「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

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腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#48)

2017年01月30日 22時21分07秒 | RUN&GUN風土記
 「よう洋介、久しぶりだな」
いつもの喫煙所である裏庭に腰を下ろしてぼんやり煙草をふかしていると、不意に頭上から声を掛けられた。
 「ああ・・・」
振り向かずに返事を返されることにももう慣れている智が、隣へ腰を下ろしてポケットから煙草を取り出す。
ひと息吸って、うまそうに煙を吐き出しながら智が尋ねる。
 「忙しかったのか?」
 「ん・・・色々あってな。 なんかバタバタしてた」
 「へぇ。 俺はまたてっきり戸田さんに根負けしたのかと思ったぜ」
 「戸田さん?」
 「あの人、おまえが煙草吸ってるの見つけて嫌味言うのが趣味みたいだからさ」
 「はは・・・。 関係ないよ」
思えば、こうして煙草を吸いながら智と他愛無い話をするのは随分久々のように感じる。
雄也と幸佑に出会ってからまだ数週間しかたっていないというのに、何だかもう何ヶ月も過ぎたような気がする。
その間、目まぐるしく自分の感情を揺さぶられて、いささか疲れてしまったらしい。
好きだったはずの煙草も、味がしないせいでうまいとも感じない。
火をつけた煙草の先端には、今にも崩れそうなほど長く灰が伸びていた。
 「こないだ廊下で森下玲奈を見かけたわ」
 「あ?」
ポケットから携帯灰皿を取り出した洋介が、唐突な話題に気の抜けた返事を返す。
 「内科病棟だった。 知り合いでも入院してるのかな」
ほとんど独り言のようにそう呟いた智が、ふと洋介を見た。
 「・・・そういえば、おまえ前に役者が入院してるって言ってたよな。 今もまだ入院してるのか?」
 「ああ・・・してるよ」
ぱっと、智の表情が明るくなった。
 「もしかしたら、そいつのとこへ来たのかも? だったら、また来る可能性あるな」
やけに嬉しそうに話す智に、洋介は訝し気な視線を投げながら問いかける。
 「おまえ、森下玲奈を知ってるのか?」
 「知ってるも何も、有名な女優だぜ。 まぁ有名つっても舞台女優だけどな。 俺舞台見るの好きでさ。 彼女の出てるやつもよく見るんだよ。
  ま、はっきり言ってファンだな」
なぜか誇らしそうに話す智に、少々呆れたような表情で洋介がそうですか、と興味なさげに呟く。
そのまましばらく木々の隙間からこぼれる日差しを眩しそうに眺めていた洋介が、ふと真顔になって口を開いた。
 「・・・・・・なぁ智。 おまえ、ゲイってどう思う・・・?」
 「あ? なんだよ突然。 おまえヤローに告られたとか?」
 「違うよ。 例えばの話だけど、もしおまえの周りにゲイがいたらどうする?」
 「どうするって・・・」
咥え煙草のまま、智が空を仰いで考える。
 「・・・どうもしないな。 今どきゲイなんて大して珍しくもないし。 自分に影響がないなら、特に何とも」
 「男が男を愛するって、理解できるか?」
 「うーん、俺はゲイじゃないからわからんけど、きっと俺たちが女を愛するのと同じ感覚なんだろ? そう思えば理解しやすいんじゃないか?」
 「・・・・・・・・・」
智の言葉を聞いて、洋介はふと恋人である沙季のことを思い浮かべた。 
沙季を愛しているのかと聞かれれば、当然愛していると答えるだろう。 だが、そこに激しい恋慕の気持ちがあるかといえば、そうとは言い切れない。
岡本のように、激しく相手を求めたり嫉妬に身を焦がすことが、ある意味羨ましく思える。
 「なんだ? どうかしたのか?」
さっきから黙り込んだまま思案に耽る洋介に、智が声をかけた。
 「いや・・・。 変なこと聞いて悪かったな。 じゃ、そろそろ行くわ」
 「おう。 またな」
半分以上残ったままの煙草を灰皿にねじ込むと、洋介はゆっくりと立ち上がって裏庭を後にした。


洋介がナースステーションに戻って来ると、さっそくナースの戸田紀子がツカツカと歩み寄って来た。
 「あら、今日はあんまり匂いませんね。 調子でも悪いんですか?」
くんくん、と匂いを嗅ぎながら、紀子が少々拍子抜けしたように話す。 
そんな彼女を見ながら先ほどの智の話を思い出して、洋介は思わず小さく笑いを漏らしそうになり、あわてて噛み殺す。 
 「あ、そういえば米原さん。 昨夜は夕食少しだけど食べてましたよ」
 「え、そうなの? そりゃよかった」
 「熱も下がりましたから、ようやく落ち着いてきたんですかね」
 「そうだね。 あとで様子見に行ってくるよ」
洋介の心に、爽やかな風が吹き込んだような気がした。 わずかでもいい、自力で食事をする気力が出て来たことが、嬉しかった。 幸佑の心に、生
への執着が蘇った証だ。
ふと、洋介はこんなにも幸佑に対して一喜一憂する自分に驚いた。
そういえば、幸佑の担当になったのも、自分から希望してのことだった。
あらためて、自分が幸佑に対して特別な感情を抱いていることに気付く。 いや、幸佑だけではなく、雄也に対しても同じことが言えるかも知れない。
彼らに出会ってから、少しずつ自分に人間らしい感情が芽生えてきた。
最初はそんな自分に戸惑ったが、平坦だったこれまでの人生とは違う、起伏に富み喜怒哀楽に彩られた非凡な道も悪くはないかもな、と心の中で呟い
て、洋介は椅子に掛けられていた白衣を身に纏った。 
 
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