名邑十寸雄の手帖 Note of Namura Tokio

詩人・小説家、名邑十寸雄の推理小噺・怪談ジョーク・演繹推理論・映画評・文学論。「抱腹絶倒」と熱狂的な大反響。

☆ 「題名の無い詩」 二

2013年05月14日 | 日記

線路の上を歩いていると 
列車の時刻が気に掛かる
時計を持たない旅だから 
何が起きても仕方ない

線路の上を歩いていると 
道のありがたさが分かる
道無き道を行くと決めて 
出掛けた旅なのに
それ程までに 
原始の時代から人は退化してしまった

線路の上を歩いていると 命の尊さを感じる
それは執着に違いない 
が 生きているからこそ分かる事ばかり
死んでしまえば 全て夢の中

トンネルの暗闇から 亡霊達が宙を舞う
君達 未だ生きてる積もりかい
世界中どこもかしこも 
勘違いした連中ばかり

           *

突然 大きな滝に行き当たってしまった
何も聴こえない 
静寂の轟音が目に映る

見えない世界を 観た事があるだろうか
触れないものに 触れた事があるだろうか
鷹が蒼穹に弧を描いている
聖誕紅の血の色が拡がる

春巡る 錆びた手すりの 煉瓦窓
なんて酷い詩だろう 何とかしてくれ

行く春に 心の残る 殺人課
あの死刑囚は無実だったのに 
可哀想な事をしたね

この方が 未だましだ

詩作など 徒労に過ぎない
そう想うと 言葉が溢れて来る

船と浜の間に海が観えるだろうか 
海など見えない
いや 
そのみえない暗黒の闇が果てしない海

           *

人間は金を愛す だが 金は人を愛さない
一体 何を考えているのだろう
論理の陥穽に落ち込めば 戻る道は無い

苔むした岩肌に 
小さな潮が 寄せては返す
いつまでも いつまでも
後からも 又 後からも
沖に光を送り続ける 赤い灯台
すっかり 塗装も剥げてしまった
詩は詩であれば良いと 
似非詩人から教わった筈なのに
余計な事が 気に掛かる

人間の知恵は 
くの字型の防波堤を生み出した
まるで 腰砕けの悪魔の様だ

潮の満ち干きに漂う周期
何千万年も繰り返される大きな法則
だがそんなものも 刹那の出来事に過ぎない

           *

九岸には 九つの岸があるのだろうか
何処にだってありそうだ
無くたって同じ事 言葉に深い意味は無い

かもめが磯を歩き回ってる
殺戮を繰り返しながら
彼等に取って 死は恐れるに値しない
そもそも 死など存在しないのだから
当たり前と云えば それっきり

この世には 
人間より利口な生き物が沢山いる
ほら 
岸辺の蜘蛛が 遠大な計画を成し遂げた
大嵐が来なければ良いのだが
それも 命の定めだから仕方がない

蜘蛛が大きな口を開け にっこりと微笑んだ
いや違う 噛み付こうとしていただけの事
蜘蛛は 何も諦めない
そもそも 何を希む訳でもない
だから 永遠の命を授かるのだろう

中途半端な詩は 美しい
何故だろう

答えが無いからさ


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