「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#61)

2017-03-21 01:26:38 | RUN&GUN風土記
岡本たちが去り、病室には再び静寂が戻った。
しかし雄也は、先ほどから狂ったメトロノームのように激しく刻む己の鼓動に戸惑っていた。
先刻耳にした玲奈の言葉が頭の中でぐるぐる廻り、思考を麻痺させる。
(あなたは米原くんを・・・)
・・・抱いた。
それはほんの小さな囁き、声にならない程度の微かなものだったが、確かにそう聞こえた。
その言葉を聞いてから、雄也の心は思う様かき乱された。 煩いほどの鼓動が頭の中で増幅され、割鐘を叩くような衝撃が身を貫く。
いっそ聞き間違いであってほしいとさえ思った。
しかし、ここでふと気付く。 自分はなぜこんなにも動揺しているのだろう?
確かに、男が男を抱くという信じ難い内容だったというせいもあるだろう。 
だが、それだけでは体に電流を喰らったようなこの激しい衝撃の説明がつかない。
そして何より、幸佑を抱いたという岡本に対して、何とも言い表しがたい感情を抱いた。
その複雑な気持ちを【嫉妬】と呼ぶのが一番相応しいと気づいた時、新たな衝撃が雄也を襲った。
胸をチリチリと焦がすような熱くて痛い感覚は、まさに嫉妬という炎に焼かれた火傷そのものだ。
次々と襲い来る荒波のような感情に翻弄され、知らず知らず胸に手を押し当てて苦し気に目を閉じていた雄也が、ふと幸佑を見た。
ベッドに寝転んで本を読んでいるその様子は、普段の彼と何ら変わらないように思える。
岡本に抱かれたのが本当なら、その事実を他人に知られて平然といられるわけがない、と雄也は思う。 それとも、玲奈の声が聞こえていなかったのだろうか・・・。
だが、幸佑に事実確認をする勇気はない。 また、する権利もない。
息詰まるような胸苦しさを覚え、無意識に深呼吸する。 数回繰り返すと、徐々に動悸が収束しはじめ、同時に心にも落ち着きが戻ってきた。
胸に当てていた手を下ろし、手のひらに滲んだ汗を見つめる。 
幸佑に対するこの気持ちは何なのだろう。
もはや、里美の言うようなただのファンなどとは思っていない。 間違いなく、以前から自分は彼を知っている。
そしておそらく、特別な存在だったに違いない。
思わず両手で頭を抱え込む。 思い出せない。 こんなに自分の中で大きな存在なのに、なぜ肝心なことが思い出せないのか。
指で髪の毛をかき乱し、深くため息を吐く。 すると、いつの間にか雄也の前に幸佑が佇んでいた。
 「・・・どないしたん?」
うなだれていた顔を上げると、少し心配そうに自分を見つめる幸佑と目が合った。
すると、先ほどまでの様々な感情が一気に蘇り、いたたまれなくなって思わず目を逸らしてしまう。
 「・・・なんでもない」
 「でも、えらいため息ついてたし、なんか顔色も悪いような・・・」
言いながら、熱でも測るように手を雄也の額に当ててきた。 幸佑の指先が額に触れた瞬間、とっさにその手を振り払う。
その過剰な反応に、驚いた幸佑が手を宙に浮かべたまま雄也を見た。
 「あ・・・悪い。 熱なんかないから。 ちょっと、寝るわ」
そう言い残すと、雄也は幸佑に背を向けて布団を被ってしまった。
そんな彼の様子が気になったが、それきり雄也が口を開く気がないことを悟ると、やがて諦めたように幸佑がベッドへと戻っていった。
その気配を背で感じながら、雄也は頭まで被った布団の中でじっと動けずにいた。
幸佑に触れられた瞬間、体ががカッと熱くなり、その衝撃に対する脊髄反射のように、瞬時にその手から逃れてしまった。
なんということだ。 これではまるで初心な小娘のようじゃないか。
不意に、笑い出したい衝動に駆られた。 体を丸めて、声を殺しながら唇を歪める。
もう、間違いようがなかった。 幸佑に対する気持ちは、友情などではない。
これはもう、明らかに恋だった。
いつの間にか、自分は幸佑に恋心を抱いていたのだ。 そう考えれば、すべて辻褄が合う。
そして皮肉なことに、幸佑に対する気持ちは、これまでの恋人には感じたことのない特別な想いだということも雄也を打ちのめした。
ふと、恐ろしいことが脳裏をよぎった。
以前の自分は、幸佑のことをどのように見ていたのだろうか。
もしかして、ずっと前から彼のことをそんな目で見ていたのだろうか・・・。
そして何より怖いのは、こんな自分の気持ちを、幸佑が気付いているのか否かということ。
再び、手のひらにじっとりと冷たい汗が滲んでくる。 足先が冷たくなっていく。
自分の深淵にあった禁じられた想いが白日の下ににさらされたショックと、訳の分からない不安とがないまぜになって、今にも震え出しそうな体を鎮めるように、雄也は両手で自分の腕を抱いた。
布団の中でそんな過酷な葛藤に苦しむ雄也を知ることもなく、幸佑はベッドで再び本を読み始める。
傾きかけた太陽から差し込む斜陽が、窓から長く室内に延びていた。 
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