「腐女子&妄想部屋へようこそ♪」BYななりん

映画、アニメ、小説などなど・・・
腐女子の萌え素材を元に、勝手に妄想しちゃったりするお部屋です♪♪

風に吹かれて(#95)

2017-07-10 01:28:16 | RUN&GUN風土記
幸佑は、微かに聞こえる携帯の着信音でうっすらと目を覚ました。 音は、テーブルの向こうに置いてある鞄の中から聞こえてくる。
まだ半分夢うつつな状態で、それでもどうにかベッドを下り、鞄のところまで這いずって行く。
覚醒しきっていない鈍麻な体は、なかなかうまく動いてくれない。 のろのろと鞄を開け、相変わらずしつこく鳴り続けている携帯を手に取る。
 「・・・はい」
 『幸佑か? 休みのとこ悪い。 寝てたか?』
 「・・・佐々木さん? はい、寝てました・・・けど、もう12時なんですね」
時計を見ながら苦笑いする。 朝どころかもう昼だ。 こんな時間に寝ぼけ声で電話に出たことが恥ずかしくなる。 おかげで、完全に目が覚めた。
 『すまん、起こしちまって。 ちょっと、まずいことになってな』
 「え、まずいことって」
 『・・・おまえ、こないだ桐畑さんから告白されたって言ってたよな』
 「あ・・・はい」
 『それを誰かがマスコミにリークしたらしくて、昨夜からちょっとした騒ぎになっててな。 週刊誌がおまえにインタビューしたいって言ってきてしつ
  こいんだよ』
 「え・・・」
幸佑は、頭から冷水をかぶせられたような気持ちになった。 一気に脳みそが冷える。
 『こっちは今のとこ何とか理由を付けて断ってるが、もしかしたらおまえのアパートにもマスコミが押しかけるかも知れん。 もし何か聞かれても、
  何も言うんじゃないぞ。 ノーコメントで通せよ』
 「・・・はい・・・。 でも、ただの冗談なのにいったい誰がマスコミなんかに・・・」
 『わからん。 でも桐畑さんはどういうつもりか、インタビューを受けるって言ってるらしい。 まさかマスコミ集めといて、実は冗談でした、なんて
  子供じみた悪戯するとも思えんし、あの人も何考えてるのか全くわからん』
ため息まじりにそう言う佐々木の声は、疲れているのか少し掠れていた。 こんな意味不明の騒動に振り回されて、心底気の毒であり申し訳なく思う。
 『・・・とにかく、気を付けろよ』
電話は、そこで切れた。 が、幸佑はしばらく携帯を握りしめたまま動けずにいた。 急に現実に引き戻された気分だった。
桐畑からの悪夢のような告白が、夢ではなかったという事実を突きつけられたようで、目の前が暗くなる。
思わず額に手を当ててうなだれてしまった幸佑に、背後から声がかかった。
 「・・・・・・なんか、あったんか?」
はっとして振り向くと、いつの間にかベッド上に半身を起こした雄也が、少し心配そうにこちらを見つめていた。
 「ごめん、電話聞こえてもうた。 マスコミとかなんとか、ちょっと気になる内容やったから・・・」
幸佑の頭から血の気が引いた。 いったいどこから聞かれていたのだろうか。
瞬時に自分の発した言葉を思い出そうとするが、焦る気持ちに阻まれてうまく思考が定まらない。
そんな幸佑の様子をじっと観察していた雄也は、直感的に看過できない何かが幸佑の身に起きていることを悟った。
おもむろにベッドから下り、携帯を持ったまま固まっている幸佑の隣へと移動する。
 「・・・・・・何か、あるんやろ。 もしかして、昨日倒れたのも関係あるんちゃうんか?」
その瞬間、幸佑の指がピクリと反応するのを雄也は見逃さなかった。
 「やっぱりそうなんやな。 話してみぃや。 もしかしたら俺にも何かできることがあるかも知れへんし」
 「・・・・・・・・・」
 「話すだけでも楽になることもあるやろ? 一人で抱え込むなや」
 「・・・・・・・・・」
じっと雄也を凝視したまま何も言わない幸佑に、雄也がひときわ真摯な目をして続ける。
 「・・・俺、おまえに頼ってほしいねん。 これまで俺がおまえに頼りっぱなしやった気がするから・・・。 おまえの力になりたいねん」
その言葉を聞いた刹那、幸佑が胸に手を当てて苦しげな顔をした。
一瞬、デジャヴかと思った。 それは、いつか雄也が幸佑にくれた最上の言葉。 記憶を失くす前に、自分にくれた言葉そのものだった。
記憶を失っても、雄也の根底にあるものは何ひとつ変わっていないことを知って、不覚にも涙が滲みそうになる。
 「・・・おい、大丈夫か? 気分悪いんか?」
苦しげに眉根を寄せたまま動かないその様は、一見すると気分が悪いと誤解されるのも無理はない。 慌てて幸佑が否定する。
 「いや、何でもあれへん」
笑顔混じりの答えに少しだけホッとしたような表情を見せた雄也だったが、それでも相変わらず真剣な眼差しで幸佑の次の言葉を待っている。
幸佑は内心、非常に迷っていた。 桐畑とのことを雄也に打ち明けるのは、どうしても抵抗があった。
だが、もし週刊誌に記事として掲載されてしまったら、それが雄也の目に入る恐れもある。 しかも、その内容は真実とかけ離れて、より面白おかしく脚色されたものになっているかも知れない。
そしてそれを見た雄也に誤解されてしまうのが、何より怖いと思った。
そんな最悪の状況を招くよりは、今ここで自分の口から本当のことを話しておく方が良いような気がした。
それに何より、雄也がこんなにも親身になって心配してくれているのだ。 その真心に応えたいという想いが、幸佑の中に強く芽生えた。
雄也に視線を向けた幸佑は、ひと呼吸置いてから、これまでに起こった桐畑とのことをひとつ残らず話し始めた。


幸佑の独白を、雄也は最後まで固唾をのんで聞き続けていた。
それは、全くもって想像もつかない内容だった。 衝撃が大きすぎて、聞き終えた後もしばらく言葉が出てこなかったほどだ。
桐畑に対する激しい苛立ちと、体中の血が沸騰するような激情が雄也を襲う。
自分が安穏と入院生活を送っている間に、幸佑がこんな理不尽な目に遭っていたことを知って愕然とする。
もし知っていたら、絶対そんな目には遭わせずにおいたのに。
今さらそんなことを思ったところでどうにもならないのはわかっているが、それでも握りしめた拳がわなわなと震えるのを止められない。
嫉妬で気がおかしくなりそうだった。 
そんな雄也のただならぬ様子を心配そうに見つめていた幸佑が、戸惑いがちに声をかけた。
 「・・・雄也・・・?」
その声に、雄也が幸佑を見た。 すると、やにわに幸佑を引き寄せ、強く抱きしめた。 いきなりのことに、幸佑がひどく驚く。
だが抱きしめる力強さとは裏腹に、微かに震えているその両腕が雄也の胸の内を表しているようで、幸佑は複雑な気持ちになった。
桐畑との話が、まさかここまで雄也を動揺させるとは思わなかった。 自分の親友に無体なことをしたのが許せないからなのか。
 「・・・・・・辛い想いしてんな。 おまえがそんな目に遭ってた時に、そばにおれへんかった自分がめっちゃ腹立つわ」
幸佑を抱きしめながら、そう自分を責める雄也。 腕の震えには、そんな自分への不甲斐ない想いも含まれているのだろうか。
いずれにしても、心から自分のことを想ってくれているのがひしひしと幸佑の肌に伝わってくる。
こんな時だが、幸せな気持ちに満たされた幸佑は、雄也の腕の中でそっと微笑んで目を閉じた。
しかしその時、雄也の脳裡にいつかの玲奈の言葉が唐突に蘇った。
(映画を心配した方がいいんじゃない・・・)(面白いことになるかもね・・・)
そう、あれは幸佑と岡本のことを問い質そうと玲奈を訪れた時のことだった。 その時は言葉の意味を図りかねたが、もしかしたらこのことを指していたのではないか。
もしそうだとしたら、玲奈は桐畑と何か繋がりがあるのでは。 いやそれどころか、もし玲奈も桐畑に荷担していたのだとしたら・・・。
そんな不穏な考えが頭をよぎり、不意に足元から冷たいものが這い上がってくる感覚に戦く。
幸佑はただからかわれただけだと言っているが、実は裏にはとんでもない策略が張り巡らされているのでは。
 「・・・・・・・・・」
自分のこの考えが、ただの老婆心と笑うには妙にリアリティがありそうで、雄也は表情を無くした。
しかしもし最悪のことになっても、今度は必ず自分が幸佑を守ると心に決め、抱きしめる腕にさらに力を込めた。
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