旅限無(りょげむ)

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荒れる学校の記事を考える

2005-09-23 08:46:23 | 社会問題・事件
■大変だ、大変だ、と何が大変なのか分からずに騒ぐ商売には本当に迷惑します。こんな記事もその一つだと思いましたぞ。

……文部科学省の調査で、小学校の荒れが浮き彫りとなった。大阪府や神奈川、埼玉県など大都市部で目立って増えている。小学生はなぜキレやすくなっているのか。
 千葉県北部の小学校の4年のあるクラス。休み時間、ささいな口論から児童が暴れ出す。鉛筆や教科書を手当たり次第投げつけ、椅子を振りかざす。教室はたちまち大騒ぎとなり、学校が事前に決めた抑止役の男性教諭たちが駆けつけ、男児数人を押さえつける。
 50代のベテラン女性教諭が担任だが、4月当初から授業は崩壊。5月の連休以降はほぼ毎日“暴動”が起きた。保護者有志数人が授業を監視する事態となり、学期途中で38人を19人の少人数2クラスに分けた。
 ある保護者は「ありえないことが起きている」と嘆く。暴れる児童は決まっている。学校にカッターナイフを持ち込む。教師に悪態をつく。級友の肩にかみつき、1週間のけがを負わせたこともある。児童には2~3人が同調する。保護者会に児童の親が出ず、解決の糸口はない。担任の家庭訪問に親は「家ではいい子。暴れるなんて考えられない」と繰り返す。

 東京都多摩地域の小学校。「今の小学生の校内暴力は、中学生とはまるで質が異なる」とベテラン教諭(55)が言う。この学校でも3クラスが崩壊している。「中学生には大人への反抗心という要素もあるが、小学生の校内暴力は授業中に我慢ができず立ち歩くことの延長で、むずかる赤ん坊と同じ。まったく社会性がない」
 小学生の暴力行為の最も多かった大阪府は320件(前年度比31%増)。次いで神奈川県318件(同34%増)▽兵庫県173件(同2%減)▽埼玉県127件(同164%増)--で、小学校の荒れは大都市部で多く、伸び方も著しい。

 ◇不登校の高校生6万7500人

 全国の国公私立高校の不登校生徒数が04年度6万7500人に上ることが22日、文部科学省の調査で分かった。高校生を対象とする不登校調査は初めて。在籍者に占める比率は1・82%で、不登校の生徒の36.6%に当たる2万4725人が退学している。小中学校も含めた不登校者の総数は19万817人。  毎日新聞 2005年9月23日


■毎日新聞からの引用で、井上英介さんという記者が二日連続で教育問題を書いています。問題意識は高いのでしょうが、とても分かり難いのは何故なのでしょう。本当に大変な問題が全国的に起こっているのか?国民的な議論を起こして考えなければならないのか?
「文部科学省の調査」と聞けば、問題は全国的なもののような気がします。「都市部」と切り取られると、人口偏在や教育格差の方が深刻な問題なのではないのか?とも考えてしまいます。「千葉県北部の小学校」と限定されると、単なる一地域の話ではないのか?と、だんだん本気で記事を読んでいる自分とは関係が無い話のように思えて来ます。

■「50代のベテラン女性教諭」と前置きしてしまえば、これは一人の担任教師の資質の問題を問わねばならないでしょう。そんな疑問を置き去りにして「4月当初から授業は崩壊」と話は時系列に移ってしまいます。「5月の連休以降はほぼ毎日“暴動”」と人騒がせな表現になって、「保護者有志数人が授業を監視」と「学期途中で38人を19人の少人数2クラスに…」と、とても具体的な話が紹介されます。しかし、これは千葉県北部の一つの小学校4年生の一つのクラスの話なのだという事を忘れてしますと、何だか日本中の小学校が動物園か少年刑務所のような状態になっているような印象を受けます。

■「ある保護者」という匿名の証言者が唐突に出て来て、「暴れる児童は決まっている」と本当の問題の所在が記事の半ば過ぎてから言及されます。この困ったガキンチョは「学校にカッターナイフを持ち込む。教師に悪態をつく。級友の肩にかみつき、1週間のけがを負わせたこともある。」というトンデモない悪ガキだと分かります。そして、案の定、「保護者会に児童の親が出ず…」と最も重要な事実があっさりと書かれています。それならば、保護者が助っ人に来て授業を監視していると言っても、この学級の保護者達はまったく団結しているわけではない事が分かります。更に、「担任の家庭訪問」という切り札となるべき場面で、親は「家ではいい子。暴れるなんて考えられない」と繰り返す。と言うオチが御丁寧に付いているのですから、この記者が本当に取材しなければならないのは、この奇妙な保護者でしょう。個人情報に配慮すると言えば、自分の責務から逃れられると考えているのでしょうか?でも、どう考えても、問題の中心にいるのはこの保護者でしょうに!

■単なる千葉県北部の一つの家庭の問題が、全国の教育問題のように扱われるのは間違いです。何だか望遠レンズと接写ズームレンズを気ままに付け替えて撮影した素人映像のような記事ですなあ。この恣意的な手法が、読後の混乱を生むのです。ちょっと気になって、「文部科学省」の統計資料を検索して見ましたら、以下のような基本データを得ました。


小学校の児童数は719万7千人(前年度より3千人減少)で,過去最低。
中学校の生徒数は362万6千人(前年度より3万7千人減少)で,過去最低。
高等学校(全日制・定時制)の生徒数は360万5千人。

■全国に720万人もいる小学生の中に、大脳か精神に異常を持った生徒が混じっていたり、本人の資質には問題が無くても保護者がその役目を放棄していたり、どちらにしても問題の有る一つの家庭が有った、記事はそれだけの情報しか伝えていない事になります。まして、記事に登場する50代のベテラン女性教諭の力量や考え方には一切の言及が無いのですから、針小棒大の「お騒がせ記事」になってしまう危険性が有りますなあ。

■東京都多摩地域のベテラン小学校教諭(55)の発言も引用されていますが、この教諭がどんな経歴・実績を持っている人なのかがさっぱり分かりません。この記者は「ベテラン」と書けば何かの権威を保証しているような錯覚をしているようです。余程の悪事を働かなければ、問題教師であってもちょっとした配置転換で定年までクビにならない公務員の教師身分を考えれば、「ベテラン」というだけでは説得力を持ちません。

■そんな頼りないベテランの発言に寄り掛かるよりも、合計1000万人の小中学生に対して、ゲーム・ソフトがどれだけ売れているのかを追跡した方が意味が有るかも知れません。「表現の自由」や「市場の原理」は認められねばならないにしても、血生臭い暴力ゲームを現実世界とつなげてしまう困ったガキンチョが、仮に1000人に1人現れても、全国に1万人の凶暴なガキンチョを生み出す事になるわけです。千葉県北部の小学4年の凶暴なガキンチョが、どんなゲームをどれ程の数で所持していて、毎日どれだけの時間、バーチャル世界に浸っているのか、そして、それを親はどう認識しているのか、そんな追跡取材が欲しいところです。

■みんなで考えよう、などと呑気に構えている内に、凶悪犯罪が起こってしまうのを放置する事にもなり兼ねない本当に凶悪なガキンチョが毎日暴れているのならば、犯罪を犯して被害者が出る前に、特別な指導と保護が与えられる施設に移すべきではないのでしょうか?少年法の穴を塞ごうと動き出したのは、ほんの数年前で、こんなに対応が遅れたのは、妙な教育幻想が蔓延しているからでしょう。その幻想を膨らませた責任の多くの部分を新聞報道が負っている事を自覚しない限り、こういう毒にも薬にもならない教育記事が書かれ続けるのでしょうなあ。凶悪犯罪が起こってから、「周辺を取材してみると、以前から……」という記事はもう読みたくない、それが治安の悪化に怯えて暮らす国民の気持ちなのではないでしょうか?

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4 コメント

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文部省何を今更  ですね (なかまた)
2005-09-23 13:43:20
もう15年以上も前、もしかしたら20年近くも前の事件ですが、栃木県でフツーの中学生が女子教師をナイフで刺殺した事件がありました。

そのあとから文部省は何をしてきたのでしょうか。

大阪池田小学校事件も、そのときに文部省と法務省がきちんと対応すると防げていたのだと思います。

学校と言う閉じられた社会がひずみをうんでいます。

空港に設置されている金属探知機を校門の前に配置して、チェックするとかやってもおかしくないと思いますね。

必ず大反対する教師や親はいると思います。でもどのように生徒の安全を守るのか、具体的な案がありません。

小泉流のアメリカ的な社会にしていくのなら、警察官を各学校に配置することも忘れないでほしいですね。
なかまたさんへ (旅限無)
2005-09-23 21:59:16
戦後民主主義の混乱と、それに輪を掛けた大学紛争当時の混乱。最高学府が革命の拠点になるという幻想は、中華人民共和国の建国伝説からフランスに飛び火して、根っからの舶来好きの日本の知識階層を熱狂させたのでしょうが、戦時中の短い期間に起こった言論弾圧の反動が社会主義幻想を大きく膨らませ、文化大革命を誤解した人々が、大学とマスコミで大きな力を得たまま、無駄な時間が流れまして、産業界や出版界が順に冷静さを回復したものの、どうやら、世間の風を受けない官僚組織や教育学の中に、負の遺産が残っているような気がします。人権思想の拡大解釈や自由の暴走、やはり、戦前は全部否定して、その逆が全て正しい、そんな短絡的な思考が今も克服できずに放置されているような気がします。文化という大いなる虚構を国家が支配しようとする教育行政には、常に法の規制と現実感覚が途絶されない回線が常に開かれている必要がありますね。
何だか (a)
2005-09-24 16:40:58
学校(文部科学省)に押しつけすぎだと思うのです。世間の風潮が。



親個人の責任はどこへ行った?

その親がきちんと出来ないのも、かつて彼らが受けていた教育の所為だと言わんばかり。

そんな事ばかり言って居たら、永久に問題は解決しないでしょうね。



ゲームやインターネットを妙に批判するのも、非常に滑稽だと私は思います。



全て環境の所為にするのは、何だか頂けないなあと思うのです。



意志ある人間なのですから、彼ら個人個人の責任をもう少し認めてもよいのでは・・・。





何か事件を起こした子どもの保護者は出てこないのに、何故、その子どもが通って居る学校の校長が謝罪するのか、とても不思議ですよね。

どう考えても親の責任だろ!と毎回ツッコミを入れてしまいます。



aさんへ (旅限無)
2005-09-24 17:46:24
読売新聞が『週刊誌はどこへ行く』という3回シリーズの特集記事を掲載していて、今日で終了しました。無責任でセンセーショナルな姿勢が読者から見放され、次々と訴訟を起こされて負けている事から掘り下げていました。確かに、売らんかな!の姿勢は正して欲しいものです。でも、青少年の事件が起こるたびに、新聞やテレビではaさんの仰る通り、「校長」が記者会見して評論家が尤もらしいことを言っておしまいになるのに、週刊誌は頑張って事件の裏側や保護者、家庭環境などを細かく取材してくれます。東京北区で起こった親殺し事件でも、実は某宗教団体の熱心な信者だった親が、朝晩、信心のお祈りばかりしていて仕事を子供に押し付けていた事実は週刊誌しか書きませんでした。他の事件でも、家庭が崩壊していたとか、近所では有名な不良だったとか、「社会が悪い」「国民全員で考えるべき問題だ」では済まさない取材が行なわれることが多いようです。テレビや新聞だけで、教育問題を考えていると、aさんが疑問に思うような世相が出てきてしまうのかも知れませんね。

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