これは今でなく、
過ぎ去りし日々でなく、
やがて来るだろう世界
「次のニュースです。
先日襲われた天空レッドに続き、
昨夜正義の兄弟ジロー&シローも襲われる事件が発生しました」
ラジオニュースをバックに、白衣の青年が高々と発する。
「いよいよだ、兄弟。
今まではウォーミングアップに近かったが、ついに本番前の試金石。
三こそ最強証明するため、今宵 方角戦隊 東西南北に戦いを挑む」
「そうそう、正念場だね」
「う〜がんばるっしょ。
腕がぶんぶん鳴るよ、胸がドッキドキだー」
テルツォは左手をぐるぐる回し、右手は小振りな胸に当てて、深呼吸。
「いい反応だ、兄妹。
お前達がいたからこそ、私は三兄弟になれた。
もしお前達のうち、1人でも生まれてくれなかった、二人兄弟になってしまい
もう私はどうしていいのか、うっうっ」
「兄ちゃんに喜ばれて、僕も生まれて良かったよ」
「そうそう」
「ありがとうありがとう。
一など孤独で独善的
二など傷の嘗めない
だが、三は違う。
二人が意見を戦わせても、もう1人が仲裁し、安定する。
そして、これから戦う四など二で割れてしまう偶数、烏合の衆だ。
いくぞ、三こそ最強」
ただ己の主張を通すため、その為だけに3人は夜の街に繰り出す。
人間の気持ちなど関係なく、朝日は昇り1日が始まる。
「いってくるでー」
「おはよう、さっちゃん」
沙耶が丁度玄関から出ると、包帯姿で出歩く海城とバッタリ遭遇。
「おはようって、もう身体大丈夫やんか?」
元気娘沙耶は心配、素直に心配顔、その顔に海城は二カッ。
「ええ、丈夫だけが取り柄ですから」
安心させるため、海城はふんっと力こぶなど作って見せる。
「なんかしらんけど、担ぎ込まれ来てから、凄い元気出てないか?
一体何があったんねん」
「そ・れ・は、プライベートです」
「・・・」
筋肉男がウィンクする姿に、思考が内面に引っ込んでしまう沙耶。
三日前、夜中に突然隼人に担ぎ込まれてきた海城。
夜遊びを注意しようとして待ちかまえていた沙耶は、顔が真っ青。
見れば、海城は感動の最終回かと思うほどの有様だったからだ。
隼人はテキパキ手当
沙耶はおろおろ心配。
当の本人 海城はニコニコしていた。
兎に角、身体がボロボロなのに反比例するように、海城の気持は高ぶっていた。
もしかして、Mに目覚めた?と沙耶が本気で検討するほど。
長い付き合い、本当に喜んでいるのと空元気の区別くらい付く。
それだけに、一体何があったのか、心配でしょうがない沙耶だった。
「やだな〜そんな顔しないでさっちゃん」
海城に、鼻の頭をちょんと弾かれた。
「むっ」
ますますもって変、こんな爽やか青春ドラマが出来る男じゃない。
こうなったら絶対に問い詰める、拷問してでも吐かせる。
決意、いざ実行、手を伸ばす。
がいつもなら直ぐに捕まる海城なのに、ひらりと躱され逃げられる。
「じゃあ、用事あるんで」
海城は、沙耶に振り返ることなく走り去っていってしまった。
「次のニュースです。
昨夜遅くパトロール中だった方角戦隊 東西南北が襲われ破れました。
最近立て続けに襲われる正義の味方について、
正義の味方評論家の久地岳さんに来て頂きました」
「よろしくお願いします」
「早速でですか、正義の味方連続襲撃事件に付いてどう思われます?」
「一言で言うとだらしないですね。正義の味方が・・・・・」
そんなニュースを昼休みの食堂で聞いた気もする放課後。
「さあ、帰りましょう沙耶さん」
「ああ、そやな」
あれ以来、忙しい忙しいとなかなか会話すらしてくれない海城に
面白くない日々を送る沙耶は、鞄を持って立ち上がった。
なんやかんやと、隼人と九狼も加わって下校開始。
「どうです、学園祭の打ち合わせも兼ねて、新しくできた喫茶店にでも行きませんこと。
なかなか素敵らしいですよ」
「ああ、そやな」
ぼーと受け答えする沙耶だったが、暫く歩いたその目に衝撃スクープ。
今向かっている喫茶店の窓際の席で、海城と見知らぬ美女が会話をしていた。
二人は息が触れ合うほどに近寄り、何かのパンフレットを見ながら熱心に会話している。
「あら、あれ沙耶さんのアパートの人じゃなくて。
隣の人美人ですけど、恋人でしょうか?」
海城が天空レッドと知らない西条は、素直な感想。
「まさか、引退?」
隼人は驚き顔。
隼人は、負けて以来なにかと元気だった海城を訝しんでいた。
それが、春が来ないと思っていた海城さんに恋人とは、意外すぎて当たらないくじに当たった気分。
あの元気の元はこれだったのか、どうりで負けたのに悔しがらないはずだ。
まさかこのまま引退?負けたショックで引退するのは正義の味方によくあること。
いやショックというより、いい機会を得た。
無報酬危険手当無し将来性無しの正義の味方を続けるより、恋人と明るい人生設計をした方が、そりゃいい。
まさに、試合に負けて、人生の勝ち組になる。
そうか海城さん、恋人とお幸せに。
この街の平和は僕が代わって守ります。
と独り脳内でドラマを展開する。
そんな二人はほっといて、沙耶はただ呆然としていた。
人の気持ちに関係なく、日は沈んで夜は来る。
そして活発になる闇に生きる者達。
郊外の公園、広く植物が植えられた空間は、
昼間は家族のスポットだが、夜は犯罪の温床。
青々とした芝生は、昼間は寝るのに最高、
そこに5人の若者が眠っている、夜なのに。
そして、その傍に佇む3人の魔神。
「やった、やっりまーした。
最強と謳われ、人気を得ていた、最大の敵 五 をたおしましーた」
サンは歓喜歓喜の大歓喜。
それもそのはず、いつもいつも正義の戦隊といえば五。
たまにイレギュラーで三だったり四だったりしたが、たいていは五。
二ですら五になる最近、誰もが認めていた五を倒したのだ。
その喜びは、コスモ級、原子すら砕くぜって感じ。
「やったね兄ちゃん。
ボクも嬉しくて、足がぴょんぴゅん、お尻フリフリ、全身で喜びを表現だ」
テルツォは、跳ねて跳ねてちいちゃいお尻を左右に振って振って、ダンスダンス。
「そうそう、良かった。
どう記念撮影でもアニキ」
「それぐっとあいでーあです、スリー」
「なら俺が取りましょうか」
「それは、かすいません」
スリーは、横手から自然に現れた手にデジカメを渡す。
三人は並び、デジカメ目線。
「ボクの笑顔、いいっしょいいっしょ。可愛い」
「はいはーい、可愛いですよ。
では取りますよーー、一たす一は」
「「「にー」」」
ニッコリ笑顔でパシャ
「しまったーー」
「どうしたの兄ちゃん?」
「思わず二など言ってしまいましーた、これは失敗でーす。
写真をワンモアプリーズ」
「いいんですか?」
「なんですと」
「あと一回で」
「はっしまったーーーー、一などといってしまいましーた」
「ふっこれはもはや勝負あったかな」
不敵な失笑が漏れた。
「はっそういえばあなたは何者ですか。
そんな全身をフード突きマントで覆ってないで正体をあらわしなさーい」
「そうかそんなに俺の正体を知りたいか。
ならばしょうがない見せてやろう」
ばっとマントを投げ捨てれば、その下からは真っ赤コスチューム、天空レッドが表れた。
「お前は、天空レッド。
一度破れたお前が何の用だ」
「ふっふ、俺はもう天空レッドじゃない。
ここをよく見ろ」
「なになに」
天空レッドが示した頭上を見てみると、前にはなかった角がある。
「つっ角突き?」
「それだけじゃない」
胸を示せば、黒のラインも加わっている。
「俺は天空レッドじゃない。
天空レッドツヴァイ、お前達を倒すため地獄の底から蘇ってきたぜ」
格好いいポーズを決めに決める天空レッド。
「マイナーチェンジですーか」
「微妙っしょ」
「そもそも、誰も死んだと思ってないし」
反応は今一、だがしかし海城の心の中は喜びのビックバンだった。
誰もが憧れる正義の味方。
そして正義の味方が憧れるのが、一度破れた後のパワーアップ復活。
このシチュエーションこそ正義の味方が望んでも、なかなか得られないもの。
そのチャンスが来てしまった。
最近ルーチンワーク化してきて正義の味方に情熱がなくなってきた海城にとって
これほど燃えるものはなかった。
所詮彼らも、根っこではトライトゥルー同様、己を貫き表現したいのだ。
普通に正義のためだけならば、警察に入ってるって。
「ずるいぞ天空レッド」
「そうだそうだ」
「それ俺達も狙っていたのに」
「横取りしないでよ」
「人の楽しみを」
むくむくと春のツクシのように起きあがってくる今まで寝ていた正義戦隊 ファイブベレー
「ふっふ悪いなこれも最初に襲われた者の特権だ」
抗議はさらっと受け流す。
「だいたい復活早いぞ、地獄の特訓はしてきたのかよ」
「したさ、一日一時間」
「なんだよそれ、受験生のファミコン時間かよ」
「うるさい。こっちだって他の奴等に横取りされまいと貯金はたいて正義の味方デザイナーに頼んで
超特急でコスチューム作ってもらったんだ。
おかげですってんてんだ」
「知るか。だいたい一度負けたら落ち込んで、
それを助ける恋人とか幼なじみとかのドラマを展開してから来るだろフツー。
こっちだって、これからピンクとのドラマ展開するはずだったんだぞ」
「いないんだからしょうがないだろ」
多分落ち込んでいれば、そういう展開もあったかも。
チャンスを自分で潰す天空レッド。
「だっせ、いないのかよ」
「そうだよ悪いか。だからおいしい役ぐらいくれよ」
「ちっしょうがないな、譲ってやるよ」
「ありがとう」
「その代わり、後で家までちゃんと運んでくれよ、歩けない」
余裕ありそうで彼らも怪我人なのだ。
「リアカーで運んでやるよ」
「恩に着る、なら。
ううっお前は天空レッド、来てくれたんだ」
「ああ、俺は復活した」
「後は頼むぞ、天空レッド。
俺達の犠牲を無駄にしないでくれ。
じゃ、あとよろしく」
言うだけ言って、再び眠り付くファイブベレー。
「くっみんなの犠牲は無駄にはしないぜ。
さあ、ツヴァイの力見せてやる」
「いや、最後の方のセリフだけ決められても」
「武士の情けだ、途中のセリフは聞かなかったことにしてやろう」
「どうせ編集するっしょ」
燃え上がる天空レッドに醒めていくトライトゥルー。
次回決着か?

つづく
このお話は、完全オリジナルのフィクションです。
存在する人物団体とは、一切関係ありません。
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