「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#78)

2017-05-15 01:30:41 | RUN&GUN風土記
幸佑のアパートを飛び出した雄也は、そぼ降る雨の中傘もささず舗道に立ちすくんでいた。
行き交う人々の訝しそうな視線にさらされながら、自分のしでかしたことが信じられずに呆然となっていた。
錘のついたような腕をゆっくりと上げ、おずおずと唇に指をあててみる。 幸佑の唇に触れた感触が、まだ生々しくそこに残っている。
幸佑の優しい声と言葉を耳にした瞬間、自制が効かなくなり、気付いた時には自ら唇を重ねていた。
初めて触れた幸佑の唇は甘く蕩けるようで、ほんの一瞬で雄也の脳髄を深く痺れさせた。
 「・・・・・・・・・」
いまだ治まらない己の激しい鼓動を持て余しながら、雄也は大きなため息をついた。
あの瞬間の、幸佑の驚愕に見開かれた瞳が胸に突き刺さった。 こんなことをする自分をどう思っただろう。
男である幸佑が男にキスされるなど、普通ではまずありえないことだ。 気持ち悪い奴と軽蔑しただろうか。
あんなことをしでかした後でも、また会ってくれるだろうか・・・・・・。
自分の唐突で軽率な行動を今さらながら悔やみ、自己嫌悪の底なし沼へ沈みそうになっていた雄也の脳裡に、ふとあることがよぎった。
いつか病室で聞いた、玲奈のあの言葉。
(あなたは米原くんを・・・)
玲奈から明確な答えは聞き出せなかったが、あれが聞き間違いでないなら、幸佑も男性である岡本とただならぬ関係を持っていたことになる。
そして今、リスキーともいえる同性愛の映画にも積極的に取り組んでいる・・・。
もしかしたら、幸佑は男も愛することができる人間なのではないか。
そんな希望的憶測が、雄也の頭に強く浮かんだ。 しかし一方で、玲奈のもうひとつの発言が引っかかっていた。
(米原くんを抱いたのは、この私よ・・・)
以前にも、玲奈は幸佑にアプローチしていると語っていた。 ということは、玲奈は幸佑の恋人なのだろうか?
だが、なぜか雄也には幸佑と玲奈が恋人同士には思えなかった。 玲奈が本気で幸佑を愛しているようにはどうしても見えないのだ。
しかし、これもまた雄也の希望的憶測に過ぎないのだろうか・・・。
そうしてどれほどの間立ちつくしていたのか、雄也は不意にポケットの携帯が振動したことで我に返った。
電車に乗る際にマナーモードにしてあったことを思い出し、携帯を取り出した。 着信表示は03で始まる知らないナンバーだ。
怪訝に思いながらも出てみると、どこか聞き覚えのあるような女性の声で永田さんですか?と確認された。
 『病院を抜け出して一体どこにいるんですか!? 何度も電話したんですよ!』
それは病院からだった。 電話口で早口にそうまくし立てるのは、おそらく看護師長の戸田紀子だろう。 矢継ぎ早に叱られながらチラリと腕時計に目をやると、すでに20時を過ぎている。
外出することも伝えず夕食もとらないままこんな時間まで音信不通になっていたのだから、紀子が怒るのも無理はない。
今回は全面的に自分に非があるため、雄也はひたすら謝罪し続け、今すぐ病院に戻ることを約束して、どうにか電話は切れた。
改めて着信履歴を確認してみると、紀子の言うとおり病院からの着信が数件あった。 マナーモードにしていたせいもあるが、何より幸佑とのことに気を取られすぎて全く気付かなかった。
ふと、雄也が苦笑いを漏らす。 ここまで意識を翻弄されてしまうほどに、身も心もすっかり幸佑に支配されている自分を嗤う。
いつの間にか本降りになっている雨に打たれながら、雄也はどうにか重い足を駅に向けて動かし始めた。


雄也が去った部屋で、幸佑はしばらく動くことを忘れたように放心状態のまま床に座り込んでいた。
今起きたことが信じられず、雄也を想う気持ちが高まりすぎた果てに見た幻覚だったのでは、と自分を疑うほどだった。
だが、雄也に触れられた唇の熱さだけが、唯一それが幻ではなかったことを物語っている。
しかしそれでも幸佑は、雄也の行動がただの気の迷いだったのだと頑なに思い込もうとしていた。 それはもう自己暗示に近かった。
雄也が自分に対して恋愛感情を持つことなどありえないと決めつける心が、幸福へ開きかけている扉を閉ざす足枷になっていることにも気づかずに。
幸佑に友情しか与えなかった過去の雄也。 だが記憶を失くした今、皮肉にもその友情はリセットされ、代わりに愛情が芽生えつつあることなど知る由もなく。
虚ろに空を見つめていた目が、ふと手首の痣を捉えた。 くっきりと、そこに浮かび上がる指の痕。
左手でそれを覆い隠し、首をうなだれる。 脳裏に、苦い想いが蘇る・・・。
それは、今日行われた最終リハーサル2日目でのことだった。
物語の終盤、梨香が亡くなり涼が隆のマンションで暮らすことになった場面でのこと。
隆は愛する涼を手に入れ、涼が自暴自棄になっていることにつけ込んで、毎夜その体を抱いていた。
そしてその情事の鱗片を、訪問してきた和樹に見せつけて嫉妬心を煽り、自己満足に陶酔する・・・というくだりだった。
ベッドに幸佑が横たわり、その上に桐畑が覆いかぶさって、二人のセックスシーンを演じていた。
二人の体には布団がかけられていたので、それらしい動きをするだけで良かったのだが、桐畑の手が不意に幸佑の下半身に伸びた。
驚いた幸佑がとっさにその手を振り払おうとした時、桐畑が強く幸佑の手首を掴んでそれを阻止した。
桐畑の意図がわからずに顔を見上げると、不敵な笑みを浮かべたまま幸佑を凝視している。
そんな彼に得体のしれない恐怖を感じ、さらに覆いかぶさろうとしてくる桐畑の胸を思い切り空いている左手で押し返した。
そのとき、ようやく監督がカットをかけたため、桐畑の動きがそこで止まった。 右手首を掴んでいた手から力が抜けたのを感じ、とっさに幸佑が手を引っ込める。
桐畑の体の下から素早く這い出した幸佑は、逃げるようにその場から離れた。
その異様な雰囲気に気付くキャストはほとんどいなかったが、馬場だけは少し離れた場所からそんな幸佑と桐畑をじっと見据えていた。
その視線に桐畑が気付くと、ニヤリと唇を吊り上げてみせる。 すると馬場は見据える目をすぅっと細め、今度は憎しみの宿る目で桐畑を睨みつけた。
結局リハーサルはそこで終了となり、幸佑はそのまま逃げるようにアパートへと帰って行ったのだった。
そして、そこで思いもしなかった雄也との出会い。 そして、予想だにしなかったくちづけ・・・。
幸佑は今日一日で戸惑いや恐怖、そして嬉しさなどあらゆる感情が次々と襲い掛かり、疲労困憊してしまった。
座り込んでベッドにもたれたまま目を閉じると、そのまま深い闇に堕ちて行くような錯覚に捕らわれる。
だがそれに抗うには、もう幸佑の精神力が限界を超えてしまっていた。
理性にまとわりついていた最後の意識を手放すと、幸佑の思考はそれきり停止し、やがて昏い意識の底へと沈んでいった。
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2 コメント

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はじめまして (ちょるん)
2017-05-16 23:55:12
1話からずっとかかさず読ませていただいてます。
コメしようとずっと思いながら、なかなか書けずにいましたが、思い切って今回コメします。
幸佑と雄也の気持ち、ほんとはお互い両想いなのに気付かないっていうのが、なんとも切ないです。
岡本さんの幸佑への想いの行方もきになります。
映画の内容もすごくて、この映画だけでもひとつのお話にできるんじゃ?と思いました。
これからどうなっていくのか想像がつかず、次が待ち遠しいです。
これからも楽しみにしています。
ちょるん様 (ななりん)
2017-05-17 01:13:08
コメントありがとうございます^^
ずっと読んでくださっているとのこと、本当にありがたく思っています。

そうなんです、幸佑と雄也は気付かないところで想いは通じ合っているんですよね。
でも、心に蓋をしてしまったせいですれ違ってばかり・・・。
なんとかしてあげたいですね~(笑)

岡本さんには私も幸せになってほしいのですが・・・これもなかなか ( ノД`)

まだ当分続くと思いますので、今後もヨロシクお付き合いのほどお願いいたします(○´∀`○)ノ

またいつでも遊びにいらしてください☆

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