「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#96)

2017-07-12 01:29:32 | RUN&GUN風土記
雄也が幸佑のアパートを出たのは、まだ明るさが残る19時前だった。 
本当ならもっと一緒にいたかったのだが、明日は早朝から仕事が入っているため、そうそうゆっくりもしていられない。
桐畑とのとんでもないことを聞かされて、明日もオフの幸佑をこのまま一人にしたくはなかったが、こればかりはどうしようもない。
ドアを出たところで立ち止まっていた雄也は、深くため息を吐いて後ろ髪を引かれる思いにどうにか見切りをつけると、ようやく足を前に踏み出した。
階段を降りて道路へ出ようとした時、ふと視界の隅に人影を捉えた。 反射的にその方向を向くと、見覚えのある人物と目が合う。
それは、昨日植え込みのそばに立っていた不審なカメラ男だった。 
昨日と服装が同じところを見ると、ひと晩中ずっとここに張り付いていたらしい。
それを見た雄也の頭に、昨夜幸佑から聞いた話が蘇る。 あれはきっと佐々木が危惧していたマスコミ関係者に違いない。
自分と目が合って木陰に身を隠した男の元へ、雄也は迷わず近づいて行った。
 「おい、あんた」
いきなり呼びかけられて、男はひどく驚いた様子で雄也を見た。
 「幸佑を張ってるんやろうけど、あいつに張り付いてても何もあれへんで。 さっさと撤収することやな」
そっけなくそう告げる雄也に、男は何か言いたそうに口をもごもごと動かしたが、雄也はそれにかまわず男に背を向け、そのまま場を立ち去った。
取り残された男は、ぐんぐん遠ざかって行く雄也の背中を呆然と見つめていたが、ふと我に返ると、慌てて胸元のポケットから携帯を取り出して電話をかけ始めた。
 「・・・あ、桐畑さん? 武内です。 桐畑さんに言われたとおり昨日から米原幸佑のアパートを張ってたんですけど、いま知らない男に『ここにいても
  何もないから帰れ』って言われたんですけど・・・」
 『知らない男? どんなヤツだった?』
 「えっと、背が高くて、歳は・・・26,7歳くらいで、結構イケメンでした。 幸佑の役者仲間ですかね? そういえば幸佑って呼び捨てにしてたな・・・。 
  あと、関西弁でした」
 『何だって・・・』
電話の向こうの桐畑は、しばらく考え込んでいる様子だった。 武内もじっとそのまま次の言葉を待つ。
だがふと何か思い出したのか、武内があ、と言った。
 「そいつ、昨日から今まで幸佑の部屋にいました。 部屋から出てきて帰る時に俺に話しかけてきたんだと・・・」
 『なに!? そんな大事なことは早く言えよ! この馬鹿野郎!』
いきなり激しい剣幕でそう怒鳴られ、一方的に電話を切られた。 ツーツーという電子音が流れる携帯を憎々し気に眺めて、武内は通話を切った。
 「・・・ったく、これだから嫌なんだよな。 桐畑さんの地雷どこにあるか全然わかんねー」
ブツブツと文句を言いながら、武内は持っていたカメラを首にかけると、再度アパートを見上げた。
 「こんだけ張ってりゃもう充分だろ。 さっきのヤツも何もないって言ってたし」
半ば言い訳のように独り言を呟きながら、武内はアパートから道路に向かって歩き出した。


武内からの電話を怒りに任せて切った桐畑は、即座に今度は玲奈へと電話をかけた。
 『なに?』
相手が桐畑とわかっているため、短く声が返ってきた。
 「幸佑の親友って、どんなヤツだ? 前に確か親友がいるって言ってたよな」
 『何よ突然。 雄也くんのこと?』
 「そう、その雄也ってヤツ。 背が高くて関西弁か?」
 『そうよ。 確か米原くんと同級生だったはず。 でも今は記憶を失くしてて米原くんのことは忘れてるはずよ』
 「記憶がないだって?」
意外な答えに、桐畑が黙った。 先ほどの武内の話では、今回の騒動のことも、もちろん幸佑のこともすべて知っている内容だったように思う。
では別人なのか? しかし、ここまで条件が合致する人物が他にそういるとも思えない。
 『・・・いったい何なの? 何かあったの』
一向に話す気配のない桐畑に、少し苛立ったように玲奈が問いかける。
 「・・・幸佑の部屋に、その雄也が昨日から泊まってたらしい。 だったら記憶がないなんておかしいだろ」
 『え? それ本当なの?』
今度は玲奈が驚いた。 まさか記憶が戻ったのか?
 「しかも、張ってた武内に『ここにいても無駄だから帰れ』って言ったらしい。 ってことは、今回の騒ぎも知ってるってことだろ」
 『・・・・・・・・・』
玲奈の表情が、険しく曇る。 もし雄也の記憶が戻って、今回のこともすべて知っているのだとしたら。
必ず、邪魔しにくる。 幸佑を守るために。 直感で、玲奈はそう確信した。
 『・・・ちょっと、確認するわ。 また私から連絡する』
そう言って、電話は切れた。 桐畑は携帯をポケットにしまうと、いまいましげに小さく舌打ちをした。
 「・・・いったい、何がどうなってやがる。 雄也っていったい何者なんだ。 記憶がないっていうのは・・・」
髪をぐしゃっと掴み、厳しい目で壁を睨む。 今になって、訳の分からない人間が現れて計画をかき乱されるのは御免だ。
だが今は、玲奈からの答えを待つしかない。 
【雄也】という人物が何者なのかを見極め、もし邪魔になるようなら、排除しなければならない。
桐畑の目が、ギラリと光った。 
玲奈のために、この計画を立てたのだ。 玲奈という崇高なニンフのために、幸佑を生贄として供することを約束した。
愛しい玲奈。 彼女が喜ぶのなら、どんな望みでも叶えてやろう。
そしていつか必ず、岡本から奪ってやる。 
桐畑の心にメラメラと燃え盛る紅蓮の炎が、体中を焼き尽くす。
そのいっそ心地良い痛みに、しばし桐畑は身を委ねていた。
 
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