俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

怖い薬

2016-10-13 09:58:50 | Weblog
 「薬は怖い」は私の持論だが先日実際に恐怖を感じた。深夜3時頃に突然訳の分からない不安と興奮に捉われた。脈拍は高まり多分体温も上昇していただろう。試験やスポーツ直前の昂揚感に似ていた。常飲している3種類の鎮痛剤の内、麻薬に近い成分を含む2種類の向精神薬の副作用が現れたものと思われる。
 向精神薬の薬効は概して不安定なものだが私の使っている鎮痛剤もまた厄介な薬だ。基本的には鎮静効果を発揮するが稀に覚醒効果などの想定外の反応を起こさせる。あるいは頭は朦朧としているのに眠れないという訳の分からない副作用に苦しめられることもある。
 鎮痛剤を飲み始めてから既に2か月以上経つが症状は一向に安定せず一進一退の状態だ。医師から勧められて一部の鎮痛剤を2倍に増量したのはほんの数日前のことだった。当初は痛みがかなり治まって安心しかけていた矢先に精神的な不安定が発生した。
 鎮痛剤という名は必ずしも体を表していない。大半の鎮痛剤の薬効は痛みを鎮めることではなく中枢神経系を狂わせて痛みを感じにくくすることだ。通常であれば痛みが緩和されるだけだが体質や体調によっては全く想定外の副作用が現れる。向精神薬がしばしば麻薬のような形で悪用されるのはそんな特性があるからだ。
 自慢できる話ではないが私は子供の頃から眠るのが下手だった。飲酒を始めたきっかけも寝酒だった。食道癌を患って以来、飲酒を自粛できるようになったのは、鎮痛剤の多くが鎮静効果を持っておりアルコールによる睡眠導入効果が以前ほどには必要ではなくなっていたからだろう。
 鎮静効果をがあると信じていた鎮痛剤が逆の覚醒効果を発揮すると困ったことになる。深夜になって全く場違いな情動に見舞われると人はパニック状態に陥りかねない。この時に眠らねばならないと焦ればますます眠れなくなる。この不眠パニックはかなり強烈なものでありこれから逃れようとして強い薬に溺れて死んだ著名人は決して少なくない。ビジネス競争における勝利者は普通以上に強い精神力を持っていると思われるが彼らでもこのパニックに耐えることは難しかったようだ。
 薬が怖いのは人間の心も体も余りにも微妙なバランスに依存しているからだ。私が軽度の精神錯乱に陥る直前の数日間は痛みから解放されてここ数か月では最も快適な日々だった。やや逆説的な言い方だが良く効く薬は怖い。仮に日毎においては最適量であってもそれが蓄積された場合にどう働くかは誰にも分からない。蓄積された水銀やカドミウムが想定外の害毒をもたらすように薬品類の蓄積は怖い。アルコールの休肝日が必要と言われているが休薬日も必要だろう。痛みや抑鬱から解放する筈の薬が感情のバランスを滅茶苦茶にしかねないのだから人間の浅知恵に基づく精神操作は余りにも危険だ。薬は怖い。
ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 民主的 | トップ | 晩年 »

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL