耐震強度偽装問題でついに犠牲者

姉歯一級建築士の告白に端を発した耐震強度偽装問題で、ついに犠牲者が出てしまった。しかし、業界関係者の話を総合すると、これは明らかに氷山の一角のようだ。監督官庁としての国土交通省の責任は免れない。

にも拘らず、政府自民党から聞こえてくる声は、自己保身に走る政治家の醜い姿をさらけ出している。今朝の討論番組で、中川・自民党政調会長は「どの建設会社やどの構造計算の事務所に設計依頼するかも含め、全面的に建築主に責任がある」との発言は責任逃れといわねばなるまい。なぜなら、「全面的」とはそれ以外の責任を不問に付す意味だからである。さらに、(中川政調会長に名指し批判された)ヒューザーの小嶋社長をいきなり国土交通省へ連れて行った国会議員は論外としても、武部・自民党幹事長からは、「悪者探しに終始するとマンション業界がつぶれる」などと、生命を脅かされている欠陥マンションの居住者を一顧だにもしない無責任発言が飛び出した。

「建築士が悪い」、「民間の検査機関に問題がある」など、一般論としてはいずれも一理あろう。しかし、この問題で明らかなことは、高層建築の構造強度という生命にかかわる重大問題についての検査体制に欠陥があったことだ。すなわち、国民の生命と財産を守るべき「国の責任」である。しかも、構造計算書の偽装を見過ごした民間検査機関イーホームズに、ほぼ毎年定期的な立ち入り検査を実施しながら、その不備を見抜けなかった国土交通省の杜撰な検査態勢は看過されるべきでない。

わが家もマンション暮らしであるが、まったく不安を感じないといえばうそになる。子どもたちには無用の心配をさせたくないが、連日新聞の一面やテレビのトップ・ニュースはこの話題。小学5年の上の娘から「この家は大丈夫なの?」と聞かれるのは時間の問題か。国会でも、今週中に5時間の一般質疑が決まった。高層建築の安全・居住者の安心を回復するため、国の果たす役割は重い。
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