札幌の街の弁護士 中村憲昭のブログ

2000年登録の札幌の弁護士,中村憲昭のブログです。交通事故,離婚相続等個人事件のほか,中小企業のニーズにも対応します。

賠償額が約3.5倍に?~保険会社の対応の是非

2016年12月20日 12時21分59秒 | 日記
 柄にもなく珍しく煽情的なタイトルを付けてみましたが、ある紛争類型での話です。

 ある紛争類型と隠しても仕方がないので具体的に言うと、交通事故の話です。

  
  

 皆さんも、交通事故に遭われた時は、保険会社と交渉して、損害の賠償をしてもらっていると思います。

 最終的に保険会社と金額について折り合いがつけば、示談をして(和解契約といいます)、賠償金を払ってもらっておしまいです。

 弁護士をわざわざ付ける人は、実はそれほど多くありません。



 勿論、示談代行をする保険会社も、「あるべき金額」をきちんと踏まえて、誠実に交渉に応じてくれればいいのです。
 その場合には、「弁護士が必要なのは、保険会社との間で事実認識に差異が生じた場合だけ」ということになるのかもしれません。



 ところが、実際にはそうでないこともあるようです。

 ある時に私が対応した事件で、私が代理人として交渉したところ、当初の提示額と比較して賠償額は3.5倍以上になりました(勿論、すべての事件でそのような良い結果が出るというわけではありません)。


 
 なぜこういうことが起きるのかというと、保険会社との任意の示談の場合と訴訟になった場合とで、そもそもの慰謝料算定水準が異なるからです。

 ですから、他に争点がなく、慰謝料の額の算定だけが争いになった場合、弁護士を介入させた方が最終的な賠償額が大きくなることが多いです(絶対ではありません)。


 勿論、弁護士を使わない方がメリットが大きいこともあります。
 それをまとめると、以下のようになります。

 【任意の示談のメリット】            【任意示談のデメリット】
 ・ 時間がかからない。                          ・ 和解金額の水準が低い
 ・ 費用をかける必要がない
 ・ 手間もかからない


 【弁護士介入のメリット】            【弁護士介入のデメリット】
 ・ 慰謝料の水準がそもそも高い                     ・ 時間が掛かることが多い
                                          ・ 弁護士費用が掛かる
                                          ・ 準備が必要
                                          ・ 争点顕在化のおそれ


 弁護士介入のデメリットのうち、「争点顕在化のおそれ」というのは、例えば次のようなことです。
 例えば、交通事故で頚椎捻挫(いわゆるむち打ち症)を負ったとします。
 幸いにして程度は酷くなく、レントゲンでもCTスキャンでも異常は認められなかったとしましょう。
 

 画像所見等の他覚所見がなくても、自覚症状と交通事故の態様及び程度が整合しており、かつ相当期間内であれば、事故との因果関係が認められることになります。
 そのため、治療期間についても、通常3カ月程度であれば、保険会社も認めることが多いです。


 しかし、保険会社の中には、任意の和解であれば治療期間を争わないけれども、訴訟にするなら治療期間を争うぞ、と言ってくるところもあります。

 つまり、任意和解の場合であれば顕在化しない争点が、訴訟になった場合には顕在化することがあり得ます。
 
 ですから、私たちは、相談者の話を聞いて、弁護士を付けた方が良いかどうか、メリットとデメリットを考えながら助言をします。
 相談者は、費用対効果を考えながら、弁護士を代理人として付けるかどうかを判断することとなります。
 我々としては、訴訟になった場合に「勝てる事案」でも、弁護士費用に比して得られるメリットが少ない場合、弁護士を付けてもあまり変わらない場合もあるよ、と助言することもあります。

 多少金額が低くても、その程度が判決予想と比較してもごくわずかであれば、積極的に和解を勧めることもあります。


 このように、弁護士が交通事故事案で助言をする機会もあるのですが、時によっては、保険会社の対応に首をかしげることもあります。
 多分、担当者が悪いのではなく、保険会社自身のスタンスの問題なのでしょう。
(弁護士会からは、このようなブログを書くと「保険会社の品位を貶めている」「品位又は信用を損ねるおそれのある広告である」といわれそうですが、全ての保険会社ではないにせよ、判決の場合とかけ離れた和解案を提示する保険会社があることは事実です)。

 
 先ほど述べたとおり、訴訟にしなくても賠償金を早く得られることは、任意で示談する場合の大きなメリットです。
 でも、そのメリットである早期解決のために、賠償額を3分の1にしろと言われたら、皆さんは承諾しますか。普通はしないですよね。


 多くの方が、弁護士を使わずに保険会社と交渉し、和解に応じています。
 その中の一部の人は、いわゆる慰謝料の訴訟基準額を知らずに和解に応じています。


 当然のことながら、保険会社は、日々多数の交通事故案件を取り扱っています。
 保険会社は、慰謝料相場を熟知しています。

 これに引き換え、一般市民の方の多くは、交通事故に遭遇することは一生に一度か二度です。
 慰謝料の相場は、誰かに訊かないと分かりません。


 交通事故紛争においては、そのような圧倒的な知識の差がある中で、その情報格差を埋めないまま、保険会社が和解の提案をしている場合があるように私には感じます。


 私を含めた多くの弁護士(残念ながら全員ではないでしょう)は、普通「この事件が仮に判決になったらどうなるか」を見据えて仕事をしています。
 示談交渉の際も、相手方に対して、こちらに不利な事実も告知するよう努めています。

 ですから、今の一部の保険会社のスタンスは、少なくとも私の弁護士としての交渉スタイルとはかけ離れたものです。


 そもそも、日本の制度上、他人から対価を得て紛争の代理人になる資格は、原則として弁護士(事件によっては司法書士や社労士)だけのはずです。
 しかし、当の弁護士会が、保険会社の示談代行を認めてしまっているわけです。


 我々としては、和解水準の差があるからこそ我々の仕事もあるのだ、とも思ったりすることもありますが、やはりこの水準の違いに対しては、釈然としない思いです。


 注 繰り返しになりますが、全ての保険会社の対応を是正すべきと述べているわけではありません。
   保険会社によっては、訴訟の場合に想定される判決見込み額から、弁護士費用として想定される額を差し引いた額に近い金額を和解案として提示してきた会社がありました。
 敵ながらあっぱれですが、その依頼者に対しては「弁護士を介入させても大きくは変わらないですよ。むしろ時間的な点からすれば早期和解した方が良いです」と助言しました。



 中村憲昭法律事務所
 


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