今日は何の日?

昔の今日は何があったのでしょうか?ちょっとのぞいてみましょう。

滋賀県で「琵琶湖の富栄養化防止条例」可決(1979/10/16)

1979-10-16 00:00:00 | 化学系
1979/10/16
沼や湖、湾などで窒素やリンなどの「栄養塩類」が多くなる事を「富栄養化」といいます。富栄養化というのはどのようなことなのでしょうか?

普通、できてすぐの湖には植物が十分に育つだけの栄養分はありません。
その水にだんだんと栄養分となる窒素やリンなどがふえてきて、その栄養分をもとにして植物が繁殖していくのです。
その湖はだんだんと沼のようになり消失していくのが本来の姿です。

ところが、近年問題になっている「富栄養化」というのは、生活排水や工業廃水、農業排水などの人為的要素が原因となってふえてきている物です。

富栄養化というと、響きとしては良いのですが、植物の生長には欠かせない「窒素」「リン」が急速にふえると、植物性プランクトンの数が急速に増えて生態系のバランスを崩してしまうのです。
植物プランクトンがふえすぎると悪臭を発するうえ、見た目も悪く(赤潮などがそれにあたります)、その湖沼などに生息する魚類などの生物にも悪い影響を与えるのです。

最近は「無リン」と書かれた合成洗剤ばかりですが、以前の洗濯用の合成洗剤にはリン酸塩が配合されていました。その洗剤を含んだ生活排水が琵琶湖に流れ込み、1977年から琵琶湖では赤潮が発生するようになってしまいました。大きな琵琶湖の富栄養化が深刻な問題になってきたのです。

そこで1979年に滋賀県では「琵琶湖富栄養化防止条例」を制定しました。
これは工場排水の窒素・リンの排出規制はもちろん、リンを含む家庭用の合成洗剤を滋賀県内では使用する事を禁じたのです。さらに販売も贈与も禁止しました。

もちろんこれは滋賀県内だけではなく、ゼンックに大きな問題提起となりました。
洗剤メーカーはすぐに無リンの合成洗剤を発売し、現在は家庭用ではほとんどが無リンの合成洗剤になったのです。

では現在はこの富栄養化問題は収束したのでしょうか?
残念ながらそう簡単に解決はしていません。
以前のように助剤としてのリン酸塩は使われなくなりましたが、リンを含むアルキルリン酸塩や窒素を含むアミノ酸系の界面活性剤などが主成分の物もあります。

窒素やリンは現在の下水処理の方法では十分取り除く事ができません。流れ出る窒素やリンは絶対的な量こそ減少していますが、窒素やリン酸を含む洗剤がふえてきているという事を理解していきたい物です。

2005.10.08 作成 HA