「こどもが熱を出したときは、くちびるを当ててみるのよ」、「煮魚はできたけど、焼き魚は加減が分からんから、子どもに食べさせてやれんかった」、「四つ角に出ると、風の向きが変わるから、すぐ分かる」、「夏の夕べ、白杖をそよがせて道を歩く」。堀木フミ子さんとの出会いは私(藤原精吾弁護士)にとって初めての視力障害者との出会いであり、多くの障害を持った人々との出会いだった。(以上、引用)
『ドキュメント現代訴訟』(高橋利明・塚原英治編)を読みました。
堀木フミ子さんは視覚障害者です。障害福祉年金が支給されているから、児童扶養手当法が併給禁止を定めているため、母子家庭に出る児童扶養手当ては支給されない。この児童扶養手当法が、憲法25条の生存権に違反すると訴えたのです。
この堀木訴訟は、一審で勝訴するも、二審、最高裁は敗訴です。
堀木さんは、鹿児島のトカラ列島の中ノ島生まれ。2歳のとき病気で失明。12歳で母が死亡し、離別していた父を頼って昭和7年に神戸市へ。しかし按摩の弟子に出され、仕事の苦労、生活の苦労、空襲、戦災に逃げ惑う年月を過ごす。家庭運に恵まれず、女の細腕で、生活保護をもらったりしながら4人の子どもを育てる……。
当然、障害福祉年金と児童福祉手当は、併給されるべきと思う。それが最高裁で敗訴とは……。一方で、北海道滝川市で発生した生活保護不正受給事件なんてのもあります。被害額は2億円にも上る。そこまで被害額が膨らむまで行政は気付かなかったのか?ツルんでいたのか?と不思議です。
世の中には、理に照らしても情に即しても理解できない、不思議なことがたくさんあります。同書は、こうした不思議に真っ向から挑んだ、弁護士の述懐録(係属中のものもある)。表現は若干イデオロギーがかっていますが、四大公害の訴訟など40いくつの有名な訴訟の舞台裏が簡潔に記され、社会の教科書や行政書士など資格試験のテキストを、より深く理解するのに役立ちます。
憲法を学ぶ人、人権を学ぶ人、法曹を目指す若い人に、ぜひ読んで欲しいと思います。










