳴らしたりする。
見た目にも、耳にも楽しめる効果が施されたりしている。ボッケリーニやこの後のデュポールやブレヴァルだって
こんなに巧い書き方をしただろうか。
だから時々、本当にこのチェロパートはハイドンが書いたのだろうかと疑いたくなってしまうほどだ。
それがまだ、チェロがソロ楽器として確固と地位を獲得していなかった1760年代の事なのだからなおさらだ。
1760年と言えばバッハがこの世を去ってまだ10年しか経っていない時期で、モーツァルトはまだよちよち歩きの4歳だ。
バロック音楽がそろそろ終焉を迎え、イタリア仕込みの軽快で和声進行が簡潔、というか単純な音楽がもてはやされ始めた頃だ。
所謂ギャラント様式(スティル ギャラン=Style galant)の全盛期はもうすぐそこまで来ていた。
しかし、そんな流行はどこ吹く風とばかりに30そこそこのハイドンは確固と自分の言葉で自分の音楽を書いたのだから凄い。
特にこのコンチェルトのフィナーレの事をもう一度書かせてもらえば、どこかにハイドンと縁の深かったハンガリー風というか、
あるいは農民風の地にしっかり根を張った土着の息づかいのようなものすら感じられる、きらびやかでよそよそしいギャラント様式とは、
正反対の音楽がある。

ちょっと長くなりだしたので今日はこの辺で。

ちなみに今回のコンサートでは以前弾いた自作のカデンツァを一部書き改め、今回のコンサートのプログラムにそった
ちょっとしたサプライズもいたずらで加えた。ハイドンのエスプリを見習って。

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