旅限無(りょげむ)

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ちょっと図書館を考える 其の四

2007-02-03 12:38:01 | 教育
■讀賣新聞の特集の続きです。

全校生徒が29人の埼玉県秩父市立大滝中学校の蔵書は約7000冊。表向きは十分に見える。が、「実態は30〜40年前の本が大半。赴任した4年前、朝読書を始めたが、生徒が興味を持てそうな本がほとんどなかった」と高野久子校長(59)。同中のある地域は、へき地指定地で、4月の秩父市との合併まで村だった。村に公共図書館はなく、秩父市の最寄り書店まで約20キロ。学校の図書予算は年4万5000円に過ぎない。

■こうして将来を担う若い世代に「格差」が刻印されて行きます。文科省がさまざまな通達や提案をしても、こうした実情とはまったく合わない能天気な物になってしまうと、地方には切り捨てられていると実感してしまうでしょう。「40年前の本」を読む中学生は、歴史の研究をしているようなものです。高度成長期の60年代に出版された本は悪い冗談としか思えない事も書いているのではないでしょうか?


そこで、図書館のない自治体を回る県立図書館の巡回、いわゆる移動図書館を利用することに。合併後は打ち切られるはずだったが、高野校長らが働きかけ、市が事業を引き継いだ。今月8日も、3000冊の本を積んだ車が到着した。「種類が多く、新しい本が多いので毎月楽しみ」と声を弾ませた3年生の下山美佐希さん(14)は、この日も10冊借りた。

■大規模な図書館を造れない地方なら、こうした「巡回」が切り札となります。都市部の図書館でも「死蔵」される本が無数に有るのですから、読者を求めて本の方から出向くのは理に適っています。道路が必要だ!の大合唱をし続ける地方自治体が、こうした活動を真っ先に打ち切るのなら、一体、何のための道路なんだ?と考えてしまいますなあ。


2001年の子ども読書活動推進法成立を受け、国は02年度から学校図書整備費として、毎年130億円を5年間、地方交付税で措置することを決め、支給している。旧文部省が1993年に定めた図書標準という目標もある。だが、交付税の使い道は自治体の判断であるため、すべて図書に充てられるわけではない。全国学校図書館協議会(東京)の石井宗雄理事長は「図書標準を達成義務にするなど、拘束力の強いものにしない限り、お金を出しても変わらない」と訴える。……

■だんだん問題の核心に近付いているようです。虎の子の130億円が本来の目的を無視して別の予算に流用されてしまう。小泉総理がリバイバルさせた山本有三の『米百俵』は、決して『米百俵』という本を各地の図書館に収蔵するための話ではなかったのに、お役人と議員さん達は誤ったメッセージを受け取った事が、全国図書館検索ネットで調べてみるとはっきり分かります。「自治体の判断」が絶対なのですから、子供達が劣悪な知的状態に放置されているのは自治体の首長の責任です。でも、図書館(の中身)を充実させます!という公約で当選する知事さんは居ないのではないでしょうか?


学校図書館の蔵書 国の目標は、例えば18学級の小学校は1万360冊、15学級の中学校は1万2160冊。文部科学省によると、公立学校の平均蔵書数は2003年度末で小学校6930冊、中学校8572冊。目標に達した学校は小学校36.0%、中学校30.8%に過ぎない。
2005年9月27日 読売新聞

■「平均収蔵書数」が目標の半分!文科省が笛や太鼓で囃し立てた「ゆとり教育」は、こうした現状を無視したものだったと言えそうです。退官して気楽にテレビや新聞で「教育」を論じている寺脇研さんなら、「それは自治体の問題でしょ?」とあっさりと切り捨てるでしょうなあ。その寺脇さんが現役で大活躍していた頃の国会を覗いて見ましょう。平成14年12月6日(金曜日)に開催された第155回国会「文部科学委員会」の議事録の一部です。当時の遠山敦子文科相と山元勉 (民主党参議院議員:近畿比例区)との間で交わされた議論ですが、遠山文科相は「学びのすすめ」とか言う脱ゆとり教育としか思えない冊子を全国にばら撒きながら、教育行政の一貫性を主張した変な大臣でしたなあ。


○山元委員 大臣、この5年間、その15年度、この間大臣が出された資料でも合計4928億円、およそ5000億円を順番、計画的にやっていくというんだ。けれども、計画が完成したら、それ以後の毎年の5000億も減るわけでしょう。だから、そういう恐ろしい額のものを、今、三位一体の税源のところの担保がきちっとなければやってはいけないというふうに申し上げている。……図書館図書費の例がよい例です。図書費として130億円おろしたけれども、どこかの道や橋になってしまっていて、学校には1割ほどしか出ていない。そういうような一般財源化について私は反対なんです。けれども、少なくともこの5000億については、きちっと税源が保障されていなければ、私は、大臣が責任を持って……

■こうして文章化すると、何とも申し上げようも無い「悪文」ですなあ。要するに、地方分権で教育予算として5000億円を「一般財源」として5年間、一時金としてばら撒いたら地方の教育は崩壊する、と言っているのでしょう。


○遠山国務大臣 まさに先生が引用されました図書費に見られるように、義務教育費国庫負担金をすべて一般財源化すれば、その使途は全くどこに行くかわからない。したがいまして、制度の根幹を守るということでやっているわけでございまして、他方で、地方分権の重要性、そして国費の削減の宿題というものに対して誠実に答えたのがあの回答でございます。その回答を政府全体として了解していただくということには、それは税源についての配慮が必要だということを私どもも考えているところでございます。

■悔しいことに、野党の「悪文」に対して官僚が練り上げた作文は遥かに良い文章です。でも、言質(げんち)を取られないように細心の注意が払われているので、よく読めば矛盾した内容を強引に繋げて言い逃れるだけの無意味な文章になっていますなあ。
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学校図書館 文部科学委員会 参議院議員 脱ゆとり教育 義務教育費国庫負担 ゆとり教育 文部科学省 県立図書館 移動図書館 地方交付税
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