あなたと夜と音楽と

まあ、せっかくですから、お座りください。真夜中のつれづれにでも。
( by 後藤 純一/めるがっぱ )

映画「ソール・ライター」を見て

2017年07月01日 10時19分19秒 | Weblog
  「写真家ソール・ライター 急がない人生で見つけた13のこと」という
ドキュメンタリー映画をAmazonで見た。
トーマス・リーチ監督、78 分、2014年。
ソール・ライターはカラー写真のパイオニアと称賛されたニューヨークの写真家。
2013年に89歳で亡くなった。
1960年前後をピークに世間から忘れ去られていたが、21世紀に入って
再評価が起こり、先日日本でも個展が開かれた(2017/4/29-6/25:BUNKAMURA)。
 
 

 その個展が面白かったのでライターの色彩感覚や構図を取り上げた内容を期待して
いたが、監督がインタビューをして写真家の晩年からその人生を振り返る
という映画だった。
撮影も兼ねた監督はこれが初めての作品。
ライターは自分を売り込むことをしない人だったという。監督はそんな
ライターの生き方に意味を見つける「ストーリー」をインタビューから作り
たかったようだが、その意図はやや空回りをしていて、退屈で眠気を誘われる
ところもある。
映画はむしろNYの独居老人の日々という印象を残している。
 一人暮らしの部屋の中で、また60年近く住み続けているという近所を
歩くライターを、カメラは撮っていく。
2002年に伴侶であった女性を喪い、映画の撮られた2011年までの間、
NYのアパートはフィルムをいれたボックスの山や遺品に埋没していたようだ。
近所の人とのやりとりが出てくるのは一か所だけで、仕事上の知人を除けば、
映画でライナーが話をする相手はいない。
映画は、アシスタントが部屋にうずたかく積まれたボックスや本を整理する
場面から始まり、写真家自身も「こんなものがあったのか」とか、
「ああ、あの時のだ」等と「再発見」しながら、カメラに独り言のように話し
かける様子を撮っている。
ライターは自分は映画になるような重要な人物ではないと、繰り返し呟く。
写真家として少しは仕事をしたが、映画になるような「巨人」ではないと。
自分の暮らしを撮影され監督からのいろいろな質問に戸惑いながら、
時にまんざらでもない表情が浮かぶ。
 
 
 
 
 
 ライターはお喋り好きである。さかんに監督の持つカメラに向かって
話しかけ、ご機嫌に話を続ける。人生の終端が近づく時期に世間が自分に
関心を見せるのだから、悪い気分のはずがない。時に意地が悪いほどの
皮肉屋の一面を見せながら、さほど面白くない話に一人で笑い興じている。
 
「君はこの写真が良いと言ったが、それは君がなにもわかっていないことを意味する。
でも、わたしは君にも知恵があることにして、君の意見を尊重する。」
 
後半になって、ライターは老年の悩みを語る。
その言葉はしばしば老人の「愚痴」とも聞こえる。
 
「自分は途方にくれて戸惑っているんだ。」
 
「年を取ると物のように扱われる。人に言えることもあまりない。
いろんな人がやってきて、いろいろ画策する。
楽しい?とんでもない。」
 
「映画に撮られるのが嫌なのは、自分の姿を見せられるのが嫌だからだ、
若い頃はもうすこしましな姿だったと思うからね。」
 
「80歳を過ぎて町を歩くと、ふと窓に老人が一緒に歩いている、
それが自分だと悟るのさ。」

映画が感動を覚えるのは、ライターが自分がまだ生きていることに
困惑しながらも、いつもユーモアを大事にする強さがあるからだ。
深刻な話題を口にしながら映画は暗くならず最後まで笑いを残している。
 
 
(引用したライターの語る言葉は、印象に基づくもので字幕どおりではありません)
 
『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「ソール・ライター展」を見て | トップ | 映画「将軍たちの夜」を見て »

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。