菜花亭日乗

菜花亭笑山の暇つぶし的日常のつれづれ。
散歩する道筋は、日本酒、俳句、本、音楽、沖縄、泡盛、カメラに...etc

2016/05/31  俳人 中嶋秀子 (その2)

2016-05-31 23:50:00 | (5)俳句


 

・若き日は手紙もいのち桜貝
・母枯れゆく跳べるかたちに足袋ぬいで
・にちりんに牡丹摘む音ひびきけり
・昼寝子に風のかたみの貝一ひら
・遺されし母子みづいろ盆灯籠
・冬牡丹命終の水吐きにけり
・手に落葉この世のものでなきかろさ
・枯山に一夜ねむりて血を濃くす
・乳房わたすも命渡さず鵙高音
・臥して謝すことことごとく露となる
・海市消え買物籠の中に貝
・真白な皿に一本唐辛子
・箱眼鏡在るはずもなき夫さがす
・プールサイドの鋭利な彼へ近づき行く
・世をみつむものの一つに龍の玉
・為すことを為して悔あり十二月
・つかはざる扇の中の月日かな
・どんぐりの落ちかねてゐる水の照り
・葛飾の夕日が好きで残る鴨
・バレンタインデー髪白くなるそれも良し
・雲急ぎみな沖を指す爽やかに
・来世また君に逢はむと踊り抜く
・吾亦紅花を秘すこと五十年
・秋の蝶風といふ字を散りばめて
・足裏に秋の白さを集め臥す
・五月尽旅はせずとも髪汚る
・施餓鬼棚たたまれし跡かるく掃く
・月仰ぐいま青春の二人子と
・花八ッ手生涯母は紅ささず
・野遊びのつづきの二人松に入る
・六地蔵ひとり戻らぬ花おぼろ
・坐してすぐ燈籠の灯に染まりけり
・髪洗ふ生地にしかと足着けて
・昼顔のゆるりとからむ箒の柄
・本当の越のいろ出す坐禅草
・耐へぬきし女明るし雪椿
・八海山指を濡らして土筆摘む
・風花や夫の棺の出でし門
・冴返り冴返りつつ逝く昭和
・誰もとらぬ一句そこより柚子匂ふ
・雪割草佐渡がもつとも純なとき
・一生の今といふ刻初明り
・八ッ手咲きこの世ひととき華やぐか
・冬波の引き忘れたる毬ひとつ
・風つよしそれより強し秋桜
・鳥雲に入りて小さき寺残る
・てのひらにひとひらの貝初ひかり
・梅漬けて気をとり直すことも又
・月の出を待つ白鳥の羽づくろひ
・一人来て一人去る島石蕗明り
・白鳥来佐渡の山脈聳ちて
・花八ッ手星またたけば少し散り
・いちじくの大き落葉が墓を打つ
・また道に迷ふ夢見て夜の長し
・十月は鵙も俳句も響きけり
・選びし径ひとすぢの径草紅葉
・焼海胆の刺ぱらぱらと白き皿
・島に古る足踏みミシン緑差す
・水晶の念珠ふれたる昼寝覚め
・夫の死で止る思ひ出走馬燈
・落葉降るさなか天麩羅匂ひけり
・てのひらに風あるごとし雛あられ
・鵙日和恥ぢつつ一誌師に捧ぐ
・桐咲いて匂袋の古りにけり
・蔓のびる村の昼寝のふかさだけ
・十薬の白さ肌には宥さぬ白
・球根を植う生涯の悔も植う
・筆の先双つにわれて秋初
・藤房のゆれて硝子の音立てぬ
・鴎外の文体で立つ冬木かな
・待春か耐寒か石しづかにて
・シャボン玉幸福といふ薄造り
・竹伐つて一燈涼を呼ぶごとし
・耳掻の綿毛の恍と年を越す
・秋風や亡き人に問ふことばかり
・血の凍る思ひいくたび走馬燈
・忌明け後のひとりに余る髪洗ふ
・病み克ちし身に殷々と除夜の鐘
・蝶も哭け石塔も哭け棺着く
・看とるとは見守ることか花すみれ
・一句一恨とはわがすさび更衣
・一句一恨百苦同根春の巌
・小鳥来るほとけの数に足らざるも
・猫と語る楸邨の声梅雨ふかし
・白玉を掬ひて翳もすくひけり
・鳥雲に入りて急がず一人の歩
・延命を願はぬ日あり落葉焚く
・水鳥の世へ水鳥のすつと入る
・青涼の風のかたちの見舞籠
・ブランコを漕ぎてこの世を逃れ得ず
・ははきぎも草の真をつらぬけり
・手術日を告げ涼風と医師去りぬ
・癌を病み父母なきを謝す秋の暮
・蝉しぐれ遺書は枕の下にあり
・六角堂の一柱に倚る夏帽子
・水引草すつと引きたる母の糸
・白地着てあたりにふやす草の丈
・わが胸に来しつばくろは癌の使者
・梅日和母生き過ぎて忘られて
・ゆたんぽのぬくもり残し母逝けり
・遠い木は母来給ふ木花こぶし
・母と子の胸をへだてて花氷
・一本の茶杓が緊める冬景色
・鶏頭に手を入れて知る血の重さ
・夕冷えの終の光の絮も消ゆ
・コスモスも切符の色も淡き旅
・秋草を握りて土にかへる壷
・水中の豆腐にひびく花曇り
・雪の午後保母の匂ひの吾子戻る
・身辺に必死の蟻のふえてをり
・泣くまじとゆがみしままの柚子のかほ
・美しき虚のもりあがりかき氷
・日は雲の中にてすすみ罌粟散れり
・一月の雲と語れる古箒
・野分の夜産湯の中にガーゼ流れ
・食器冷え眩暈のごとく鴎ふゆ
・茶筅の先雪降る音を感じて止む
・吾子の前風が忘れし青林檎
・敏き子と夫待ち夕靄に包まれゆく
・夜は孔雀拡がるごとし足袋はくとき
・プールサイドの鋭利な彼へ近づき行く
・麦刈つて燈台の根を地に残す
・虹立つと呼ぶ七人の子供欲し
・月光に髪結ひ上げて翡翆欲し
・我に残る若さ焼ソバ汗して喰ふ
・闇にただよふ菊の香三十路近づきくる
・黄落をあび黒猫もまた去れり


中嶋秀子氏の眼に見えているもの。
心に映っているもの。
それぞれが明瞭に見え、感じられ、聞こえてくる。
親しく近づきたい俳人だが、少し怖そうでもある。



ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 2016/05/31  日記  五月尽 | トップ | 2016/05/31  俳人 中嶋秀子... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

(5)俳句」カテゴリの最新記事