長唄三味線/杵屋徳桜の「お稽古のツボ」

三味線の音色にのせて、日々感じること、
昭和から平成ひとケタ時代の街かどでの
想い出話などを紡いでいきます。

空間を創出するもの

2016年11月11日 22時22分00秒 | お知らせ
  君ならで誰にか見せむ梅の花 色をも香をも 知る人ぞ知る
 という紀友則の歌がありました。…しづ心なく花の散るらむ、と桜を歌ったりもしていますね。
 この歌を想い出すとき、白珠は人に知ら得ず 知らずともよし…なんて古歌を、必ずいっしょに想い出します。
 英単語の暗記札ではなく、百人一首の暗記札を必携していた中学生だった私は、とにかく、日本の詩歌が大好きでした。
 大岡信先生の『折々のうた』岩波新書版のシリーズは、二十歳前後、擦り切れるほど読み込んでおりました。講談社学術文庫に入っていた和漢朗詠集も、幾度読み返したことか。
 文学少女がなぜ三味線を弾いているのか、まったく結びつきが謎である、不思議ですね?と訊かれたことがありましたが、日本の音楽は古典の言葉があってこそ成り立っているので、洋楽の音楽理論から邦楽を理解しようとすると躓きます。日本の伝統音楽は、単なる音楽ではないのです。

 さて、わが師・杵屋徳衛がこの26日にライブを行います。
 案内状の文面が素敵だったので、ご紹介いたしたく思いました。
 

ご案内《杵屋徳衛 Duo 福原清彦》
 築八十四年、銀座1丁目の街角にひっそりと建つ、鉄筋六階建て奥野ビル(旧銀座アパートメント)は、建築当時、著名人が住む憧れの高級アパートでした。
 しかし今となっては年月を重ねた外壁の朽ちたレンガ、天井や壁に網の目のように張り巡らされた配管や配線、すり減り黒光りした階段や手すり、蛇腹式の鉄柵扉を乗客が手で開け閉めする旧式エレベーターなど、昭和の迷宮にタイムスリップをした様な異空間となりました。
 多くの部屋がギャラリー(画廊)となり、現代の忙しない時間とは隔絶され、浮世離れした芸術家たちが集う、ゆったりとした時間が流れています。

 客席三十、奥野ビル六〇七号室の小さな空間で、長唄・杵屋徳衛と、笛・福原清彦の二人の演奏会が開催されます。
 徳衛は、三味線の演奏ばかりでなく作曲や、一人で唄と三味線を演奏する弾き唄い、特にその独特な人物描写と語り分けの妙は他の追随を許しません。あたかも一人芸の落語を聴く様です。
 また、清彦の笛の力強さと作曲や編曲の際の、場面を把握する感性と、それを笛に託す技量は、在り物をつけるというような安易な方法でなく、常にほとばしるほどの情熱を感じさせる笛となり、聴く人に何かを語りかけます。

 通常長唄は唄方・三味線・囃子方、合わせて十人以上の大人数で劇場演奏いたしますが、今回は杵屋徳衛と福原清彦、そして、太鼓の安倍真結の三人きりで、お客様三十人に杵屋徳衛作曲・福原清彦作笛の「牡丹灯籠」と、明治の長唄「紀文大尽」を聴いていただきます。

 今までにない空間体験に、是非ごゆるりとお運びください。

       二〇一六年 秋 佳辰 
                           Duo 事務局

 
 
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