アヴァンギャルド精神世界

冥想により、限りなき知性と底知れぬ優しさを。そこに次の時代が・・・。この世はドリームでもあり、リアルでもあり。

私にとってオウムとは何だったのか

2016-10-29 06:20:10 | マインド・コントロール
◎組織宗教の悪しき面の露見

「私にとってオウムとは何だったのか/早川紀代秀 川村邦光/ポプラ社」は、オウムの主要幹部早川紀代秀の回顧録。

オウム信者の回顧録は何冊も出ているが、不幸な生い立ちだったり、数奇な事件に遭遇したのがきっかけで入信した人物が多い中、早川は順風満帆な人生を送りながら純粋な求道心により入信してきた人物であるところは珍しい。

地下鉄サリン事件発生時に、彼は国外にいて事前謀議には加わっていないものの、坂本弁護士一家殺人事件の実行犯でもあり、教団内の多くの犯罪に関与してきたことを明かしている。

どうしてもオウム本は地下鉄サリン事件をピークに描くのだが、本書はわりに教団内で行われていた各種修行が体系的に記述されているので、そこについて気のついた点は次のようなところになる。

まず食事を少なく与え、栄養失調にしておいて、マントラ念唱、五体投地、結跏趺坐での観想など、体力、精神力の極限までの長時間修行をさせることで、思考力を奪うのはカルト教団の定番。ただし、まともな組織宗教でもそういう側面がないことはない。

冥想を長時間強制的にがっつりやらせたことは、それ自体はすごい部分があった。ただし、それに見合った覚醒者が続々と出たかどうかについては、世間もよく承知しているところである。

またこれだけ強制的にやらせると、精神のバランスを崩す人も相当数出るものだろうし、まともな教団ならば専門病院に送り込むところが、そうした人が初期には殺害されたりしている。その殺人が次の殺人を呼んでいった。

冥想修行は一気にいけるスーパーエリートみたいな人もいるのだろうが、ほとんどの人は行きつ戻りつで、人生上のバランスや精神面でのバランスをとりながら進むもの。怖いものはこわいし、できないものはできないというところはある。それができるようになる時節があるし、そこを調整指導するのが正師というもの。

それと「成就」と呼ばれる悟りと思われる基準がゆるいこと。魔境あるいは欲界定ぐらいのを「成就」認定していたことが描かれている。古来から悟っていないものは人を指導してはいけないのだが、恐ろしいことである。

温熱修行では、47度のお湯に15分入るのだそうだが、何人もがこれで亡くなったそうだ。教団崩壊までこれを続けていたとのことだが、こういうのもやめなかったところは、「命の悲しみ」を感じない所業といわざるを得ない。

LSDについては、早川がロシアから原材料を購入したことが書いてあるので、教団内ではふんだんにあったのだろう。ソーマであっても準備のできていない者に与えるのは、思わぬ霊道が開いて本人も希望しない好ましからざる世界に入る可能性があるので、カスタネダに代表されるソーマヨーガの世界でも投与には慎重を期しているものだ。この教団では、金と引き換えにどんどん与えていった雰囲気だが、その効果はどうだったのだろうか。

思わぬ霊道が開くデメリットについては、「チベット魔法の書/デビッドニール/徳間書店」に詳しいが、この本を獄中で読んだ早川も推薦していたのは皮肉なこと。

悟りは難しいし、いわんや悟る人を出すことも難しい。禅では一人の正師が打ち出す悟った弟子のノルマは一人あるいは半人などというように、覚者を大量に打ち出すのは悟ったマスターであっても簡単ではない。この教団がそういうチャレンジだったかどうかは知らないが、この事件の後、既成宗教が自らの姿勢を見直し始めたという効用はあったかも知れぬ。

それから略20年、時代は、日本が外国からの侵略による亡国の危機に瀕し、国民は貧困化に苦しみ、国民精神は、あらゆるメディアからの情報洪水により、無思考化、白痴化した。

結局この事件は、組織宗教の悪しき面を露見させ、かえって人を宗教から遠のかせる結果になっただけと思う。

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