「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

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腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#56)

2017年02月22日 00時04分37秒 | RUN&GUN風土記
内科病棟の一角にある相談室で、洋介は雄也の血液検査の結果を見ていた。
肝がんの摘出術を行って1週間が経過した。 術前には腫瘍マーカーの一部であるAFP値が基準値を大幅に超えていたが、今回の結果では基準値に近い数値にまで落ち着いている。
どうやら功を奏したらしい。
だが、まだまだ油断は禁物だ。 肝がんは再発の可能性が他のがんより高く、2年以内に再発する可能性が70%、3年以内だと80%に上るとも言われている。
今後も定期的に検診を行い、監視を続けて行くことが必須だ。
 「おう、もう来てたのか」
部屋のドアが開くなり、そう声をかけてきたのは外科医の上田だ。 雄也の術後の経過報告を行うために、洋介が上田を呼び出したのだった。
いつも約束の時間より遅れてくることがほとんどだったが、今日は珍しく時間どおりに顔を見せた。
 「今日は早かったですね」
 「予定どおりに来て早いと言われるとはな。 ま、いつも遅れてくるから無理もないか」
そう言ってニヤリと笑う上田に、洋介も苦笑いを返す。
 「で、雄也くんの様子はどうなんだ」
 「はい、今のところ順調です。 AFPも落ち着いてきましたし」
 「そうか。 やっぱり若いから、進行も早い代わりに回復も早いんだろうな」
上田の言葉に頷きながら、洋介が続ける。
 「このままいけば、2週間後くらいには退院できると思います」
 「そうか。 あとは再発がないことを祈るばかりだな」
 「ですね。 でも3年以内に80%っていうデータもあるし、こればっかりは・・・」
 「うーん・・・」
苦々しく頭をかいて眉間に皺を寄せた上田が、ふと何かを思い出したように洋介を見た。
 「・・・そういえば、低酸素脳症の影響はなかったのか?」
上田の問いかけに、洋介は険しい表情を見せた。
 「・・・実は、米原くんの記憶がなくなってしまったみたいで」
 「なに」
 「彼に関する記憶が、すっぽり抜けてるんです。 ほかは何ともないのに」
 「米原くんといえば、雄也くんの家族同様の存在だったんだろ。 よりによってか」
 「そうなんですよ・・・。 米原くんはショックのあまり、軽い拒食症状を呈してしまって」
洋介の報告を聞いて、上田は痛ましそうな眼でそうだったのか、と溜息まじりに呟いた。
 「一時はちょっと危険な状態になりそうだったので、入院してもらいました」
 「今も入院してるのか?」
 「はい。 だいぶ状態は改善されてきましたけど、まだ少しかかりそうですね」
 「そうか・・・」
いくら不測の事態だったとはいえ、自分の術中に起こったアクシデントが原因でこんなことになろうとは。 
目を閉じて胸に広がる苦い思いを噛みしめているだろう上田に、洋介が少し明るい口調で話しかける。
 「でも、米原くんの中で何か踏ん切りがついたみたいで。 最近は雄也くんに積極的に話しかけるようになってきたんですよ」
洋介のその言葉に、ふと上田が目を開けて顔を上げる。
 「記憶を取り戻すきっかけになればと、雄也くんと米原くんを同じ部屋にしてみたんです。 それが、良かったみたいで」
 「そうなのか。 順調に戻ればいいがな」
 「ええ。 脳神経外科にも診てもらおうかとも思ってるんです。 どうにかして、雄也くんに米原くんを思い出してほしい」
目に力をこめてそう力説する洋介の様子に、上田は意外そうな顔をした。
 「・・・やっぱりおまえ、変わったな。 前に沙季が言ってたとおりだ」
 「えっ」
 「まさか本当に雄也くんに惚れてるからとは思わんが、確かにほかの患者とは違う何かを感じてるんだろ。 ここまでおまえを熱くさせるとはな」
 「・・・・・・・・・」
図星をさされて、思わず洋介は黙り込んだ。 そのまま居心地悪そうに、もぞ、と身じろぎする。
そんな彼を面白そうに眺めながら、上田が口を開く。
 「まぁそんなに照れるなよ。 やっと人間らしくなってきたんだ、いいことじゃねぇか」
 「・・・なんか、ひどい言われようですね」
 「そうか? 俺は褒めたつもりだがな」
わはは、と豪快に笑って、上田は椅子から立ち上がった。
 「じゃ、また何か変わったことがあったら知らせてくれ」
 「はい、わかりました」
少し恨めしそうな表情で、それでも洋介は軽く会釈をして出て行く上田を見送った。
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