菜花亭日乗

菜花亭笑山の暇つぶし的日常のつれづれ。
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2016/05/31  俳人 中嶋秀子 (その1)

2016-05-31 23:55:00 | (5)俳句


五月尽の例句

・五月尽旅はせずとも髪汚る

が気になった。
思い通りには行かなかった五月。
その思いを「髪汚る」という表現で抉って見せた。
女にとって気になる髪。
これが汚れるというのは、それと同等の得られるものがあって許される。
ただ汚れただけで済ませられる問題ではない。

作者の中嶋秀子氏について調べてみた。

『中嶋秀子 (なかじま ひでこ)

昭和11年(1936) 東京都生れ。 「響」主宰・「寒雷」

夫は俳人の故・川崎三郎。能村登四郎、加藤楸邨に師事。「寒雷」,「沖」同人。昭和61年「響」創刊。第43回現代俳句協会賞受賞。

句集:『陶の耳飾』『命かぎり』『待春』『アネモネ』『天仙果』『花響』『岸辺』『玉響』手毬花』ほか
』(俳句舎俳人名鑑)

現代の俳人だが、ベテランだ。
昭和11年生まれの79歳。
多感な10代を戦後の混乱期に過ごした女性の詩人、俳人はよく見える眼を持っている。
中島氏もその中の一人のようだ。

ネット上で見みることが出来る俳句を集めてみた。


・かたつむり黙って墓を守りをり
・こんにやくの四角三角初しぐれ
・さはさはと夏来るらし雨も又
・しだれ櫻観音堂を入れて咲く
・すぐ曇る姿見磨く敗戰日
・もろもろのしがらみ付けて太る牡蛎
・サルビヤの純粋迷ひごころ消ゆ
・プールサイドの鋭利な彼へ近づき行く
・三日月に添ふ春星の一しずく
・世は不況わたしは不興秋扇
・亀鳴くやうかうかと過ぐ五十代
・仏飯におほひかぶさる夏鴉
・何も無き冬空が生む鳥あまた
・冬紅葉はさみて句帳まだ白し
・初氷日はこはごはと空わたる
・呱々の声泰山木も一花挙ぐ
・塚ひとつ包むがごとくつつじ燃ゆ
・夜の秋鯉の動きのしきりなり
・夫の墓ほたるの墓となりて燃ゆ
・実ハマナス不法投棄の地に結ぶ
・寒紅を濃く引くおのが愚の始め
・引くといふ大事を胸に鶴ねむる
・抱きしめる仔猫芯までやはらかし
・春の宵銀座は奥のふかきとこ
・暑といふ字崩れて秋の蝶となる
・月へ行くバスが一台花野発
・木枯しの落ちゆく先に夫の墓
・桔梗にあいまいな色なかりけり
・梅雨の月皓々と雲寄せつけず
・母を追ふ父の流燈波くらふ
・水底を見て来し鳰の眞顔かな
・河骨の鈴をふるはす星揃ふ
・流燈となりても母の躓けり
・浮寝鳥流されさうで流されず
・煩悩か叡知か胡桃皺ふかむ
・男なら踏めとばかりに落椿
・町ねむり星と交信花八ツ手
・秋の風鈴聴きつつ自然死を願ふ
・秋彼岸過ぎていよいよ独りなり
・秋草に捨てられて鳴るオルゴール
・竹の秋ひと日師恩につつまれて
・箱庭の添景となる寺に住む
・約束の橋のたもとに苧殻焚く
・綿虫はほとけの匂ひ好きな虫
・葉のかげに杏ひとつぶ黄熟す
・虹からの郵便濡れて縁側に
・虹消えて石の仏の大き耳
・見えぬ枝夜空に張って花火消ゆ
・走馬燈まはればあの世めく一間
・金木犀これよりの日々矢の如し
・鉦叩ひかへめにして正確に
・雪催街青むまで鴉鳴く
・雲に身を食はるる月の美しき
・霊棚をたたみし跡にこぼれ米
・霜柱一本づつにこころざし
・青田行く新幹線は銀の針
・黒揚羽亡き人の魂のせて来よ
・乳房みな涙のかたち葛の花
・アネモネや来世も空は濃むらさき
・どつぷりとつかりてこその炬燵かな
・初写真山河翼を広ぐごと
・千草枯る音にも傾く能舞台
・湖岸打つ波音その夜炉を開く
・煖房の寺出て町へ菓子買ひに
・この村の深息に似て蕎麦の花
・長十郎この重たさが友の情
・祝宴のまづほろにがき菊膾
・水盤の水に泳がす金魚草
・デイゴ咲き口中赤き魔除獅子
・タオルの紺泳ぎし体固く閉づ
・口中に紫蘇の実一つ夜の厨
・花たばこやさしき空の見えはじむ
・川開き音だけ聞いて寺守る
・昨日今日浅間は見えず芹の花
・風の金雀枝あやふし吾子の歩み初め
・豆の花終始伏目の空があり
・洗はれてガラスのごとき三葉芹
・裏白の渇きに触れし夜の指
・唐辛子溂としていびつなり
・ふれあひて水引草も世も淡し
・爪をきる茗荷の花のしづけさに
・草の市ちちははの為夫の為
・えぞにうの花錆はじむ阿寒湖畔
・花韮のはかなきまでに白き日々
・ひと息ひと息彼岸桜の開きゆく
・まぼろしの夫の背めがけ雪礫
・初旅やまだ着こなせぬ母の衣
・龍跳ねて金粉散らす賀状かな
・母と我の座がかはりをり初明り
・編み残す去年の毛糸のけぶりをり
・身籠りて冬木ことごとく眩し
・冬薔薇はじめの一ひらほぐれ難し
・スケーターワルツ氷上の傷すぐ潤ふ
・焚火跡役解かれたる釘のこる
・セーターの黒い弾力親不孝
・竹はねて一瞬金の雪舞へり
・寒風に顔ちぢまりて吾子戻る
・豆腐同型もつとも寒き日と思ふ
・除夜の厨常の日のごと束子置く
・失ひし画鋲どこかで越年す
・秋草を活けて若さのきはに立つ
・幸せも木の実も一つづつゆずる
・蜩の訴へてきし声もやむ
・マヌカンとすでに相思の燕去る
・火の色に恥甦る霧の中
・やはらかく心耕せいわし雲
・メロンから拡がる夜の白い漁網
・膝の上京菓子となる若楓
・誰もが箸使ひはじめて葭雀
・籐椅子に海荒るる日の衿きよし
・母と子の胸をへだててかき氷
・誰か射つ予感に白いハンカチたまる
・未婚なり掌をついて濁す泉の底
・かわききる海苔に残れる空の傷
・雨二日杉菜に厚みくははりぬ
・桃の花咲き満ちて木は香も立てず
・人の死に人が集まる夜の辛夷
・花の夜鍋を落しておどろきぬ
・ひと息ひと息彼岸桜の開きゆく
・木の桶がからつと乾き蜂通る


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