同人誌 9人の<なまか>たち

 連作小説を9人のなまかたちで、リレー形式で書いていました. 詩:短歌:俳句も掲載中です。

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2012年09月21日 | 著者 プロフィール
 北村静湖

 女性

 趣味 読書

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バトン小説「サークル」に参加して   ヒミコ 筆

2007年11月23日 | 小説 サークル
 最近まで、ちらっと、バトン小説のメンバーを恨んでいました。なんでえ!!プンプン! せっかく、私が一生懸命、登場人物のキャラクターを一人ずつ、ちゃんと調べて知恵を絞って、丁寧に作っていたんだよ~~

溝口徹は、指を切り落とされたって書いたら、そうじゃなくてただの指のケガだって、変えられ、

常磐組長:春樹は殺されるし、

組長の2号の田沼鬼怒子は組長に嫌われたあげく、殺人未遂の現行犯で逮捕され、

5代続いた常磐組は組員たちも殺されて解散だってえ~~酷いヨオ、

 私はサ・・・akikazeさんが、ヤクザ路線に変更したから、ヤクザの本を3冊読んで、ヤクザビデオもしっかり見てから、せっせと書いたのに~~

 24話、自分の当番が回ってきたら、苦心して作ったキャラクターが、皆居ないよ、エエンエエン~と、泣きそうになって書いていました。

 でも、何でだろう? 小説のメンバーは皆、優しくて善い人揃いです。

 やっと、最近気がつきました。もしかしたら、私が丁寧にヤクザや2号サンの人物を書いたから、小説のメンバーたちに、本物の悪い人たちに見えてしまったんだ。それで、皆は、徹が指を切り落とされて、ショックを受けて可愛そうになったり、ヤクザは居なくなった方がいいとか、組長の2号で金貸しの悪徳ばあさんなんか、逮捕されたらいいんだって、そういう、優しさや正義感、ヤクザに対する腹立ちを、心の中にちゃんと持って、皆で真剣に、悪い人がいなくなればイイナって、本気で小説を書いていたんだって、わかった。

 バトン小説のメンバーの皆、皆を恨んでふてくされていたのは、私の見当違いでした。ゴメンナサイ。それと、書いた登場人物を本物だと感じてくれて、悪い人物たちに本気で腹を立ててくれたのが、嬉しいよ♪

 これからも、仲良くお願いします。最初に、バトン小説を書こうって、皆を集めてルールを決めて、連絡もしてくれた、ミナカさん、ありがとう。

 ☆私たちを応援しながら小説を読んでくれた皆様、最後までありがとうございました。

 バトン小説発起人 ミナカ

 執筆者 ミナカ とんちゃん(=黒いリンゴ) akikaze 湘南。(=パパ) さくら つる ヒミコ
    


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<子守唄>   てんとう虫 作

2007年11月21日 | 


  あなたに出会えてよかった ずっと遠いところから
  ペガサスに乗ってやってきた
 
  今宵もあなたの為に 歌を唄ってあげましょう
  
  やわらかな肌のぬくもり 感じながら・・・

  夜空をピーターパンと一緒に飛び回り
  星の小川でみずあそび


  あなたにもらった たくさんのありがとう
  わたしには何ができるだろう

  夢の世界をつなぐ橋 星のシャワーで架けたなら
  
  今宵も歌を唄ってあげましょう

  あたたかな肌のぬくもり 感じながら・・・

  ブラックホールをくぐり抜け 
  銀河の森でおにごっこ

   

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「サークル」最終話   ミナカ 作

2007年11月13日 | 小説 サークル
「事情聴取は もう出来るか?」
青木が入院している警察病院の担当医師に <シゲル> 大浦茂は聞いた。
「もう大丈夫でしょう。ただ回復して間がありません。無理はしないでください。」
「わかっている。」
自身も先の銃撃戦で軽症を負ってはいたが 内部の事情を知っている大浦刑事は
どうしても青木に聞いておかなければならない事柄があった。

コンコン・・・
「失礼するよ」病室のドアを開けた。
もうすぐ冬も近いというのに 暖かな日ざしが窓の外で揺れていた。
青木は 大浦刑事の声が聞こえなかったかのように 窓の外をじっと見つめたままベッドに上半身を起こして座っていた。

大浦は傍らにあったパイプ椅子を引き寄せ 青木のベッドの横に腰掛けた。
「もう 大丈夫らしいな。」
青木はゆっくりと大浦刑事に顔を向け、「ご迷惑をお掛けしました」と深々と頭を下げた。
「お前はもう死んでいたと みんながそう思っていた。なぜ今まで現れなかったんだ?」
ふと青木は目を落とし、「死んでいた そう 自分でも思いたかったんです。けれど 妻の涼子までもが巻き込まれてしまった。私が行方をくらましたがために・・・」

青木はこれまでにあった経緯を ゆっくりと そしてはっきりと力強い声で語り始めた。

「私はずっと常盤組の顧問会計士をしていました。あの組は規模は小さかったのですが 常盤組長を始め
女帝 田沼鬼怒子も野心は人一倍強かった。
彼らは大金を稼ぐためにあらゆることをしていました。それは もうお分かりだとおもいますが
法の目を潜り抜けるような詐欺を繰り返し インサイダー取引など 数え切れない悪事を働いていました。」
「その手助けを お前がしていたんだな?」
「いいえ!・・・・はい・・・そう、手助けになってしまっていました。いつのまにか・・・」

どんどんと重ねる自分の罪に怯え このままではいつか自分が殺されてしまうかもしれないと危惧した青木は
妻の涼子と偽装離婚に踏み切った。
そして数々の犯罪が収められた証拠を ICチップに焼き付け こっそり持ち出したのであった。
証拠の品を安全と思われる場所に隠し 自分も海外に逃げる用意をしていたのだが
青木の裏切りに気づいた常盤に追われ 成田へ着く前に捕まってしまったのである。

「私は殺される覚悟をしました。けれど証拠の隠し場所だけは絶対に吐くまいとしていましたが・・・」

東京湾に近い倉庫で 殴る蹴るの暴行を加えられ のこぎりで薄く皮膚を切り裂かれ ガスバーナーで肌を焼かれた。
気を失うと アンモニアを嗅がされ 意識を取り戻すと また拷問を繰り返され
とうとう耐え切れずに 隠し場所をしゃべってしまった。
常盤の那須の別荘 そこに虎の剥製が飾ってあり その剥製の腹にICチップを隠したと言った。
その隠し場所が本当かどうか確かめるために 青木は倉庫を連れ出され 車に押し込められそうなところを
必死に逃げ出し 止めようとした組員が彼に向かって発砲 同時に海に落ちていった。
海に沈んでいく青木を てっきり死んだと思い 彼らはその場から立ち去ったが 
実際は 弾は青木に当たらず よろめいて海に落ちただけだった。
海から浮き上がったとき 彼らの姿は見えず 幸い深夜だったため この騒ぎに誰も気づくものはいなかった
防波堤の縁に垂れ下がっていたロープを掴み 必死に岸へ登った青木は そのまま姿を消した。

「那須の別荘に隠してたというのもウソです。虎の剥製なんかじゃない。」
青木はにやりと口元に笑いを浮かべ まるでほんのいたずらをしたのだという感じで言った。
「灯台下暗し。あいつらには 何処かに隠してあるという思いがあったから 見つけられなかった。
組長の部屋の神棚に置いたんです。彼らは毎日あの神棚を拝んでいた。証拠のチップがそこにるとも知らずにね」
「そのICチップはもう回収してある。一緒に潜入していた刑事が見つけたよ」
「は!あはははは!ユーモアのある刑事さんだ・・・あの場所を見つけるなんて」
「まぁ 女装して潜入していたくらいだからな」
二人は病室に響き渡る声で笑い続けていた。そして
「刑事さん 私は一度死んだ。だから どんな裁きを受けようとそれは覚悟しています」
青木は 澄み渡った病室の外の日ざしを受けながら さわやかに微笑んだ。



七海はエンターキーを押した。
「これで良かったのかい?」福山は七海に聞いた。
「ええ・・・涼子さんが書いた小説をアップすることで 残った常盤組の者達がいっせいに那須の別荘へ向かうはずよ」
「あとは本職の刑事に任せるこったな」杉山はぷかりとタバコの煙を吐き出し言った。
「涼子さんは今頃警察に向かっているわ。私にこの小説をアップするようにCDを渡して行った時に そう言ってた」
「しかし この最後の章はすごいな。まだ常盤組は解体していないように 組長も生きているように さらに派手に書かれている」
「ふふ これくらい派手な内容にしなくちゃ。常盤組事態は 本当はこんなに大規模じゃないのよ
けれど 全国に名をとどろかせていたのだと思わせることで おびき出せる。」

「小説は いったん打ち切りね。尻切れトンボのようになってしまったけれど・・・」
七海はノートパソコンをパタリと閉じて言った。
「まぁ 一般の読者には悪いが 事件はこれで一応の終結を迎えるわけだしな。
続けていく理由もない・・・か」
福山の言葉を継ぐように
「なんなら 俺が続きを書いてやってもいいぜ?どうせ暇な隠居生活だ」
杉山がニヤリとしながら言った。
「またまた・・・杉山さん 小説書く趣味なんか聞いてませんよ 俺」
七海があっ!と声を上げた。
「もしかして・・・・<湘南>さん?」
「へっ?!」驚く福山
「バレたか・・・。そうだ あれは 俺が書いた」

「俺が七海さんのマンションを突き止めて ここで『サークル』を読んでいるうちにわかったことがあった。
それは 七海さんが複数の人間に成りすまして小説をアップしていたことと あと数人これに関わっていた」

杉山は最初は七海がこの事件の重要人物だと思い 七海の撹乱を狙って<湘南>として話しを書いていたのである。
「まぁそれは勘違いだったが もう一人 撹乱目的で <akikaze>の名前を使って書いたやつがいた。」
「それが 田沼鬼怒子だった」七海が答えた。
「そう。田沼はこの小説が なんらかの形で内部の者が情報を流していると気づいていた。
だからそれを逆手にとって 情報提供者とのやり取りの混乱を期待したのだ」
その裏で黒須を操り 磯辺を操り たんなる業突く婆だとタカをくくっていたのだが
どうしてどうして なかなかの策士であった。
結果的には そのときの”ヨッパライ”を演じていた<シゲル>がますます田沼の信用を厚くして
内部情報を探りやすくなったのだが・・・。

「徹さんも警察で事情聴取を受けているわ。<シゲル>こと 大浦茂刑事に・・・ね」
「青木の事情聴取も終わったようだ。すべてを語り終えて ほっとしていたとさっき連絡が入った」
「杉山さんも 定年退職しているのに 結局 警察気質が抜けていないんですね」福山に冷やかすように言われて
「退屈しのぎにはなったさ。まぁもうごめんだがな・・・こんな大掛かりな事件は」
「コーヒー 冷めちゃいましたね。また入れなおしますよ」福山がキッチンに向かっていく。
(本当にこいつは 探偵なんかより喫茶店のマスターの方が似合ってると思うのだがな)
ガリガリと豆を熱心に挽いている福山を見て 杉山は思った。

タバコをもう一本取り出して ふと火をつける手を止めた。

ハルの楽しみを奪ってしまうかな。この小説が途中で終わってしまうと・・・
やっぱり 俺が書いて・・・

香ばしいコーヒーの香り漂う中 ベランダに向かい 
もうすぐ来る冬に抵抗するかのような 暖かい日ざしを見つめて
杉山は そんなことを考えていた。

「コーヒー 入りましたよ!」福山のはつらつとした声が聞こえる。



                            THE END
   

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「サークル」二十四話    ヒミコ 作

2007年11月12日 | 小説 サークル
 事故死や変死の場合、遺体は警察に運ばれ、警察病院で解剖検査をされた後、開いた体を再び縫い合わせてから、遺族の元に返される。常盤組長たちの合同通夜は、惨劇の後として、当然、1日遅れて執り行われる事になった。

 事が事である。さて、やくざといっても、そこいらのチンピラとは格が違う。5代も続いた、由緒ある常盤組。組長と、組長の2号、幹部が死んだからといっても、どっこい、総資産額が、推定300億円。さらに、あちこちに、高利で大金を貸し付けている。屋敷内で銃弾劇があっても、火事で丸焼けではないから、株券やら、不動産の権利証、貸し金の証書などは、そっくりそのまま残っていた。

 それに、全国に散らばった子分たちの数が、ざっと2000人。親分が死んで、組を抜ける者が多数出たとしても、最低でも、半数は組にとどまるだろう。

 さて、常盤組の遺族は、車椅子に乗っている本妻の貴美子、62歳。子供の頃にはしかを患い、幸い命は取り留めたものの、目がほとんど見えない。もともと体が弱く、4年前から物忘れがひどく、耳も遠くなり、アルツハイマーで介護施設に入院していたのだが、形ばかりでも、とにかく喪主がいなくては通夜も葬式もできない。急遽、お手伝いのクメが介護施設に迎えに行って、貴美子の傍に、片時も離れずに付き添ってかいがいしく世話を焼いている。

 貴美子には、組長の春樹との間に娘が一人いたが、アメリカの大学に留学してから、ヤクザな父親を嫌って家を離れ、大学卒業後は、カナダの学校で英語の教師をしたまま、それきり戻ってこなかった。今回も、まだ、家に帰ってきてはいなかった。

 残された子分たちの中で、祖父母の代から春樹組長の片腕となって組のために働いていたのが、小頭(こがしら)の柳場大二郎。別名、<常盤組の大政>と、皆から一目置かれている大幹部である。大二郎は、警察の鑑識係に堂々と声を掛け、さっさと検査を済ませるように促すと、<岩松>というあだ名の松田岩夫に皆に掃除をさせるように指示を出すと、大広間に100人の幹部たちを集めて

「おい、お前ら、おたおたしてんじゃねえ!こんな時こそ、人様の前では、びしっと胸張ってろ! 亡くなった親分に恥をかかせるんじゃねえ。人前で、涙なんぞこぼしたら、他の組の奴らに、やい常盤の連中は男のくせに意地が足りねえと、末代まで笑い者にされるんだぜ。わかったな」
「はい、兄い」
「声がちいせえ、腹の下に力入れて、ばりっと返事しろ。わかったな」
「はい、兄い」

 この、小頭の柳場大二郎を中心に、常盤組の子分たちは、親分の死を悲しむ暇もなく、一丸となって通夜の準備にとりかかった。寺は、目白の本岳寺(ほんがくじ)。本岳寺の正門の両脇には、供養の花輪500個がずらりと立ち並び、50人の大幹部が黒紋付の羽織袴で「常盤組」の提灯(ちょうちん)を持って勢揃いし、全国からの弔問客を出迎えていた。

 関西の<山城組>、関東の<吉住組>、東海の<大熊組>、九州の<大西組>、四国の<四万組>、東北の<北甲組>などなど、全国から大親分たちが直々に弔問の門をくぐっている。ちなみに、通夜の香典は、100万円など珍しくもなんともない。

 受付は、大二郎の息子で、<小政>呼ばれている雅人、<岩松>の弟で、<小松>と呼ばれている省吾が、会計記帳の責任者となり、下っ端の子分4名を従えて、しっかりと挨拶をしていた。もちろん年齢が若いといっても立派な大幹部、雅人も省吾も黒紋付の羽織袴である。雅人は、女がすれ違ったら必ず振り返って見惚れるほどの、なかなかの男前だが、来客は男の世界。渋い沈黙とお辞儀の繰り返し、のみであった。

 通夜は、20人の僧侶たちの読経で、盛大に執り行われた。この寺は部屋数が多く、宿坊にもなる。他の組の親分子分たちが、明日の告別式に出るために泊まっていけるようにと、びしっと用意が出来ていた。 組長の遺体は、本堂に数枚敷かれた遺体の布団の真ん中である。

 通夜が終わると、<大政>こと、小頭の大二郎は、体の弱い本妻の貴美子を労わって、常磐組の屋敷に戻って休むようにと、優しくクメに言い、<小政>の雅人に車で送るように指図すると、自分たち50人が、本堂で、組長へのろうそくと線香を絶やさずに、経を唱えたりしながら、寝ずの番をする事にした。

 夜11時。風呂から上がった貴美子とクメがそろそろ寝ようとしていると、インターホンから、太くて優しそうな男の声が聞こえた。
「喜美子さん、山城です。急な事で、大騒動だったが、体の方は大丈夫ですかい」

 クメがインターホンに出た。
「あ、山城様、奥様はまだ起きておられますよ。この度は、ご心配をかけて申し訳ございません。すぐに、門を開けます。夜遅いので、右側の入り口のロックを解除いたします。どうぞ、開けて庭の方にお入りになってくださいませ。灯りのついている部屋がすぐに見えますから、どうぞ」

 山城が、ぼんぼりの灯りで照らされている庭に回ると、庭に面した和室に一部屋だけ灯りがついていた。部屋の障子がするすると開いて、クメが出てきた。
「山城様、こちらへどうぞ」
「少し、貴美子さんと二人で話したいんだが、なに、ちょっとの間だ。20分ほど、二人きりにしてくれないか」

 山城はクメの手に、紙に包んだ小さく畳んだ1万円札を握らせた。クメは、にっこり笑って金を受け取ると
「はい、わかりました、親分さん」
 クメは、廊下をスススと右に歩いて、端の部屋に入って姿を消した。

 山城は部屋に入ると、車椅子に座っている浴衣姿の貴美子の手を優しく握り
「貴美子さん、わかるかい?山城だ。私も妻を亡くしてから4年目だ。私は、最初にあなたをこの家で見た時から、ずっと好きだった」

 貴美子は幼女のようにうなずいて
「ウフフフ・・・山城さんは、私の事が好き?」

 山城は子供をあやすように、貴美子の肩を抱いて、頭を撫でながら
「うん、私は貴美子さんが好きなんだ。貴美子さんは、私の事が好きだろう」
「ウフフフ・・・貴美子も、好きだよ。大好き」
「そうか、それはよかった。じゃあ、貴美子さん、私と結婚しよう、いいね」

「うん、いいよ。結婚する。私と山城さんは、三々九度、だね」
 貴美子がサイドボードを指差すと、ナポレオンのブランデーと、ブランデーグラスが入っていた。

 山城は、ナポレオンを2つのブランデーグラスに注ぎ、貴美子に持たせると、「乾杯」と、カチンとグラスを鳴らし、まず先に、自分がブランデイを飲んだ。

 「ウ!!うう・・!!」
 突然、山城がのどを掻き毟って、倒れた。黒い漆の螺鈿のついたての陰から、雅人が姿を現し、

 「奥さん、2分後に大声で、クメさんを呼んで警察に通報してください。警察はうるさくてしつこいから、このまましばらく、ぼけたフリを続けていてください」

 「ええ、わかったわ。雅人さんは、どうするの?」
 「私は、裏道から寺に戻ります。いいですか。言われたとおりにしてくださいよ。今から2分後に、大声を上げて、クメさんを呼ぶんです」

 「ええ、わかった。言われた通りにする。雅人さん、気をつけてね」
 そして、雅人が姿を消してから、きっちり2分後、貴美子の悲鳴が、夜の闇を切り裂いた。

 「クメ!クメ~!! 山城さんがここで寝てしまったのよ~!!」

 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞

 さて、時計の針を24時間戻してみよう。

 一流ホテルマンの心得に、「客の前では壁になれ」という厳しい鉄則がある。ニューオオタキの、優秀なホテルマン、久住麻衣子は、常に客たちのプライバシーを見ては見ぬフリで、10年以上、文字通り、忠実にホテルの壁として生きてきたのだが。今朝の朝刊を見て、唖然とした!

 どの新聞も、一面に、デカデカと

 《常盤組長、交通事故で急死! 常盤組長宅で、発砲した青木容疑者、組員の殺害容疑で逮捕。5代続いた常盤組は解散か!!》

 千葉・幕張のホテル:ニューオオタキのスイートルームで、常磐組長:常盤春樹一行は、ぐっすりと眠っていた。このスイートルームは、佐東商事の新社長:西山が自分の部屋として2年分の宿泊費を前払いして使っているのだが、西山は今は、商用で中国に出張中。部屋が空いている時は、親友+兄弟分のヨシミで、常盤春樹が住んでいる。春樹たち一行は、サングラスをかけたまま、深夜ホテルの裏口から入り、お忍びで泊まっているのだ。

「これはいったい? 最上階の西山社長のスイートルームには、常盤組長の春樹様、田沼鬼怒子様、前田菊乃様、磯部様が、幕張モーターショーの帰りだと言って、泊まっているのに・・・それに、前田菊乃さんは、誰がどう見ても、楚々としたうら若い女性、40過ぎの女装のオカマ刑事だったなんて、ありえないわ」

 久住麻衣子は、考えた。

・・どうしよう、今からスイートルームに新聞を届けなきゃならないけど。壁になれ、壁になれっていうけど~新聞で死んだと報道されている常盤組の人たちは、いったい誰なのかしら? 早稲田大学卒業で、英会話に堪能+アメリカ留学して、修士課程も修めてきた、ニューオオタキでNO・1の才女の麻衣子は、今までに悩んだり、ためらったりした事がほとんどナイ。しかし、10年間のホテルウーマン生活で、今回のような珍事に出くわしたのは初めてであった。

フロントの電話が鳴った。気になっているスイートルームからだ!

「もしもし、おはようございます。西山様」
「や、久住君、おはよう。今朝の新聞を届けるついでに、ちょっと部屋に顔を出してくれないか」
「はい、西山様。すぐにお部屋に参ります」

 久住麻衣子が新聞を持って、スイートルームに入ると、確かに、元気な常盤組長が、白いタオル地のガウンを着てソファーに座り、にこにこと、葉巻を咥えていた。
「お、おはようございます。今朝の朝刊でございます」
「おはよう、久住君。ところで、私は誰かね?」
「は、はい、西山社長のいとこ様の、西山冬樹様です」
「それでよろしい。久住君は、なかなか賢い。さすがに優秀なホテルウーマンだ」

 奥の部屋から、田沼鬼怒子が、白いガウンで顔を出した。
「久住さん、おはよう。私は誰でしょう?」
「はい、おはようございます。お客様は、奥様の西山秋子様です」
「あなた、いつ見ても、素直で可愛いわね。ここにかけて。一緒にお話しましょうね。支配人から聞いたわよ。明日はあなたのお誕生日なんですって、1日早いけど、いつもあなたにはお世話になっているから、プレゼントを用意したの」

 勧められて座ったソファーの前の、テーブルの上に、銀色のリボンがついた黒い小さな紙製の手提げが載っている。手提げにプリントされた白い文字は、<Burugarie> 

「え、私にですか」
「そうだよ。これは君にだ。遠慮しないでもらいなさい。君のために、秋子が選んでくれたんだよ」
「ブレスレットなんだけど、あなた手がきれいだから、きっとお似合いよ」

 久住麻衣子は、とっさに
「西山様、プレゼントをありがとうございます。大切に使わせていただきます」
 深く頭を下げて、プレゼントを受け取って、スイートルームを出た。

・・・見ザル、言わザル、聞かザル、あの人たちは、ヤクザだから、何でもハイと言わないと、何をされるかわからない。果たして、包みの中を開けると、およそ、40万円はするだろうと思われる、小さなダイヤが埋め込まれた、現代的なデザインの、プラチナのブレスレットだった。

 菊乃が、ファーイと大あくびをしながら、ピンクの歯ブラシを手に起きてきた。
「パパ、おはよう」
「菊乃、この新聞で死んでるのは、誰なんだ?」
「ああ、これ! パパが佐東商事のパーティーの後、ホテルの駐車場で、銃撃を受けたでしょう。だから、私はまず、パパの無事を考えたの。私が新車欲しい!って言えば、パパは車が大好きだから、幕張のモーターショーに喜んで、何日でも車を見てるでしょう、家に帰るのを忘れるくらいにね」

「そりゃあ、なあ、私はアメ車が好きだから~~」
「実は、私たちのそっくりさんのアルバイトを募集して、屋敷内で影武者をさせていたの。死んだのは、全部、その影武者のアルバイトの人たちよ。気の毒だったけど・・・ま、皆に保険は掛けておいたから」

「ううん、そうだったのか・・私のは、よく似ているな」
「私、この女みたいに、目つきが悪くないわよ、ねえ、パパ」
「そうだね・・鬼怒子の方が、ず~っと綺麗だよ、なあ」

「パパ、酷いのよ。私の物まねしてたの、40過ぎのおっさんだって、気持ち悪う~~」
「アハハハ・・・これじゃねえ。まるきし、オカマだわ!!それにこいつは、生きてる」
久しぶりに、鬼怒子がきげんよく笑っていた。

「磯辺、磯部、私の足袋、洗っておいてくれなかったの!!」
「あ、お嬢様、もうしわけございません。すぐに新しいのを買って参ります」
「ちょっと待って。これと同じ足袋じゃないと、あんたの事射殺するわよ!」
「は、はい、お嬢様、こ、これですね。はい、持って買いに行ってきます」

「小松がとんだドジを踏んだが・・・うっかり刑事を雇うなど」
「でもパパ、警察が屋敷の中から悪事の証拠を見つけるなんて、どだい無理よね~」
「それはそうだ! 私の家の何処を探そうが、何も見つけられんだろうて」
「ウフフフ・・・探せ探せ~~ご苦労様」

   つづく・・・・
   

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< 顔を上げたら > てんとう虫 作

2007年11月12日 | 
 いわし雲流れる空を
  青く広がる空を飛ぶ 飛行機を
  どれだけの人が見てるのだろう

    時の狭間に追い込まれ流されて行く中で
    立ち止まって上を見上げる余裕もなくて・・・。

    転ばぬように 下ばかり見て・・・。
    涙隠したくて 下ばかり見て・・・。

  ほんの少しでいいから 立ち止まり
  顔を上げて空をごらんよ

    無限に広がる青の色に、雲の白さに救われるから
    みんなと繋がっているって気づくから

    一人ぼっちじゃないってわかるから
    さあ! 顔を上げて!!

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「サークル」二十三話    つる 作

2007年11月11日 | 小説 サークル

黒須は七海を誘拐しようとしてマンションに行き、嫌がる七海を無理矢理車に押し込もうとしたところを、張込んでいた警察に現行犯逮捕された。

事故にあった磯部は複雑骨折による重傷、同乗のシゲルは腕に軽傷を負った。突っ込んだ方の青木は意識不明の重態であったが、3日後意識が戻った。ショックでしばらく話ができない状態だが、丈夫な車体とエアバッグのおかげで、身体は軽傷ですんでいる。

常磐組は事実上解散になることは明らかだった。
組長以下幹部が殺され、残されたものは指示待ち組ばかり。組長の敵討ちを叫ぶものもいたが、もともと面倒見が良いわけではなく、恐怖で人を縛り付けていた組長の敵を本気で打ちたいと思っている人はいなかった。

あれから1週間、福山、杉山、涼子の三人が、バーの片隅でグラスを傾けながら話していた。
「田沼が昨日逮捕された。彼女が数々の殺人の指示を出していたんだな。磯部は操り人形だったわけだ。」福山がうなずきながら話した。
「青木さん、ご主人のおかげで、過去の悪事が立証できそうです。青木さんには気の毒でしたが。涼子さんにも。。。」杉山は、重々しい口調で涼子に話した。

涼子は、妙に晴れ晴れした顔をしていた。青木が、何人もの人を殺し、大事故を故意に起し、これから数々の罪に問われるというのに。
「主人は刑務所暮らしになるのでしょうね。。。でも、これまでの数年、もっとひどい暮らしをしていたと思うわ。おびえて隠れながら、私ともだれとも連絡をつけられずに。食べるのにも困っていたでしょうね。。。。彼が生きていたなんて、それだけでも奇跡よ!」
「そうかもしれませんね」杉山が答えた。
「私、とても嬉しいんです。何も縛りがなくなったんですもの。それに、これからは主人のところに通って、彼の力になれるんですから」
「ご主人は、証拠のメモと写真をあなたに託した。女装のリー刑事に渡して。あなたへの手紙はなかったのですか?」
「。。。」
「大丈夫です。証拠として取り上げたりしませんから。あなたを巻き込まないために、離婚までされたんですからね、青木さんは」

涼子はしばらく考えていた。
そしておもむろにバッグの中から、丁寧にたたまれた紙を取り出した。

「どうぞ、読んでください。常磐組に関することは、何もかかれてませんが」
「いいんですか?」
「どうぞ」涼子は穏やかな笑みを浮かべた。


涼子へ

この手紙を読む頃には、私はもう生きてはいないだろう。
もっとも、私はとっくに死んだことになっているから、手紙を渡したことさえ迷惑かもしれないと思うと、書くのを少しためらう。

君の人生を滅茶苦茶にしてしまった、私を許してほしいとはいわない。
君はまだ人生をやり直せる。
どうか、幸せになってくれ。
私のことなど、早く忘れてほしい。

ただ、涼子にはわかってもらいたかった、ずっと愛していたことを。
君がこの世にいると思うことだけが、私の生きる原動力になっていたんだ。
一緒に暮らしていた頃は、そんなことさえ満足に言えなかった。
ほんとうに、すまない。

では、私はもう行かなくては。
涼子、ありがとう


「すみませんでした。個人的な手紙を見せてもらったりして」
杉山がつぶやくように言いながら、丁寧に手紙をたたみ直して涼子に返した。
「いえ、いいんです。刑事さんですもの、当然ですわ」
「青木さんは、本当に涼子さんを愛していたんですね」
「ええ。この手紙は私の宝です」


つづく

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「サークル」二十二話   さくら 作

2007年11月08日 | 小説 サークル
その頃、携帯ノベルを読みかえしていたハルさんは、はぁ~と
ため息をつきながら携帯をソファーに放り出した。

。。何も話してくれないのは、
  現役の頃と何一つ変わっちゃいないんだわ・・。。。

そして、冷めた紅茶を飲み干すとソファーにゴロリと横になった。
娘のスズに夫の不可解な行動を指摘され、少々不機嫌な時間を
過ごしていたので、不満の矛先は夫に向かうのである。

その時、賑やかな着信音が流れた。ドキッ!として起き上がり
携帯を見ると、娘のスズからであった。

「はい、どうしたのスズちゃん?」
「どうしたのじゃないの!お父さんの居場所が分かったわよ~~
 ダーリンったら、知ってるのに隠してたの!
 締めあげたら吐いたわよ!」
「締めあげたって・・スズちゃん・・・あんたって子は・・」

呆れながらも、スズの報告を聞きながら次第にモヤモヤしていた
気持ちが晴れていくのを感じるのであった。

スズから事のあらましを聞いたハルさんは、聡子さんも心配して
いるだろうから、連絡を入れねば。。などと考えていた。

小説によれば、今日決行されるという“磯部と田沼”による殺人
だが、これが情報として警察、関係者に伝われば、回避できるに
違いない。いずれは、悪の張本人たちも捕まるだろう。

 ”ほら、ねぇ~、事実は小説よりも奇なり・・なのよ~”
楽観的なハルさんは、事件が解決したかのように、鼻歌混じりで
紅茶をいれにキッチンへ向かった。

ポットに茶葉と熱いお湯を入れ、クッキーを用意しながら

。。同じ警察官って言っても、森田さんは甘いわねぇ・・
  お父さんだったら絶対に話さないでしょうにねぇ・・。。

娘のスズに遣り込められている森田を想像すると、思わず
苦笑してしまうハルさんであった。

テレビのスイッチを入れ、熱いお茶を飲み、クッキーを頂く。
3枚目のクッキーに手を伸ばした時、また、賑やかな着信音が、
鳴り響いた。聡子からのようだ。。

「はい、ハルです。」
「ああ、ハルさん、大変よ!
 今ね、事故があって、ほら、昨日の携帯ノベルの、あれ!」
「・・・」
「同乗してた人が血まみれになってて、組長とか、常盤とか、
 そんな声が聞こえるし、呼ばれてる人は意識がないみたいで、
 だから、昨日の・・・」
「聡子さん、あなたその現場にいるの・・?」
「ええ、たまたま、出先で。。ああ・・・・・」
「大丈夫・・?聡子さん・!」
「え、ええ、でも、ホントにこんな事が起きるなんて・・」
「聡子さん、連絡を入れようと思っていた矢先なのよ。
 今どこにいらっしゃるの?私の家に来ていただける?」
「え・・?そんなに時間はかからないと思うから・・
 伺うわ!。。。一人でいると怖くて・・」

聡子からの電話は、ハルさんにも衝撃だった。
小説を読んだのは昨日のことだから、事件は今日起こって
然るべきなのだが、昨日のうちに情報は届いている筈。。。
それなのに、警察は何をやっているのだろう。
憤懣やるかたないハルさんであったが、気掛かりなのは
同乗していた人のことである。
スズの話によれば、常盤組長と一緒にいるのは
女装した刑事らしいが、血まみれだったと聡子は言っていた。
そして、常盤組長は意識不明?

。。これじゃ、あの悪人二人の思うツボじゃないの!
  でも、どんな事故だったのかしら・・ 。。。

現場を見ていないハルさんにとって、聡子の情報で判断する他
ないわけだが、交通事故は日常茶飯事・・余程大きな事故でも
ない限り、テレビの速報に流れることもない・・・聡子の到着を
待つ以外に手だてはなかった。しかし、落ち着かない・・
部屋の中をウロウロしつつ、時間が過ぎるのを待ちながら、

。。そうだ、スズちゃんに電話しなきゃ!。。

と、思った時、“ピンポ~ン”!!
急いで、玄関に赴きドアを開けると、そこにはスズ親子と聡子が
蒼い顔をして立っていた。

「いらっしゃい・・さあ、早くおはいりになって、・・」

三人を招きいれ、ドアに鍵をかけ再びリビングへ戻り、
お茶の支度ももどかしく、早速先ほどの話となった。

聡子には、ハルが一通りの説明をし、その間スズは子供を
寝かしつけていた。子供が寝入ったので、スズも話に加わった。
ハルが聞く。

「ねえ、聡子さん、事故の状況ってどんなだったの?」
「黒の乗用車が、白っぽいワゴン車にぶつかったのよ。
 それでね・・・・・・」

聡子の話によると、急ブレーキの音の後にドカーンという音、
驚いてその方向を見た時には、ワゴン車の後部座席に黒い車が
突っ込んでいる形になっていたと言う。
野次馬が集まってくる中、後部座席に乗っていた一人が
頭から出血しているにも拘わらず、ぴくりともしないもう一人に
声をかけていたそうだ。その声が、組長・・常盤・・・
と、聡子には聞こえたという。しかし、さきほどのハルの説明に
よれば、常盤組長の傍にいたのは女装した刑事であり、聡子が
見た人物は男であって、身長もそんなに大きくはなかった。
容姿も説明された人とは違う。。。

「ハルさん、、、誰だったのかしら・・あの人たち。。」
「。。。もしかして・・磯部・・・?」
「まさか・・スズちゃん、、そんなこと。。。」

しばしの沈黙の後、ハルさんが口を開いた。

「それで、黒い車には誰が乗っていたのかしら・・?」
「それが、、誰も出てこなかったわ・・・・
 私の位置からだと車の後部しか見えなかったし、
 窓にフィルムが貼ってあったみたいで、
 中は全く確認できなかったわ・・・
 でも、前から突っ込んでるから・・無事とは思えないけど・・」

三人は顔を見合せ、
お互いの眼の中の驚愕の色を読み取っていた。

一方、事故の知らせはミナカのところにも届いていた。
潜入していた女装刑事からである。

事故に遭ったのは常盤組の磯部、同乗していたのは
潜入捜査員のシゲルであった。
彼からの情報によると、組長の別宅で、
組長他数人の幹部連中が、磯部に不審な動きを感じ、
密談中だったらしい。
組長自身、女傑田沼には頭が上がらないものの、今では厄介な
お荷物となっていたようで、この際、二人まとめて始末する算段
をしていたのだ。

その別宅に、なんと殺されたはずの青木が現れたのである!
その手には拳銃が握られていた。

青木は女装した刑事に封書のようなものを渡し、銃を突き付け
隣の部屋に押し込め、鍵をかけた。
そして、おもむろに組長めがけて発砲したのである。
一発、二発、三発、。。。倒れこむ組長に幹部連中が慌てる。
青木は、ベルトに挟んでおいたもう一丁の銃を抜き
乱射し始めた。
血飛沫を上げて、次々と倒れていく・・・

閉じ込められていた刑事は、ドアを開けるべく体当たりを
繰り返す。
しかし、強固な作りになっている別宅のこと。。歯が立たない・・

しばらくすると、銃の音も止み静かになった。
刑事は、耳を澄ませてみた。微かに、呻き終えが聞こえる。
生きている人物がまだいる!と、その時、また銃声が!

その後は静寂に包まれ、数分後・・・

車のエンジン音がする!
慌てて、窓に近寄ってみれば
黒塗りの車が一台発進する所であった。
窓を割ろうと試みたが、
こちらもちょっとやそっとで割れる代物ではない。

屋敷は防音されているが、ただならぬ気配に周りを警護中の
若い衆達が車の後を追い、また、屋敷に向かっている者もいる。

ほどなく、刑事は駆け付けた若い衆に鍵を開けて貰い、部屋の
光景を目にしたが・・・・

「なんてことを・・・・」

組長の上に折り重なるように幹部連中が倒れており、
高価な絨毯は一面血の海であった。

追わなければ!そう思った彼は、急いで車に向かった。
たぶん、今度は磯部を狙うに違いない。。

止めなければ!スピードを上げ、組事務所に向かう。
その時、交差点を白いワゴン車が通り過ぎた。
磯部の車だ!その後を、黒いセダンが付いてきている。。

黒のセダンはスピードを上げ、ワゴン車を抜き去り、
対向車線に出たと思いきや、急ハンドルを切ってワゴン車の
後部座席めがけて突っ込んでいった。。。

やっちまったか・・
先ほど青木から手渡された封書は、ジーンズの
後ろポケットで、クシャクシャになっていて、
「涼子へ」と書かれた文字が泣いているように見えた。


                           。。。つづく。。。。

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夜汽車・・・  GRIZZRY(グリズリー) 作

2007年11月04日 | 
独特のエンジン音とレール音を響かせながら

一本の列車がプラットホームに入って来る

ここは周囲を田畑に囲まれた田舎の無人駅

列車の灯りがやけに眩しく感じる

こんな小さな駅からも

これまで何人の人が夢を抱いて旅立って行ったのだろう

功を収め故郷に錦を飾った人

夢破れて戻った人・・・・

多くの人の思いを乗せて

列車はまた闇の中に消えて行った・・・。


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「サークル」第二十一話   akikaze 作

2007年11月03日 | 小説 サークル
「いつまでグズグズやってんのよ、そろそろケリつけちゃいなさいよ」
大きな顔を醜く歪ませながら田沼鬼怒子が怒鳴った。

「わかりました。組長のほうは相変わらずオカマが貼りついてるだけなので今度こそ間違いなく殺ります。」
「七海のほうは、まだ居場所がつかめてませんが、徹とか言う奴を捕まえて吐かせれば簡単でしょう」
「ただ涼子だけはどこにいるのかまだわかってません。こいつは七海に吐かせるしかないでしょうな」
指が欠けた手で眼鏡を直しながら磯部が冷たく言った。

「さっさと殺っちゃいなさいよ。青木の件をサツにつかまれたらややこしくなるからね」
「それにあのだらしの無い常盤にかわって早くあんたが継がないと、ときわ組も危なくなるわよ」
「わかりました。すぐケリをつけます」
「で、いつ殺るのよ」
「今晩」
「常盤のほうはどうすんの?」
「あのオカマがあれだけやるとは思わなかったので、次はやりかたをかえます。」
「あのオカマって、いつの間に常盤にくっついたのよ。」
「数ヶ月前に自分から売り込んできたんです。銃を扱わせてみると結構いけるんで組長が自分のボディガードにしたんです。でも今度は車ごとつぶしますからオカマが銃を使う暇も無く一気にケリをつけますよ。」
「わかったわ。女のほうはどうすんの?」
「あっちは黒須だけで充分でしょう。また小僧を脅して、女を拉致させてここに引きずりこんでから涼子の居所を吐かせます。」
「今度はその男も殺したほうがいいんじゃないの?」
「そうします。小僧も女も、涼子と一緒に始末しないと、どっかからアシがつきそうですから・・・」

「今度こそキッチリ始末をつけるのよ。」
「わかりました。今夜こそ・・・」



男は喫茶店の隅で周りに気を配りながらノートパソコンに向かっていた。
すっかり冷たくなったコーヒーを飲み干しながらアップロードボタンをクリックした。

これで涼子と彼女には伝わるか・・・?
涼子はまだ居場所をつかまれていないから大丈夫だろう・・・
問題は黒須だ・・・
こっちも潮時、今晩で終わりにしなければ・・・

まわりを伺いながら、誰もいない事を確認して携帯電話を取り出した。
「もしもし」
「・・・」
「はい、私です。」
「今晩です。両方同時にやるみたいです。」
「・・・」
「はい、徹のところには黒須が行きます。ひとりです。」
「・・・」
「そっちは車ごとやるみたいです。どうやるかまでは聞けませんでした。」
「・・・」
「はい両方つけたほうがいいです。」
「・・・」
「はいお願いします。また動きがあれば連絡します。
「・・・」
「はいこっちは大丈夫、バレてはいません。彼は?」
「・・・」
「はいわかりました。安心しました。では切ります」

これで黒須のほうは大丈夫だろう・・・
ただこの程度では刑期はそんなにつかないか?
ま、捕まえるのが先決だな・・・
問題はあっちの彼・・・
うまく脱出してくれるといいが・・・

いずれにしても潜入捜査も今晩で終わってくれるといいな・・・
シゲルになりきるのもそろそろ限界・・・
喫茶店で見られたのも、疲労から注意力が散漫になってしまったせいか・・・
そろそろ本名の自分に戻って、酒でも飲んで息を抜きたいな・・・
課長から「あの小説の作家に自分のハンドルネームをのせろ」と言われたときは内心驚いたが、結果的にかく乱できたのは正解だった・・・
本当の結末は今晩・・・

「今晩が勝負だ!」
ノートパソコンをバッグにしまい、柔和な顔を引き締めながら「シゲル」ことひろにゃんはつぶやいた・・・




「今晩か!」
男子トイレの中で、携帯電話で小説サークルを読んだ“美女”は思わず声を出した・・・

車ごと来るんか・・・?
どうやって脱出するかやな・・・
爆弾で来るか、ダンプか?
いまのご時世、まさか爆弾はないやろ・・・
するとダンプか、挟み撃ちで銃撃かやな・・・
今夜は常盤と一緒に伊豆へ行く事になってるから、その途中で来るんか・・・
こんなドレス姿では動きがとれないわ・・・
Gパンに着替えとこ・・・

それにしてもあのデブに「女装しろ」と言われた時は焦ったわ・・・
たしかに男にしておくのはもったいないほど綺麗な顔立ちなのは、自分でもようくわかっとるけど(爆)
自分で自分につっこんでどうすんねん・・・
ま、ええわ・・・
とにかくこんな格好とも今晩でおしまいや・・・
今回の話をミナカから打ち明けられて、なんとかときわに潜り込んだのはええけど、まさかこんな格好させられるとは思わんかった・・・
おまけに東京弁なんぞをオナゴ言葉で喋らなあかんねん・・・
もう限界やわ・・・

それにしてもミナカ・・・
元気でやっとるかな~
早くケリつけてまた一杯やりたいな~
黒須はあっちに任せるとして、こっちはときわや・・・
とにかく今晩が勝負や・・・

「パパ~、着替えちゃった。たまにはこんなパンツルックもいいでしょ?」
「おお、菊乃はどんな服でも可愛いなあ。そろそろ出発する時間だよ」
「嬉しい♪伊豆のゴルフは張り切っちゃうから~。」
「じゃあ行こうか。」

黒塗りのベンツに常盤組長と一緒に乗り込む“菊乃”こと、大阪府警のReeであった。



「ちょっとまって、アップされたみたい」
携帯のメール着信に気づいたミナカは部屋のパソコンの前に座った。
後ろに杉山と福山も続いてパソコンのモニターを覗き込んだ。

「サークル」第二十一話  akikaze 作
「これはシゲルさんのアップね。」
・・・・
「大変、今晩全てが動くわ!」
ふりかえってミナカが真剣なまなざしで福山を見つめた。

福山はそのまま杉山に向かって
「黒須ほうは大丈夫なんでしょうか?」
「これが潜入警察官の情報なら、おそらく警察にも情報は行ってるだろう。」
「徹さんは大丈夫なの?」
ひきつった顔でミナカが言った。

「警察にまかせておけば黒須一人くらいは大丈夫。それより常盤組長のほうが危険だ。」
「Reeクン・・・」
ミナカがつぶやいた・・・

「えっ、りーくん?・・・ちょっと待って、まだ隠してることがあるの?」
「この際だから全部言ってもらわないと手の打ちようがないよ。」

「そうね。全部言ったほうがいいのかも・・・」

「りーくんって一体なんなの?」
「わかりました、私の知ってる事は全部話します・

「この小説の作家の名前は、さっきも言った通り全て偽名で、実際は私と涼子さんとシゲルさんが情報交換のために6人の名を使って書いてたの。」
「でも、始めに登録したのは9人。2人は登録だけで全く作家として登場していない。」
「そのうちの一人がRee魂造ことReeクンよ。」
「彼は私と大の仲良しで、大阪府警の刑事なの。」
「今回の事を進めるにあたってまず彼に相談したら、一人で書くのは危険だから6人の適当な名前を使って小説を書けって・・・」
「そして自分も名前だけ登録して、偽名でときわ組に潜り込むからって・・・」
「今では常磐組長のボディガードのふりして、涼子さんの旦那さんのカタキを打つチャンスをうかがってるの。」

「これは驚いた。そこまで手をまわしてたんだ・・・」
「まだあるわ。」
「えっ?」

「もうひとり、1回も作家になっていない人。」
「“ひろにゃん”の名前はシゲルさんが登録したみたいなの・・・」
「なんのために?」
「涼子さんの話では、万が一“サークル”の実態がばれそうになったとき、すこしでもかく乱しやすいように、ひとりでも謎の名前があったほうがいいって、彼の上司から言われたみたい・・・」
「へえ~、また手のこんだ・・・」

「1回だけ名前が出た作家がいるよね。」
杉山が言った・・・

「湘南?」
「彼は私もわからないの・・・。あの章だけは私もシゲルさんも涼子さんも書いてない、謎の章なの・・・」

ニヤッ・・・
杉山の顔が一瞬くずれた・・・

「ところで涼子さんはいまどこにいるんすか?」
福山が言った。

「俺も携帯でしか連絡がとれないんすけど・・・」
「彼女は場所は言えないけど遠くに隠れているわ。」
「無事なんすか?」
「いてもたってもいられないみたい・・・」
「先週も東京にでてきたの・・・」
「えっ?危険じゃないすか?」
「Reeクンと相談して、一番危なくなさそうなところ、新宿で情報交換したわ。」
「えっ?それこそ危険じゃ・・・」
「Reeクンの言うことによると、人を隠すには、全く誰にも見つかりそうも無いところか、
逆に人がいっぱいいるところのほうがいいみたい。」
「でも大丈夫だったんすか?」
「Reeクンにもガードしてもらって、3人で情報交換したの。終わってからすぐに夜行バスで帰っていった」
「いまは?」
「この前の小説のアップが多分涼子さん。きっと大丈夫でいるわよ。」
「そうすか・・・」
「これで私の知ってる事は全部話した・・・」

「徹さんとReeクンが心配・・・」

ミナカはそのつぶらな瞳に涙を浮かべてつぶやいた・・・

       

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