長生き日記

長生きを強く目指すのでなく良い加減に楽しむ日記

503 『マザーリーフ』

2017-07-16 17:54:57 | 日記
井上久美子第一歌集 本阿弥書店2017年7月刊
  井上さんはかりんの中堅。お住まいが三島なので東京歌会にはたまにしかいらっしゃらないが勉強会やイベントのお世話でときどきお顔を見かける。テキパキしていて物静かでもあり、気配りが優れている方だ。この歌集は独身の頃から結婚、育児を楽しむ今迄を編年体でまとめられている。ページが進むにつれて世界が広く多面的になってきたのが分かる。特に社会とか時代を意識したつくりはないのだが、現代に潜む不安感も感じられる。なぜだろう。ますますご活躍を。

途中しか歌えぬ歌を口ずさみペダルを漕げばかわくくちびる
急須には薄く残った茶渋あり紙婚式の日には磨こう
言いすてるように私を批判して毛布はゆっくり背中を向ける
これからのことはひとつも話さずに旅人として君の背を追う
台風情報うつすテレビの左した故郷はきれいな円にかくれる
ゆがみつつ唇かむは君のくせ子宝神社に横顔みれば
潮風にたえる鳥居を見上げればああこんなにもやさしい緋色
わがうちに異なる心音あらわれて金木犀にもむせてしまえり
泣き疲れ子が寝たあとの静けさはダムに沈んだあの家のよう
胎内に眠った形の名残見せ夜泣きの子の背はまるくふるえる
雪の日の一つの秘密をあたためて暮らすことかな夫婦というは
警告は常に静かにせまるもの たとえば北上してゆくサンゴ
孫にまで<先生>であった亡き祖父を探して見上げる夕焼けの空
ふっくらと白き頬もつ人にはず指名手配の写真の女(ひと)は
富士見通り、富士見マンション、富士書店 富士を冠に生きるひとたち
背中より老いてゆく人その背のふるえるをただ見ておりわれら
大判のアジフライ揚げるおばさんの背の蝶々はみずいろの羽
「ひとじちって?」五歳の問いにやわらかい言葉探して言葉は迷う
クリスマスに祖父から贈られたる本に子は知る学校に行けない子どもを
名をしるす子の横顔を見ておればルビのようなり私の春は
胸はれる行為であるか二人の子完全母乳で終えしことなど
唐辛子束にして売るJAに手首の細いレジの人おり

マザーリーフとはセイヨウベンケイソウの事らしい。ハカラメともいう。大きくなったり水分が不足してくると葉の周囲に小さな芽が無性的にたくさんついてきていくらでも増える。ずっとまえ小笠原の道端で拾ってきてずっと育てるというかほったらかしにしていたのだが、無世話が過ぎて消滅させてしまった。油断禁物。

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