菜花亭日乗

菜花亭笑山の暇つぶし的日常のつれづれ。
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2017/07/03  加藤楸邨の俳句  その5

2017-07-03 21:42:56 | (5)俳句


・兄弟の夕餉短し冷奴
・驟雨下の合掌部落三時打つ
・夕焼けて蘇枋咲くさびしさに逢へり
・荒東風の涛は没日にかぶさり落つ
・寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃
・原爆図中口あくわれも口あく寒
・行く鴨のまことさびしき昼の雨
・萱の穂の稚き月を眉の上
・交る蜥蜴くるりくるりと音もなし
・木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ
・税吏汗し教師金なし笑ひあふ
・今は亡き子よ噛めば数の子音のして
・恋猫の皿舐めてすぐ鳴きにゆく
・雪割りて真青な笹ひらめかす
・鰍突きまぶしその臀充実す
・五月富士屡々湖の色かはる
・花を拾へばはなびらとなり沙羅双樹
・君子蘭蟻頭をふりて頂に
・笑む少女あけびの種をもてあます
・鳥雲に隠岐の駄菓子のなつかしき
・声やはらぐ鷽の日あたる胸毛見て
・冬鴎生に家なし死に墓なし
・虻を手にうちころしをり没日の中
・頬白のこゑに蹤きゆく薄暮かな
・牡丹の芽萌えむとすなりひたに見む
・ゆるやかに海がとまりぬ暖房車
・寒木瓜のほとりにつもる月日かな
・雪の峡寒天干しも顔を干す
・飾臼牛の貌出て舌うごく
・ふなびとら鮫など雪にかき下ろす
・二度呼べばかなしき目をす馬の子は
・ポケツトの胡桃鳴らして年を越す
・萱刈を了へて遊べる馬をよぶ
・守宮出て真青な夜が玻璃に満つ
・水鶏ゐて波の穂しろくあけそめぬ
・虹消えて馬鹿らしきまで冬の鼻
・芭蕉忌やはなればなれにしぐれをり
・酔ひの目に苺は紅しひとつづつ
・麦を踏む父子嘆きを異にせり
・陰晴や薊の穂絮汽車に入る
・百代の過客しんがりに猫の子も
・声あげて石斛の香を感じをり
・晩稲刈かたへに雀あそばせつ
・カフカ去れ一茶は来れおでん酒
・冬鴎生に家なし死に墓なし
・春嶺の脈うつを蹴り起きあがる
・銀杏拾ふ外科医にて今日若き母
・鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる
・静かさも父子にちかし花杏
・鼠出て月をうかがふ青葡萄
・近江より雪来て蕗に降らす雨
・露の蕪抜いておどろく声洩らす
・ころがされ蹴られ何見る鰤の目は
・臥して見る青芝海がもりあがる
・妻は我を我は枯木を見つつ暮れぬ
・独活の香の旅にしあれば枕もと
・原爆日ごぼりごぼりと泉の穂
・幹のうしろに暗き幹立つ筒鳥よ
・世に遠きことのごとしや鷦鷯
・崩れ簗見れば見えをりしぐれつつ
・火の奥に牡丹崩るるさまを見つ
・葱切つて刺たる香悪の中
・夏の風邪半月傾ぎゐたりけり
・餅焼くやはるかな時がかへり来ぬ
・笹鳴の鳴く間黙す間時が充つ
・冬蜂と我とエスカレーター天にゆく
・草蓬あまりにかろく骨置かる
・だまり食ふひとりの夕餉牡蠣をあまさず
・襟巻に老いて澄む目やかなしきまで
・かなしめば鵙金色の日を負ひ来
・さむく青く石蓴を透きて指の紋
・青き踏む左右の手左右の子にあたへ
・わかれんと秋の夜潮の音もなし
・鶉の頭まるくてあかくて入日どき
・蟻殺すしんかんと青き天の下
・迎へ火や海のあなたの幾柱
・新茶入れ幽かにありし亡父憶ふ
・つぎつぎに子等家を去り鏡餅
・男ありけり落し角見て額撫づる
・青き踏む左右の手左右の子にあたへ
・青あらし吹きぬけ思ひくつがへる
・外套の襟立てて世に容れられず
・冬の峡寒天干しも顔を干す
・二階まで蟻のぼりきて午後ふかし
・枸杞青む日に日に利根のみなとかな
・目を張りて寒木瓜と逢う夢疲れ
・頬白や篁の秀は隠岐の海
・蚊帳出づる地獄の顔に秋の風
・びいどろを蹴りをりし春の土いづこ
・春陰や巌にかへりし海士が墓
・峡田育てし落し水行く重し睡し
・木曽谷の刈田をわたるひざしかな
・終りに近きシヨパンや大根さくさく切る
・梅雨明けし各々の顔をもたらしぬ
・河豚の面湧いて思ひ出かきみだれ
・破れ芭蕉月光顔に来てゐたり
・はからずも雨の蘇州の新豆腐
・冬鴎生に家なし死に墓なし
・初硯磨りつつぞ声緊りゆく
・父の背に睡りて垂らす猫じやらし
・レポートに葱の匂ひすどの顔ぞ
・聴きすます霙襖の奥の声
・花サビタ十勝の国に煙たつ
・雪がこひ牛の首出て一鳴す
・梟の憤りし貌の観られたる
・山茱萸と知りてはなるる月の中
・わが云へば妻が言ひ消す鉦叩
・人が酔ふ新酒に遠くゐたりけり
・どこやらに硝子が割れぬ桐の花
・楸邨門たる栄光餅が焦げており 藤村多加夫
・茉莉花を拾ひたる手もまた匂ふ
・枸杞青む日に日に利根のみなとかな
・雪の上に鯨を売りて生きのこる
・蝸牛いつか哀歓を子はかくす
・萱の芽を見たり地獄の鳴るほとり
・臥して見る青芝海がもりあがる
・行く鴨にまことさびしき昼の雨
・鰍突きまぶしその臀充実す
・燕仰ぐ少年の日の目ならずや
・おさがりにして只の雨海に降る
・峡の子の栗鼠を飼ひつつ夏休み
・残り鴨一羽で翔つてをさまりぬ
・春蝉の鳴きては止みぬ止むは長く
・柘榴火のごとく割れゆく過ぎし日も
・病む瞳には眩しきものか冬薔薇
・暗中に聴きえし寝息あたたかし
・四五歩して紫蘇の香ならずやと思ふ
・春さむく海女にもの問ふ渚かな
・ふなびとら鮫など雪にかき下ろす
・秩父路や天につらなる蕎麦の花
・柳青めり水脈しづまれば青が去り
・春の昼母子爪剪る向きあひて
・兄弟の夕餉短し冷奴
・眼あくればひとの時間や座禅草
・雪割りて真青な笹をひらめかす
・涸谷をわたる電柱なつかしき
・鷹翔てば畦しんしんとしたがへり
・満月の鳥獣戯画や入りつ出でつ
・桐の実の鳴らんと仰ぐ鳴りにけり
・外套の衿立てて世に容れられず
・秋蝉のこゑ澄み透り幾山河
・獅子舞を終へし囁き真顔となる
・駒とめて野馬追の武者水を乞ふ
・屠蘇くむや流れつつ血は蘇へる
・闘鶏のねむりても張る肩の力
・花石榴すでに障子の暮色かな
・その冬木誰も瞶めては去りぬ
・おのれ吐く雲と灼けをり駒ヶ嶽
・海越ゆる一心セルの街は知らず
・蜘蛛の子の湧くがごとくに親を棄つ
・白のまぶしさレグホン百羽夏野に飼ふ
・黄蜀葵花雪崩れ咲き亡びし村
・飢ふかき一日藤は垂れにけり
・甘露煮や寒鮒の金なほのこり
・滴りて青嶺を指せる洋傘の尖
・日光黄菅とその名覚えてまた霧へ
・薄なびく汽罐車が曳く四十輛
・雁来紅大きな雲の割れにけり
・夜盗虫いそぎ食ふ口先行す
・みつつかなし目刺の同じ目の青さ
・燕はや帰りて山河音もなし
・鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる
・その冬木誰もみつめては去りぬ
・雪沓の跡が雪嶺と駅を結ぶ
・磨崖仏草木瓜噛んで酸つぱいぞ
・かうかうと雪代が目に眠られず
・尾へ抜けて寒鯉の身をはしる力
・本売りて一盞さむし春燈下
・春陰や巌にかへりし海士が墓
・冬帽を脱ぐや蒼茫たる夜空
・人声のうしろより来て秋立つか
・一つづつ花の夜明けの花みづき
・崖の上に犬吠えたつる雪曇り
・朝焼の褪せてけはしき街となりぬ
・颱風の心支ふべき灯を点ず
・春の暮暗渠に水のひかり入る
・春愁やくらりと海月くつがへる
・若芝にノートを置けばひるがへる
・石叩去りたる石はどれならむ
・死や霜の六尺の土あれば足る
・夜の屋根に女声わき雪おろし
・水温むとも動くものなかるべし
・初鶏の次までの闇緊りをり
・螻蛄なくや教師おのれにかへる時間
・稲扱くや水牛水にねむるなり
・お降りにして只の雨海に降る
・虎河豚のぐにやぐにやとして怒りきれず
・田草取胸乳ほとほと滴れり
・はたとわが妻とゆき逢ふ秋の暮
・夏蚕いまねむり足らひぬ透きとほり
・甘藍の一片をさへあますなし
・鰯雲ひとに告ぐべきことならず





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