「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

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腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#88)

2017年06月15日 01時00分27秒 | RUN&GUN風土記
撮影最終日の終盤、涼と隆の慟哭シーンの撮影が始まった。
 「涼・・・!」
霊安室の新台の前で呆然と立ちすくむ涼のもとに、隆が駆け寄る。 隆の姿を目にした涼は、とっさに彼にすがりついて泣き崩れる。
 「隆さん・・・!!」
嗚咽に震える涼を力強く抱きしめた隆は、どこか恍惚とした表情を浮かべている。 
悲しみの嵐にもみくちゃにされ泣き続けている涼の顔を上向きにさせると、その唇に隆がいきなりキスをした。
思わず幸佑は演技を忘れて目を見開いた。 突然のことに身動きすらできず、ひたすら至近距離の桐畑の顔を凝視する。
周囲で二人の演技を見守っていた監督をはじめ、スタッフ達も息をのんだ。
しばし、その場の時が止まったかのような静寂に包まれる。 馬場も、桐畑の意表をつく行動に驚きを隠せずにいた。
時間にすればほんの数秒のわずかな間が、とてつもなく長く感じられた。
やがてゆっくり唇を離した桐畑が、再び幸佑をその腕にしっかり抱きしめて囁いた。
 「・・・涼、俺がついてるから」
幸佑の髪に頬を埋めながら目を閉じる桐畑。 動けないままの幸佑。
固唾をのんでその様子を見つめていた監督の声が、静寂を破った。
 「はい、カーット!!」
途端に、日常のざわめきが戻ってきた。 それと同時に、幸佑が素早く桐畑から身を離し、口元に手を当てたまま首をうなだれた。
引きかえ桐畑は、満足げに微笑みを浮かべて、そんな幸佑を悦に入ったように眺めている。
対照的な様子の二人に、監督が笑顔を湛えて近づいてきた。
 「いやぁ、やってくれるね桐畑くん。 まさかあそこで涼にキスするとは」
 「ああすれば、涼の動揺をとりあえず止められると思って」
桐畑も笑顔を浮かべて答える。
 「米原くんもびっくりしたんじゃないか?」
不意に話の矛先を向けられて、幸佑がはっとする。
 「あ・・・、はい。 かなり」
 「だろうね。 リアクションが素に近かったもんね。 でもそれが却ってリアリティ出て良かったよ」
幸佑の肩を叩きながら上機嫌で労う監督に、幸佑は複雑な気持ちで曖昧に頷いてみせた。
 「桐畑くんはそこまで計算してキスしたのか? だとしたら大したもんだよ」
今度は桐畑の背中をパンパン、と叩いて豪快に笑う監督に、桐畑がひとときの間をおいてボソリと呟いた。
 「・・・それもありますけど、何より俺がそうしたかったんです」
独語のようなその一言に、監督と幸佑が同時にえ?と聞き返した。 すると桐畑は、意味深な眼差しで幸佑を見ながら言い放った。
 「・・・どうも、隆として涼を想ってるうちに、俺自身も幸佑くんに惹かれてしまったみたいで・・・」
じっと自分を見つめてそう宣う桐畑を、幸佑はそれこそ目が張り裂けそうなほどに見開いて凝視する。
先に口を開いたのは監督だった。
 「・・・いやぁ、そうだったのかぁ。 確かに米原くんはとても綺麗で色気あるし、桐畑くんがグラッときても仕方ないかもな。 どう、米原くん。 
  恋人いないなら、いっそ桐畑くんと付き合っちゃえば」
いきなり監督がとんでもないことを言い出した。
監督にしてみれば、二人が本当に付き合いでもすれば、この映画の絶好の宣伝になるという目論見があるからかも知れない。
役柄とリンクするように、主演の二人がリアルでも恋人になれば、さぞかしセンセーショナルな話題になるだろう。
まさか監督がこんなふうに焚き付けてくると思っていなかった幸佑は、頼みの綱を切られたような気分になった。 
そして、桐畑がさらに追い打ちをかける。
 「・・・いや真面目な話、俺最近恋人と別れたばっかりだし、ホントに幸佑くんと付き合いたいんだけど、どうかな」
その瞬間、お~!っという声があたりから上がった。 
いつの間にか、自分たちの周りにちょっとした人垣ができていたことに、幸佑は気付いていなかった。
今の桐畑の告白もどきの発言も皆に聞かれていたことを悟って、幸佑はたまらなく恥ずかしくなった。 顔に血が集中し、真っ赤に火照っているのがわかる。
そんな幸佑を見て、誰かから冷やかしの声がかかる。
 「米原くん、顔真っ赤ですよ~!」
それと同時に笑い声が巻き起こる。 たまらず、幸佑が両手で顔を覆った。 
すかさず桐畑がそばに寄り添って、幸佑の肩を抱きながら大丈夫か?と優しく問いかけてきた。
いったい誰のせいでこんなことになったんだ、と詰め寄りたかったが、桐畑のこの行動にさらにどよめきが大きくなった人々の好奇の眼に阻まれて、何も言えない。
するとその時、熱に浮かされたような観衆とは明らかに温度の違う声が、少し離れたところから発せられた。
 「・・・今は撮影中じゃないんですか。 それとも、また休憩ですか?」
抑揚のない冷ややかなその声は、馬場のものだった。 この一言で、一気に場の空気が萎んだような気がした。
蜘蛛の子を散らすように、幸佑たちを取り囲んでいた人々が、それぞれの持ち場へと戻っていく。 その様子を卑屈そうな笑みで桐畑が眺めている。
 「そ・・・そうだったな、じゃ次のシーンの準備を・・・」
そう言って、監督も少しバツが悪そうな表情で二人から離れて行った。
それらを見届け、そしてこちらをじっと見据えている馬場を一瞥して、身を固くしている幸佑の耳元に囁いた。
 「・・・俺は本気だから、よく考えてみてくれよな」
チラッと馬場を見ると、まるで見せつけるように幸佑を抱き寄せ、その額にキスをしてからようやく幸佑を解放した。
さらに表情を険しくした馬場を嘲るように、桐畑が馬場の前を通り過ぎて行く。
一人その場に取り残された幸佑は、まるで魂を抜き取られたように放心状態になっていた。
そんな幸佑のところに、馬場がツカツカと歩み寄る。
 「・・・おい、ボッとしてるんじゃないぞ。 まだ撮影は残ってる。 これ以上桐畑につけこまれるような隙を見せちゃダメだ」
言いながら背中をバン、と叩いて喝を入れる。 その言葉と衝撃で、ようやく幸佑が馬場を見た。
 「ほら、早く行ってこいよ」
グッと幸佑の肩を強く掴んだ馬場の手が、少しだけ震えていた。 それは、悔しさの表れだった。
目の前で、幸佑をその毒牙にかけて誇らしげに嘲笑する桐畑を、腸が煮えくり返るほど憎らしく思った。
いつしか馬場は、幸佑を特別な感情で見ている自分に気付いた。 だがそれは恋愛感情ではない。 自分でも説明のつかない不思議な気持ちだ。
この無垢で純粋な心を持つ幸佑を汚す奴が、許せない。
もう一度、憎々しげに桐畑の背中を睨みつけると、馬場はゆっくりと自分から遠ざかる幸佑の背中に視線を移し、最終シーンの撮影に臨む彼を見送った。
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