菜花亭日乗

菜花亭笑山の暇つぶし的日常のつれづれ。
散歩する道筋は、日本酒、俳句、本、音楽、沖縄、泡盛、カメラに...etc

2017/12/10  農口尚彦杜氏4度目の酒造り  「農口尚彦研究所」 (その2)

2017-12-10 15:04:16 |    日本酒


<七人の蔵人>
新しい酒蔵に馳せ参じた蔵人は7人。
SAKETIMES
2017.11.17 リリース情報に出身が記載されている。
酒蔵の経験者ばかりなので、農口杜氏の指導があれば、現場の造りは問題ないだろう。

20176月には農口杜氏の技術と精神を受け継ぐ、夢と情熱を持った若者の公募を開始しました。多数の応募の中から7名の若き蔵人が採用され、農口杜氏は彼らと共に最後にして最高の「魂の酒」づくりに挑戦することとなりました。

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蔵人右から

安田佑祐:大阪府出身。滋賀県の富田酒造(銘柄「七本槍」)で4年間の酒づくり経験を持つ。今年は「酒母師」として酒母づくりの責任を任されている。

宮崎皓平:愛媛県出身。高知県の仙頭酒造場(銘柄「土佐しらぎく」)などで2年間の酒づくり経験を持つ。今年は「釜屋」として、蒸し米に対する責任を任されている。

小西弘将:滋賀県出身。滋賀県の喜多酒造(銘柄「喜楽長」)などで4年間の酒づくり経験を持つ。今年は「麹師」として、麹づくりの責任を任されている。

山崎裕平:石川県出身。静岡県の土井酒造場(銘柄「開運」)、石川県の小堀酒造(銘柄「萬歳楽」)で計5年間の酒づくり経験を持つ。今年は「頭」として酒づくりの陣頭指揮を任されている。

柳生光人:福岡県出身。山口県の新谷酒造(銘柄「わかむすめ」)で1年間の酒づくり経験を持つ。将来杜氏として海外で日本酒を造ることを目標に、農口杜氏に弟子入りした。

吉井康太朗:静岡県出身。慶応義塾大学卒業と異色の経歴の持ち主。農口杜氏の酒に出会い、未経験ながらも、ものづくりを極める道を選び、農口杜氏に弟子入りをした。

ゴードン・ヘディ:オレゴン州ポートランド出身。中島醸造(銘柄「小左衞門」)などで3年間の経験を持つ。将来杜氏として自身の酒をつくる夢と、世界中の人に日本酒を伝えるために、農口杜氏に弟子入りをした。



<造り・出荷>
新しい酒蔵も完成、即戦力の蔵人も馳せ参じ、既に造りは始まって、今月には第1号の本醸造が出荷される。

クラウドファウンディングが始まり、サポーターが1872人、出資額は目標の100万円の16倍を超える16,494,500円が集まっている。

酒は造っても、飾っておくものではない、飲まれなければ意味がない。
従って、造ったものをお客に届ける仕組みを充実させることが重要だ。

クラウドファウンディングの利用や営業部門の充実は酒蔵の成功には欠かせない。
この面でも不安はなさそうだ。



<感想>
84歳にして新しいチャレンジを始める農口杜氏の気力・体力は素晴らしい。
是非、“美味しい酒をお客に届ける・若手を育てる”夢を実現していただきたい。

・近代的酒蔵・サイトの情報・営業面の充実など造り以外の準備も周到に行われている様子で不安を感じさせない。
空気・水等の環境もよく、酒米の手当も問題がないようだ。

・銘柄名は「農口五彩」で、本醸造・純米・山廃純米・山廃吟醸・純米大吟醸の5種類になる。
価格面は純米大吟醸720ml4000円になっていることから、農口杜氏の考える“適正価格”が実現されている様子なのもうまく行きそうな気がする。

今の状況を調べた限りでは、不安はなさそうで、夢の実現に向かって順調に進んでいる。
来年度はおそらく銘柄数も増えていくであろうし、山廃純米大吟醸などもいずれアナウンスされるだろう。
是非、「農口五彩」を日本全国及び海外にまで送り届けて、日本酒の醍醐味を提供する目標が達成されるよう祈念したい。


【データ】

農口尚彦研究所
公式サイト
https://noguchi-naohiko.co.jp/


facebook
https://www.facebook.com/%E8%BE%B2%E5%8F%A3%E5%B0%9A%E5%BD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80-1328817527232199/


クラウドファウンディング
https://www.makuake.com/project/godofsake_brewing/



<参考になるニュース>

復帰ニュース
朝日新聞デジタル 2017130
「「酒造りの神様」84歳、復帰へ 能登杜氏四天王の一人」
http://www.asahi.com/articles/ASK1N3323K1NPJLB002.html


復帰理由・酒造りに対する考え方
SAKETIMES
2017.06.01    インタビュー/対談
https://jp.sake-times.com/special/interview/sake_g_naohiko-noguchi


酒蔵建設
北陸工業新聞社 2017/07/18
「【石川】丸西組で建設進む/農口研観音下町酒造施設/小松」
http://www.senmonshi.com/archive/02/02D3HJtWKHA5LQ.asp


営業職員の募集(募集終了)
2017/10
はたらいく
「株式会社農口尚彦研究所の求人詳細」
https://www.hatalike.jp/h/r/H103010s.jsp?LA=028&RQ=49552916&__u=1512872522427-8862111414019729798


酒蔵スタッフの募集(まだ募集中?)
・タウンWORK
https://townwork.net/detail/clc_0206508001/joid_50370343/

・おしごと発見T-SITE
https://job.tsite.jp/detail/59429



酒蔵としての研究所
SAKETIMES 2017.10.13
プロジェクト
https://jp.sake-times.com/special/project/pr_naohiko-noguchi_001


クラウドファウンディング、蔵人情報
SAKETIMES
2017.11.17 リリース情報
「農口尚彦研究所がクラウドファンディングサービス「Makuake」にてプロジェクトを開始!リターンは新設蔵で一番最初に醸造したお酒」
https://jp.sake-times.com/special/press/p_noguchi-makuake


復帰の理由、考え方、蔵人
Forbes JAPAN
20171201
「伝説の杜氏・農口尚彦84歳が最後に挑むSAKEイノベーション」

https://forbesjapan.com/articles/detail/18582




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2017/09/26  日本酒グッズ 利き猪口ホルダー or 利き猪口ストラップ

2017-09-26 21:23:46 |    日本酒


先月、岐阜の地酒に酔う2017に参加した。
その際、会場で酒蔵のブースを利き酒で回っている時、何人かの方に質問を受けた。
その時、使っていた利き猪口ホルダー(又は利き猪口ストラップ)についてだ。

多数の蔵が集まる規模の大きな利き酒会では、写真を撮ったり、メモを書いたりする際に、利き猪口を手から離す必要がある。
ブースの隅に置いたりするのだが、置き忘れたり、転落させたりする危険もある。
そんな時、利き猪口を首にぶら下げるのが、利き猪口ホルダーだ。

筆者が使っているのは、3月ににいがた酒の陣に参加した時、開場時間待ちの行列の中、売られていたので購入したものだ。

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ネックストラップの先に、柔らかい樹脂(ゴム?)の利き猪口ホルダーがついている。

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ホルダーは、利き猪口サイズに合わせた内径なので、ぴったり利き猪口が入る。滑らない素材なので確りと固定される。
天地がひっくり返っても、酒は溢れるが猪口は落下しないので安心だ。

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ストラップは、合成繊維製なので切れる心配はない。
お酒グッズらしく、日本酒の用語が印刷されている。
価格は1000円だったと記憶する。

このストラップが必要なのは、日本酒好きでも限られた人で、一般的に必要なものではない。
ごく限られた狭いコミュニティーの中で、イイネと言われる代物だ。


利き酒会は、良く参加するが、東海地方の会場ではこの品物は販売されていない。
にいがた酒の陣は、土日2日間で12万人が参加する巨大な利き酒会で、朝10時から夕方6時まで8時間の長丁場、片手で猪口を持ち続けるのは結構注意力を要求される。
油断すると、会場で猪口を落として割れる音が何回もすることになる。

そのためか、にいがた酒の陣ではこのストラップを必要とする人が多いのだろう。



一寸気になって、このストラップが新潟以外でも売られているのか調べてみた。
この記事は、その報告である。欲しい人には参考になるかもしれない。

調べた処、3つ見つかった。


その1、創作酒器処藤山
http://touzan.ocnk.net/product/61

これは、常時販売があるようで手に入れられる。
価格も新潟と同じ、1000円(外税)。
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日本橋で4月に開催された日本酒利き歩き2017の会場で販売された物が2種類あるようだ。

その2は、笹塚鞄製造所

https://ameblo.jp/hide2chikawoo/entry-12266226933.html

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ホルダー部分は革製で、高級感がありそうだ。
お猪口の固定の仕方等が分からないので、逆さまになった時落ちないのかは写真ではわからない。
今入手できるかどうかは問い合わせる必要がある。



その3、ウォレテリア山藤のオリジナルお猪口ケース
https://www.tokyo-yamatou.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%A9%8B%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%85%92%E5%88%A9%E3%81%8D%E6%AD%A9%E3%81%8D2017/

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『「~~利き歩きうさぎが可愛く覗く

首から掛けられるオリジナルお猪口ケース 2,000(税込)


当日イベント受付で貰えるオリジナルお猪口(参加証)を、
革小物メーカーが”利き歩き”のためだけに特別に製作した《オリジナルお猪口ケース》に入れて、たっぷりとイベント&日本酒をお楽しみくださいませ

※基本的にイベント当日・店頭での限定販売となりますが、予めグループでまとめて購入されたい方は、以下にお問い合わせください。
ウォレテリア山藤 TEL03-6661-1481mailt-ebisawa@tokyo-yamatou.co.jp

よろしくお願いいたします。」』
https://ja-jp.facebook.com/tokyo.yamatou/

この商品も写真を見る限り、お猪口の固定がどの程度されるのか不明だ。逆さまになると落ちるような気もする。

入手できるかどうかは、問い合わせる必要がある。


好事家が増えれば、販売する業者も増え、商品も様々なものが供給されることになる。
欲しい人は、まず一つ購入したらどうだろうか。




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2017/03/10  魚沼釜蔵 新潟店  (その2)

2017-03-10 23:10:00 |    日本酒


最初に注文した酒は、訪問させていただいた樋木酒造に敬意を表して「鶴の友 普通酒」。

注文すると、担当女性が1升瓶と枡とグラスを持ってきて用意してくれる。



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女性店員はグラスに注ぎ始め、グラスから溢れても其の儘注いでいる。どれだけ入れるのだろうと思っていると、枡の縁まで来て止めた。もうこれ以上入れられない。

呑助の心を掴む演出だ。
グラスは上げ底だが、溢れ枡に溜まっていくお酒を見ていると嬉しくなる。
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・お通し
生野菜。
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味噌と酒粕を混ぜて薬味を加えたような感じ。

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もみじおろしと酢の物。


・蛍烏賊の沖漬け
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新春の日本海の旬の蛍烏賊は欠かせない。
刺身は虫がいるので避けたいが、茹でて酢味噌ではあっさりし過ぎ、沖漬けが一番旨味を感じられる。

塩味は抑えてあるので酒の肴にチューニングされており、良かった。


・牛もつと豚もつと大根の8時間煮
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丼で登場したので驚いた。
もつ煮というと小さな器で出てくることが多いが、この店は違った。
見かけは濃い感じだが、味は優しく、もつは柔らかく、苦手な人も食べられそうだ。


・栃尾ジャンボ揚
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薬味が、定番の生姜以外に2種類。旨味系のものチリソース系のものがあり味変りを楽しめる。


・ズワイガニのクリームコロッケ
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お酒の2杯目は、普通酒でも美味しい雪中梅にして鶴の友との飲み比べ。

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バランスの取れた味わいで、癖を感じさせない。
尖った味の主張がないので、肴に合わせやすい。
食中酒に最適なのは、両方とも同じだ。

細かく言うと中盤までは同じ様にスッキリとしてバランス良いが、後半にかけて雪中梅の方は軽い渋味があり押しを感じさせるが鶴の友は軽く切れる。

飲みごたえを求める人なら雪中梅、切れの良さ軽やかさが好きな人なら鶴の友だ。


・甘口出汁巻き玉子
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これもボリュームが有った。


・おにぎりと味噌汁
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〆はラーメンではなくお米のおにぎりだ。
新潟の炊きたてご飯のおにぎりはもっちりとしてやはり美味しい。


《感想》
・何か新橋の人気店魚金を思い出した。
日本酒が飲めて、料理が美味しく、価格もリーズナブルで、量も多い。
こんな店が近くにあると良いと思わせる。
・日本酒の品揃えは、新潟に限られるが、銘柄は自由に選べる。
魚金はそれ程種類はないが、銘酒があり、尾瀬の雪解けシリーズが格安で飲むことができる。
・料理の味は、それぞれだ。魚沼釜蔵は薄味で新潟の酒に合わせているのだろう。
魚金の味は、店により差があるが、どの料理も美味しい。
・新潟に来る場合は、新潟駅にある魚沼釜蔵は便利で、新潟の酒・肴が楽しめるのでお薦めの店だ。
・ぽんしゅ館も魚沼釜蔵もSEP INTERNATIONALグループの店で、明確な経営理念で運営されているので、何処の店でも同じように楽しめると思われる。


【データ】

魚沼釜蔵新潟駅店

http://www.sep-i.co.jp/niigata/


http://ponshukan-niigata.com/11.htm


S
E
P INTERNATIONAL
http://www.sep-i.co.jp/



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2015/01/01  宴の酒

2015-01-01 23:50:00 |    日本酒


来客があり、日本酒でお祝い。

買ったばかりの搾りたてと熟成酒の飲み比べを行った。

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右から
・美濃天狗 純米吟醸生原酒 しぼりたて H26/12瓶詰
・純米大吟醸 百四拾 田酒 H18/08瓶詰
・峰乃白梅 吟醸源酒 2014/07瓶詰

H26酒造年度に造られた、ピカピカの1年生とH18酒造年度の中学2年生と、去年の1年生の飲み比べ。


・美濃天狗 純米吟醸生原酒 しぼりたて H26/12瓶詰
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立香の吟醸香は軽目で鼻につくことはない。酸はタップリと豊かで厚みがある。原酒で度数が18~19度あるため飲み応えがある。
スッキリと線の細い吟醸酒では無く、力強さ・存在感のある吟醸酒だ。
中盤の酸の膨らみがあり食中酒としても適応性がある。
終盤の苦味・渋味は抑えられている。


・純米大吟醸 百四拾 田酒 H18/08瓶詰
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青森県の県産酒造好適米 “華想い” を麹米・掛米に100%使用したもの。
銘柄名の「百四拾」は、“華想い”と命名される前には、青森県農業試験場において「青系酒140号」と呼ばれていたことに由来するそうだ。

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立香は、仄かに清々しさを感じさせるもの。甘味と酸味の繋がりがスムーズで滑らかな舌触り、枯れているかと予想したが予想以上に酸の膨らみがある。味わいに偏りはなく、中盤以降の切れは良い。熟成酒らしい味の展開と切れの良さを実感できた。

この酒は、封を切るまで不安を持っていた。
家庭用冷蔵庫の上段、アルミの袋に入れてあったとはいえ8年間毎日開閉される場所で囲っていたものだから。
立香は老香・熟香を予想したが全くそれはなく、むしろ清々しい香りだった。
ホシザキの業務用冷蔵庫ではなくても日本酒を囲うことは可能だと証明してくれた。
冷暗所で微動だにせず全く刺激のない状態より、少しは刺激を与えたほうが成長に良い効果を与えるのかもしれない。
バロック音楽が流れる家庭用冷蔵庫があれば、なお良いかもしれない。


・峰乃白梅 吟醸源酒 2014/07瓶詰
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立香は吟醸香がかなり立つ。入り口は甘い。酸の膨らみは中程度で滑らか、含み香も吟醸香を感じる。中盤以降切れは良く、吟醸酒らしい甘苦も感じる。後口は個性的で、ピリリと辛い。
食中酒より乾杯用の酒の印象だ。


おせち料理を肴に、四方山話も肴にして飲んでいる内に、3人で3本飲みきってしまった。
最後はかなり酔ってしまったが、家の酒だから家路を辿る必要はない。
楽しく酔えば良い宴は快いものだ。




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2014/12/18  今日の酒  三千盛 「燗で旨い吟醸酒」

2014-12-18 22:56:53 |    日本酒


今日は、寒波の襲来で日本列島が震え上がり、高速道路や鉄道・飛行機など交通機関に運休する羽目になった。

あまりに寒い日だったので、燗酒が飲みたくなった。

取り出したのは、三千盛の「燗で旨い酒」。
今年の秋から登場した新ラベルの燗用の酒だ。

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三千盛の説明文では、次のように書かれている。

「燗で旨い吟醸酒
早い夕暮れ ふと小寒く感じられる頃となれば、お酒に
燗をつけてみてはいかがでしょうか

三千盛より燗上がりする吟醸酒を発売します
やわらかく広がる深い旨み
雑味のないきれいな後味
煮物、焼き物、炒めもの、うす味から濃口の味付けまで幅広くお料理を引立てます」


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裏ラベルの商品名は、「三千盛 燗旨吟醸」と書かれている。
50%精米の大吟醸酒。:

ラベルには、国産米としか書かれていないが、HPを見ると
麹米は秋田県産美山錦、掛米は岐阜県産あきたこまちとなっている。

日本酒度は+15,
発売期間は:10月から3月までの期間限定。

販売価格
:1,800ml詰 \2,239 税込み
, 720ml詰  \1,018
(消費税抜本体価格)

先ずは、冷(常温)で飲んでみる。
立香は、際立つ吟醸香というのではなく、仄かに甘さを感じさせるもの、清々しい香りだ。
口に含むと偏りのないスッキリとした入り口で、軽い甘さを感じる。丸い透明感のある膨らみが快い。
味わいは偏りがないバランスの取れたもので、流行りの無濾過生原酒で酸味・辛味を押し出してくるものとは違った味わいだ。バランスの良さが透明感に繋がり口の中に広がる。
後半の締の苦味は僅かで浮かない、そのためスッキリした切れの良い印象を与える。後口も良い。
冷でも充分行けるお酒で、三千盛伝統の水口の系列の酒といえる。

三千盛の定番の大吟醸に、超特がある。
超特原酒は17度であり中盤のパンチがある。
超特は同じ15度だが、後半の苦味・渋味がこの酒より感じられる。
印象としては、燗旨吟醸は透明感・後半の切れがあり、超特より上品で綺麗な酒だ。

次に、ぬる燗で飲んでみた。
ぬる燗の印象は、常温とあまり違いを感じない。

最後は、温度を上げ、飛び切り燗にしてみた。

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酒かん計で上限まで温度を上げた。
利き猪口に注ぐと、今日の寒さでは湯気が立つ。

結論から書くと、熱燗は良かった。
立香は、仄かな甘さに酸味の香りが僅かに加わる、嫌な香りはしない。
入り口は甘く、丸く大きく膨らむ。この膨らみが熱燗では出る。味わいはバランスが良く透明感は膨らみとともに広がる。終盤にかけてピリ辛と苦味が微かに感じられるが上に浮く感じではない。
熱燗にすると、透明感のあるバランスの取れたあじわいにふくらみと大きさが加わる。切れの良さは変わらない。これなら肉系の肴にも合いそうだ。
今日は、先日の三千盛新酒誕生酒蔵の集いで購入したチーズ工房のとろっとニンニクチーズと冷蔵庫にあった鶏のささみのスモークを肴にしてみたが、スモークの香りと喧嘩すること無く、スモークの味わいと香りを引き立てた。三千盛らしい料理に寄り添う酒だ。


三千盛の燗酒といえば、従来は純米大吟醸の5年熟成酒である朋醸が代表だった。5年熟成なので味わいは深く厚いのだが立ち香に老香を含む熟成香があり燗にすると気になる人もいた。
だが、この燗旨吟醸は立ち香も癖がなく清々しく透明感があり、料理を引き立てる燗酒としての適応性が高い。

燗用の吟醸酒といえば、獺祭の温め酒、黒龍の九頭龍が思い浮かぶが、燗旨吟醸も負けないのではないかと思った。
機会があれば、ブラインドで利き比べをしてみたいものだ。
コストパーフォーマンスを、考慮すれば評価は一層高くなるだろう。


【データ】
(株)三千盛
岐阜県多治見市笠原町2919
Tel(0572)43 43-3181
Fax(0572)43 43-3183
http://www.michisakari.com/

E-mail:
 
info@michisakari.com



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2014/05/01  今日の日本酒  至福千年 (岐阜・花盛酒造)

2014-05-01 21:13:08 |    日本酒


9
年熟成の純米酒「至福千年(岐阜・花盛酒造)」を飲んでみた。
今年の蔵開きで入手したものだ。

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スペックは、
酒米 玉栄(滋賀県産)100
精米割合60
製造年月日 平成263
価格 720ml 13501800ml 2700
平成16年の純米酒を氷温冷蔵庫で熟成させたもの。

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飲み方は、常温と熱燗。

常温の印象:
9年熟成だが、色は殆ど着いていない。無色透明に近い。濾過が掛けてあるかも知れない。
立香は、純米の9年熟成なので老香を予想したが、甘い香りと香ばしさと微かな老香の合体したもので複雑な香りだ。全体としては、甘い香りで嫌な印象は無い。
口に含むと、意外にスッキリした入り口で、まず甘みを感じる。次にトロリとした舌触りとふくらみがあり味の厚みがある。次は、辛味は浮かないが、味がぎっしりと詰まっている感じで芯を感じる。含み香は甘い香と香ばしい香。中盤以降は熟成酒らしく、切れが良く後口も癖がない。

熱燗の印象:
常温では、中盤の味の厚みに芯があり、固さとも感じられたので、熱燗にしてみた。

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立ち香は、甘さと香ばしさが表に出て、老香はほとんど感じなくなる。
口に含むと、甘い入り口の後、直ぐに厚みのある旨味を感じる。常温で感じた次のトロリ感が減り、スッキリとした印象が強くなる。中盤は辛味が表に出て切れが良くなる。後口の良さは熟成酒の良さを感じさせる。

全体の印象としては、純米の9年熟成にしては老香がなく、甘さと香ばしさの複雑な香りがある。透明感のある味の厚みがあり中盤以降はスッキリと切れも良い。後口は長期熟成酒らしい切れがある。
常温は、トロリとした舌触りがあり、味の厚みがしっかりとあるので肉とか味噌とかコッテリとした肴が合いそうだ。
熱燗は、長期熟成酒の切れの良さが感じられ、肴は選ばなさそうな印象だ。
旨い酒を飲みたい人は、熱燗がお薦めだ。

長期熟成酒は、高価なものも多くあるが、この酒は10年近い熟成酒にも関わらず、1350円(720ml)とバーゲン価格と言っても良い。
嫌な立香もなく常温でも燗でも飲めるので、コストパーフォーマンスが良い。


【データ】

花盛酒造株式会社
岐阜県加茂郡八百津町八百津4091
Tel, 0574-43-0016
Fax, 0574-43-1120
メール
hanamori@siren.ocn.ne.jp



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2014/02/27  本醸造 農口 無濾過生原酒

2014-02-27 23:10:00 |    日本酒


農口杜氏のカムバックについては24日の記事に書いたばかりだ。

山中温泉の散歩中、こだわりの酒屋に入り、利き酒を楽しんだが、思いがけず農口杜氏の新ブランド「農口」を入手することが出来た。

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店内で利き酒をしている時、常きげんの升升半升瓶の横に、農口杜氏の写真入りパネルが展示されていた。

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担当の女性に、農口杜氏のカムバックの話をして、農口酒造の商品の取扱を尋ねてみた。

思いがけない返事が帰ってきた。
取引があり、本醸造の在庫があるとのこと。

購入できるのか聞くと、出来るとのこと。
犬も歩けば棒に当たるとはこのこと。
欣喜雀躍して4合瓶を購入した。

4
合瓶はこれが最後の1本とのこと。
幸運だった。
価格は、1260円でプレミヤ無しだ。

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スペックは、
酒米は、国産米。
精白歩合は、ホームページでは65%となっているが、ラベルでは60%とされている。
度数17度以上18度未満。
2014
2月の新酒だ。


まだ開栓していないが、利いてみての印象は、その時点で追記しよう。


2
27日現在で、この酒の4合瓶は無いが、1升瓶は5本の在庫があるとの事だった。
関心のある人は、照会してみたらどうだろうか。

加賀地酒蔵(辻酒販)
922-0129 石川県加賀市山中温泉南町ロ83-1
TEL:0761-78-3333
FAX:0761-78-2482

HP
http://tsujishuhan.com/



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2013/11/23  新米新酒ふなぐち菊水一番しぼり 9年熟成酒

2013-11-23 23:50:00 |    日本酒


日本酒に詳しい方は、表題の「新米新酒ふなぐち菊水一番しぼり 9年熟成酒」を見て、そんなものがある訳無いと気づかれただろう。

缶入り200mlの菊水ふなぐち。
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缶の底には製造日が記載されている。
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我が家の冷蔵庫の中で9年間囲われ、開封の時を待っていたものだ。

この商品のコンセプトは名前から判る様に、フレッシュさだ。
今年採れた新米を使って新酒を造り、ふなくちで詰めた生の原酒なので、ピチピチとしたフレッシュ感を楽しんでもらおうというのが蔵元の考えだ。

これを何故、9年間も囲ったのか?
答えは単純に好奇心。
缶の熟成はどうなるのかという好奇心である。
通常、消費者が囲うのは瓶で冷蔵庫だが、缶は熟成に向くのか。
新酒の生酒ならば変化が最も判りやすいだろうというのだ。


さて、開けて見るまではどうなっているか予想はできない。
プルトップの封を切ると、プシュというような小さな音がする。

特に変な様子はなく、かなり行けそうな感じだ。

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缶の底を覗くと、わずかに濁りがあるように見える。

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グラスの注いでみると、濁りはなく、透明。
濁りのように見えたのは、缶の塗装によるものだった。
色は薄い黄色というか麹本来の色をしている。

立ち香は、軽いものだが魚の干し物(乾物やスルメ)のような香りがする。
この香りは、つい最近感じたものと似ていることを思い出した。

11
15日の酒の会で利いた「菊姫 大吟醸」の香りだ。
老香と熟香が交じり合っておでんのような香りがした。
後で、商品説明を確認すると
「さらに長期熟成させることにより独特の吟老ね香、まろやかな風味と舌触りが増すのです。」となっている。
菊姫では、この香りのことを「吟老ね香」と呼んでいる。

口に含むと、まず甘さを感じ、次にフルーティーな酸が口に膨らむ。辛味が続くがスピード感のある辛味で切れがある。
含み香は、立ち香の吟老ね香ではなく、甘い酸のフルーティな香りを感じる。
後半は、酸・辛味・苦・渋が一体となった旨味のある複雑な味で厚みを感じる。
後口は長期熟成酒らしく切れがよく、癖はない。残香も甘い酸の仄かな香りだ。

9
年間寝ていたにも関わらず、新酒らしい元気一杯躍動感を感じさせる味わいで、フルーティーさと熟成が同居している不思議さを感じさせる。味も全て揃って味の厚みもあり、枯れた老熟というものは感じさせない活発さがある。

全体の印象として、缶による熟成は非常に良いと感じた。
熟成酒は、酸がこなれすぎて中抜けのへこたれたものに出逢うこともあるが、冷蔵・遮光の管理に問題があるものだろう。
家庭用冷蔵庫とはいえ、冷蔵しておけば、缶による遮光は完璧で、鮮度が保たれるようだ。


家庭用冷蔵庫による缶熟成という方法は、いけるという結論が出た実験結果だった。

もう一つ、紙パックによる実験は続行中だが、その内封を切って実験結果を確認しよう。


【デ-タ】

缶による新酒生原酒の熟成実験の成功に、一人悦に入っていたのだが、やはり世界は広かった。
菊水ふなぐちのデータを確認するために菊水のHPに行ったところ、熟成酒が既に製品化され販売されていた。

もの先達がいるもので、菊水ふなぐちを熟成させると美味しいという声を蔵聞き商品化したとのことだ。

現在では、ふなぐちシリーズは、4種類あるそうだ。
熟成と薫香を今回の実験結果と照らしあわせてみたい。
熟成は、この実験結果に近いと思われるが、吟醸造りなので違った味わいではないかと思う。


(1)
ふなぐち菊水一番しぼり
40年前発売された原点。
clip_image012
●本醸造 生原酒 ●コクのある旨口 ●精米歩合70% ●アルコール19


(2)
熟成ふなぐち菊水一番しぼり
精米55%の吟醸造りの生原酒。
clip_image014
●吟醸 生原酒 ●まろやかな旨口 ●精米歩合55% ●アルコール19


(3)
新米新酒ふなぐち菊水一番しぼり 【秋季限定】
今回実験したもの。今は外装が緑の缶に変わっている。

clip_image016

収穫したての新米で仕込みました。
初物しぼりの若々しい味わいは緑の缶が目印です。
clip_image018
今年収穫した新米だけを使って醸す、秋季限定の「ふなぐち」です。できたて新酒のみずみずしさと軽やかな味わい。この時期ならではの香味をお楽しみいただけます。

お酒の特徴
●本醸造 生原酒 ●さわやかな旨口 ●精米歩合70% ●アルコール19

容量・参考価格
容量     参考価格
200ml
          300
720ml 1200


※価格は参考価格であり、販売店様が自主的に設定される販売価格を拘束するものではありません。


(4)
薫香ふなぐち菊水一番しぼり
醸造用アルコール添加ではなく、酒粕由来の米焼酎を添加したもの。
clip_image020
●普通酒 ●コクのある旨口 ●精米歩合70% ●アルコール19




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2013/01/01  今年の年酒  京ひな 一刀両断 純米大吟醸超辛口

2013-01-01 23:35:00 |    日本酒


今年の年酒は、5年物熟成酒「一刀両断」。
我が家の冷蔵庫で、冷蔵庫の管理者の冷たい視線にも冷やされて、熟成を進めてきた大吟醸の超辛口。

『季語の年酒(ねんしゅ、としざけ)とは、新年を祝う酒や屠蘇(とそ)。また、年始の客にすすめる酒。』(三省堂大辞林)

まずは、参会者一同でドイツの貴腐ワインで乾杯の後、超辛口の日本酒を登場させた。

ワインもほぼ同年数常温の暗闇の中で熟成させたもの。
寝かせておいたのでコルクから滲みだしたワインが栓回りを黒く変色させていた。
色も進み、舌触りも丸くトロリとした印象で、甘く酸味はしっかりとフルーティーで、梅酒に似た感じだ。
熟成の良さは、中盤以降の雑味の無さ、キレの良さに現れていた。

clip_image001
甘いワインの後に、超辛口の一刀両断。
両者の対比によって、より一刀両断の目指している世界が実感でき、良い取り合わせだった。

clip_image002
スペックは、
【原料米】 山田錦
【精米歩合】 50
【酸度】 1.2
【アミノ酸度】
0.7
【日本酒度】
+7
【度数】15
16
【使用酵母】協会9

【醪日数45日】

【製造日】平成20年1月

発酵期間を長く、糖分をしっかりと絞りきって、透明感を上げているのが一刀両断のコンセプトなのだろう。
蔵元は「一太刀ですぱっと切れるような冴えを魅せる超辛口」と表現している。
一般的に、四国の酒は大酒飲みの土地柄、辛口で飲み飽きしない酒が多いが、この一刀両断はその面を突き詰めたものだ。

家庭用冷蔵庫での5年の熟成は心配な面もあったが、結果は良かった。
入り口は舌触りが滑らかで、スッキリとしているため甘い印象すら感じる。甘口じゃないといった参会者もいた程だ。
中盤のふくらみがあり痩せた感じはなく5年の歳月を感じさせない、冴えがある。中盤からの雑味の無さ、キレの良さはワインと同じだ。5年という歳月がもたらす雑味の無さは歳月でしか買えないものだ。
5年囲う対象としては、吹毛剣より一刀両断のほうが適しているかもしれない。

飲み口の良いこの酒は、食中酒としても肴の邪魔をせず、スイスイと参会者の喉を早々と通り抜けてしまった。

【データ】
酒六酒造株式会社
創業:  大正9年(1920年)
創業者:            酒井繁一郎
代表者:            代表取締役 酒井八代子
住所:  791-3301 愛媛県喜多郡内子町内子3279-1
TEL
  0893-44-3054
FAX
  0893-44-3140
URL
http://www.sakaroku-syuzo.co.jp/




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2012/02/023  鯛のマース煮と天領古酒大吟醸

2012-02-23 22:29:06 |    日本酒


先月の石垣島旅行で食べたタマン(フエフキダイ)のマース煮が美味しかったので真似してみた。

沖縄は、豚肉・牛肉も食べるが、本当に好きなのは魚だろう。
食べ方は、バター焼き・煮付け・マース煮・から揚げが代表的だ。

沖縄の魚は、南国の魚なので、脂分が少ないものが多い。だから味わいも淡白なものになる。
料理法は、その淡白さを補うためか、バター焼きはコッテリとしたバターを加えるし、煮付けは砂糖醤油の味付けだ、から揚げ・天ぷらも油を使う。
マース煮は最も上品な味わいの料理になる。

マースは沖縄の言葉で塩の事だ。だからマース煮とは塩で煮る煮物だ。
塩で煮る料理法は、本土ではあまり行われないので、はじめて聞いた時は美味しいのだろうかと思うが、これが美味しいのだ。
淡白な白身の魚を、塩と出汁だけで煮るのだが、淡白な魚が淡白さを生かして上品な味わいになる。
癖が無いので、酒の肴としても適性がある。
沖縄では、勿論泡盛に合わせるが、泡盛の微妙な味わいを消すこと無く味を合わせることができる肴だ。日本酒でも無濾過生原酒などより精白度の高い吟醸酒に合わせることができる。

今日は、魚は鯛、酒は天領の大吟醸古酒に決めた。

【マース煮】

マース煮の作り方も色々あるようだ。
一般的には、魚の臭い消しに生姜を使う事が多いが、先日の石垣島ではなんとニンニクを使っていた。
注文したマース煮を食べると、美味しい、味にコクがあり深みがあるただの塩ではない。なんだろうと思ったがすぐには思いつかなかった。だが、よく知っている旨さだ。すぐにニンニクだと判った。マース煮にニンニクの取り合わせは意外だった。
帰りに店の人に確認すると、そうだと言われた。

今日の作り方は、真似だが、自己流でもある。
・材料は、鯛、石垣の塩、ニンニク、鰹だし、日本酒
・だしは、ニンニクのおろしと刻み、石垣の塩を煮る。
・鯛は、表面を水でサッと水に流して臭みを流す。
・出汁に入れて中火で煮る。
・煮たって来たら弱火にして、5分~10分煮る。

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出来上がりはこれだ。

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鯛は、刺身は勿論、塩焼き・煮付けなどどんな料理法でも美味しい。
マース煮でも美味しい。
鯛の淡白な上品さが、あっさりとした塩味で生かされ、ニンニクにより味に厚みが出る。

【天領古酒 大吟醸】

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この天領古酒は、200712月製造のもの。
家庭用の冷蔵庫で4年囲ってあったものだ。
出荷段階で3年熟成されているので、搾られて7年の古酒に相当する。

立香は、老香や熟香は一切なし、はっきりとした吟醸香ではないが仄かに甘い香りがする。
口に含むと甘い入り口の後、滑らかな舌触りと丸みを感じる。古酒らしい入り口だ。ふくらみは大きくなく酸はスッキリとして透明感がある。味のバランスはよく偏りはなく、穏やかな上品さを感じる。
中盤以降もトロリとした舌触りが続くき、後半にかけてスッキリとした感じで切れる。
後口は辛味系だがピリ辛ではなくスッキリと切れる辛味だ。
残香も立香と同じ仄かに甘い香り。

4
年前に飲んだ時も美味しかったが、7年の古酒でもまだ峠を越していなくて、シャビ付きとかヘタレとかは感じない。
老香の立つ古酒が嫌いな人、滑らかな舌触りと切れを求めたい人にはお薦めだ。




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2010/12/31 2010年日本酒(その1) 回顧編

2010-12-31 22:30:03 |    日本酒


2010年を振り返ることは多いが、日本酒の回顧をまとめて整理しておかねば、新年の日本酒が美味しくない。


大きく見ると今年は、中だるみの年だった。春までは常きげんの鹿野酒造蔵見学を筆頭に快調だった。
 しかし、夏の猛暑にはまいってしまった。日本酒を飲もうとする気が起きなくて飲めなくなってしまった。
 しかし、秋が深まるに連れて日本酒が美味しくなってきた。
 矢張り酒の季語が多く秋の季語であるように、日本酒は秋からなのだと思い知らされた。


今年も、日本酒の会、イベント、蔵開放などの機会に数多くの日本酒を利くことができ、幸せであった。
 日本酒を飲むことが出来るのは、酒米を栽培する農家、酒を醸す杜氏、酒を市場に出す蔵元、消費者に販売する酒販店、客に酒肴を提供する飲みどころの存在があってこそである。
 日本酒に関係する関係者の繋がりがなくては日本酒を飲むことはできない。
 関係者のおかげで美味しい日本酒を飲むことが出来る。


日本酒の会sake nagoya、岐阜の酒の中島屋、春日井の酒のうかいの日本酒の会は基盤であった、そのおかげでどれほどの銘酒を楽しむ機会があったことか。
 酒蔵訪問では、常きげんの鹿野酒造、美濃天狗の林酒造、
三千盛、小左衛門の中島醸造、五条川桜の勲碧、鷹の夢の山盛酒造、千古乃岩、氷見の高澤酒造にお世話になった。
 飲みどころは、挙げきれないが、旬菜どころかのう、ざっぶん、楮、...ごく最近には地炉の間、ジェニー・スーにお世話になった。


特に、記憶に残る出来事は以下の2つだ。
1.常きげんの鹿野酒造の蔵見学
 大吟醸の袋搾りの段階であるにもかかわらず、蔵内を見せていただき、袋搾りの状況も見せていただいた鹿野社長の心の広さには感心させられた。
 また、NHKのプロフェッショナルで取り上げた農口杜氏から親しくお話をお聞きすることができたのは幸運だった。
 農口杜氏の最後の造りだとNHKが報じていたが、誰もそうあって欲しいと思わないはずだ。


これについては、次の記事に書いた。
2010/02/20 日本酒の会合宿1日目(その2)-常きげん(鹿野酒造)
http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/e/1db70a357bcf6fe357dfe9b69d32a9b7



2.磯自慢・中取り純米大吟醸35を楽しむ会
入手が殆ど困難な磯自慢の中取り純米大吟醸35を10年分揃えて垂直飲みをする夢のような企画である。
 加えて、この会には、磯自慢の寺岡洋司社長が焼津から参加していただいたこともあった。
 蔵見学にお邪魔した時もそうだったが寺岡社長は自信にあふれた方だが全く嫌味のない人だった。この社長にしてこの銘酒ありである。
 磯自慢 酒友 Adagio Premium 熟成 中取り純米大吟醸35のイタリア製のボトルが今後使われなくなるという話は興味深い話だった。


これについては、以下に記事に書いた。
2010/05/09 夢の企画「磯自慢・中取り純米大吟醸35を楽しむ会」(その1)
http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/e/ef8aaa3ae02fc685cde99b25e2ac48c2


一年を振り返り、数多くの銘酒を楽しむ機会に巡り会えたのは、 企画をして、主催して、もてなしていただいたすべての関係者に感謝するのみである。



【印象に残る酒】
数多くの銘酒を、利く機会があり、造られた杜氏の思いを受け止めながら飲ませていただいた。
 その中で筆者の印象に残った銘柄を、例示的に記載する。勿論、美味しい酒は他にも多くあるので、これらは極一部に過ぎない。
 理由は単純、すべてを書くのは大変だし、読まされるのも大変だ。


()内の番号は順位を表すものではなく、単なる番号である(念の為)。


A.大吟醸
(1)美濃天狗 大吟醸 鼻高々
  立ち香はあまり感じないが、スッキリとした入り口の後、丸いトロリとした舌触りがある。甘味の下に辛味も潜に締めている。
 大吟醸らしい広がりのある世界を感じる。中盤からの引きは速く切れが良い。大吟醸らしい品の良い世界である。
 美濃天狗は実力があるのに、飲まれる機会が少なく、過小評価されているように感じる。


(2)神の井 大吟醸 金賞受賞酒
  甘い入り口の後、酸の膨らみがある。丸い舌触りだが、キレは良い。後口も良い。
 愛知の大吟醸は、勲碧もよいが、今年は神の井が良かった。
神の井ももっと評判になって良い酒だ。


(3)日本泉 大吟醸 ふなくちとり
  やや甘い入り口。スッキリとしているが厚みのある味。味のバランスも良く膨らみもある。軽い大吟醸ではなく厚みのある大吟醸。聞くと原酒であった。
スレンダーな大吟醸は多いが、豊満な大吟醸は少ないので其処に存在理由がある。スレンダーと豊満と飲み比べも面白い。
 今年の岐阜の酒で最も変化率が大きかったのが日本泉。


B.純米大吟醸
(1) 万齢 純米大吟醸 中汲み おりがらみ 無濾過生原酒
  霞酒である。立ち香はあまり感じない。スッキリとしたバランスの取れた穏やかな世界。まったりとした膨らみがある。残香に仄かな醪の香。花見のお酒として適している。


(2) 御代櫻 三十四才の春 純米大吟醸
  立ち香は吟醸香高く、仄かに甘い入り口。まったりとしたふくらみのあるバランスの取れた味。透明感もあり、舌触り丸く良い。後半やや辛味・苦味があらわれるが気にならない程度で後口良い。石川の酒に通じるものを感じた。


(3) 日下無双 純米大吟醸
  仄かな立香。丸い舌触りの軽く甘い入り口。膨らみがあり、味のバランスが良い。含み香も快い。後半も切れが良い。透明感があり、上品さを感じる。


C.純米吟醸・純米
 (1) 鏡山 特別純米 備前雄町 無濾過生原酒
  立ち香は甘い香り。甘い入り口、吟醸香の含み香。トロリとした舌触りバランスの取れた味わい。始めから終わりまで吟醸香がついて回る。後口良い。


 (2) 東龍 純米吟醸 蔵
 同じ東龍の双白鷺の後に飲んだが、同じような味のバランスの良さと膨らみを感じた。後半の苦味の浮きもなく後口も癖が無く良かった。今年の蔵は一段と良い感じだった。


(3)小左衛門 純米吟醸 備前雄町 21BY
 立香はお菓子のような立香だが何の香か思い出せない。スッキリとした入り口。フルーティな酸の後甘味が続く。舌触り丸い。渋み。苦味なく、爽やかな味わい。後口も癖がなく良い。
 雄町は山田錦に比べ膨らみ・透明感が足りないと感じることが多いが、この小左衛門の雄町は、不足感がなかった。


(4) 屋守(おくのかみ) 純米 瓶火入 ひやおろし
  立香は感じない。透明なフルーティな酸。口中に含み香が広がる。広がりは大きくはないが、香りが最後まで良い。


(5) 竹葉 吟醸仕込み純米酒
 立ち過ぎない軽やかな香りの後、透明感のある膨らみが口に広がる。中に小さく纏まらない、豊かな大きな世界である。味のバランスもよく、後口も良い。単独でも、肴と一緒でもいける万能型の酒だ。
 常きげんと並びゆったりとした膨らみを感じさせ、石川県の味・風格を感じさせる代表的な酒と思う。
 五百万石を55%まで磨いているので、スペックは純米吟醸だが、吟醸仕込純米酒と表示されている。酒販店では常温で保管されることが多いと思われるが、香りも良い酒なので冷蔵保管をして欲しいものだ。



D.本醸造
 常きげん 本醸造
常きげんは、山廃仕込大吟醸も大吟醸全国新酒品評会金賞受賞酒も当然ながら素晴らしい物だったが、敢えて本醸造を挙げておきたい。
 本醸造の酒は、添加アルコールの存在を感じさせるとドロリとした透明感のない甘さがあることが多いが、常きげんの本醸造は、アルコール添加を感じさせないスムーズさ滑らかさがある。味の厚み豊かさがあるが嫌味はなく、晩酌で飲む酒として格好の酒である。
 鹿野酒造の応接室の利き酒コーナーで農口杜氏のお話をお聞きした。杜氏は、飲む人の嗜好はそれぞれで良く、お酒も色々あって良い、この中にきっと気に入っていただけるお酒があるはずですと、ずらりと並んだ利き猪口を見ながら話されたのを思い出す。


E.古酒・熟成酒
(1) 磯自慢・中取り純米大吟醸35 2004年
 仄かな立香。丸いバランスのとれた味。酸はフルーティーで軽い。後口も爽やかで良い。
 10年分垂直で2004年が最も良いと思った。


(2) 磯自慢 酒友 Adagio Premium 熟成 中取り純米大吟醸35
 甘い仄かな立香。酸味系だが軽いフルーティな味わい。軽く透明感があるが旨みもある。中盤からのキレ良い。後口も雑味が無く余韻がある。"
 ジェロボアム・ボトルは今後出荷されることはない。


 (1)、(2)は今後再び飲む機会は訪れないと思われる一期一会の銘酒だ。



(3) 蓬莱泉 純米大吟醸 空
  穏やかな立香、ほんのりと甘い入り口のあとバランスのとれた偏りのない味わいが広がる。舌触りの丸さと後口の綺麗さに上級酒の風格を感じる。
 今更ながらの空だが、いつ飲んでも上級酒の風格を感じる。遠山杜氏が話しておられた「再現性のある造り」の言葉を思い出す安定感がある。出荷段階で熟成されているが、2年前の空も味が増々乗り良かった。


(4) 若戎 貴醸酒 純米仕込み <1991年瓶詰>
酒の中島屋で常温熟成で20年囲われた物。同じ商品が2本あったが熟成の経路が違うためか、それぞれが別の世界を持っていた。


A:香りよい上品な香りがある老香は全く無い。口に含むとふんわりと浮き上がるように広がる。後口は消えるような余韻。貴醸酒の超熟成酒は2度目だが、いずれも気高いものを感じる。20年の熟成を1週間で完成する科学的方法が見つからないかと夢想する世界がある。
B:もう一方の個体。Aに比べ香りは落ち着く。紹興酒の陳年のような香である。膨らまずスッキリと終わる。


比べればAの方が良いが、20年の熟成の時を感じさせる個体差だった。


(5) 三井の寿 穀良都 山廃純米 H16BY
 立香に老香は無く、丸い舌触り。酸の膨らみあるが中盤からキレが早く後口が良い。後口はピリ辛系。
 同時に飲み比べた18BYとはかなり違いがあり18BYの2年後の延長線にあるとは思い難い味わいだった。


F.その他
 三千盛 超特


三千盛は、独自の道を行く酒であると思う。A~Eのジャンルに区分けすることが難しいが、回顧からは外せないのでFで特に記載することとした。


三千盛は明確な考えに基づいて、造られ世に送り出され、それがその儘受け入れられている見事な酒である。
 三千盛主人の言葉によれば、それは「水口の酒」である。
『西洋料理は料理が主であって、ワインは従、すなわちワインは料理の味を引き立てるためのもの。それに反して日本酒は酒が主で、料理は酒を引き立てるためのものであるといわれますが、私はこの考え方にこだわっていません。料理の味を引き立てる日本酒があってもよいし、刺身に合う酒、鰻に合う酒、天ぷらに合う酒等いろいろなタイプの酒があるべきだと考えています。その点「水口」の酒は刺身にも、鰻にも、天ぷらにでも何でも合って、しかもその味を引き立てる。そういうお酒です。「水口」の酒というと金魚酒みたいで、キャッチフレーズにすることも出来ないので、辛口といっておりますが、三千盛のねらいは、まさしくこの「水口」の酒なのです。』


三千盛の酒は、個人の推測だが、鑑評会で金賞を狙って造ることは考えていないだろうし、ブラインドの利き比べの中に入っても第1位になることはないように思われる。
 だが、筆者は鰻屋でも縄のれんの味噌おでんでも三千盛を注文し、燗にして楽しませてもらっている。
 うなぎの旨さも赤味噌おでんの旨さも三千盛は邪魔せず、支えて尚その後、酒の旨さを忘れさせない出処進退がある。


超特は精米歩合:45% だから大吟醸の規格だが大吟醸として売られてはいない。価格も2810円(税込)で安い。
 原料米は美山錦ともいわれるが、蔵の紹介記事にも酒米の表示がないのでよく解らないが、酒米を巧く使って造ることで価格がリーズナブルかもしれない。
 消費者としては、旨い酒であれば安いほうが良いのだから重要なことだ。


酒は飲むが、日本酒はそれ程でもない人を案内して、蔵開きに参加した時、皆異口同音に飲みやすい酒だと言った。飲み飽きしないのだ。
 買い求めた超特2本は、帰るときには空になっていた。


三千盛の酒は、ある意味では危険だ。
それは飲み飽きしないからだ。
自己抑制ができない人は、三千盛は飲むべきではない。
 今、名古屋で話題の日本酒の会の主催者N氏が若く、酒に溺れていた頃、毎日1升瓶を空にしていたそうだ。それが三千盛だったそうだ。
 香りプンプン、酸が辛味が渋味が苦味が押しこんでくるような酒は飲み続けられるものではない。水口の三千盛は飲むことが出来るのだろう。
 三千盛は、肴を味わい酒を陶然の気の下に余裕を持って楽しむ穏やかな紳士淑女に相応しい酒。つまり自己抑制が出来る大人の酒なのだと言える。



来る2011年は、どんな酒に巡り逢えるだろう。
今年の食米は良くなかったが、酒米はどうだったのだろう。
各蔵で今、難しい課題を乗り越えているだろうから良い酒がきっと搾られるだろう。
 その酒が楽しみである。



 

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2010/12/31 2010年日本酒(その2) 「愛と評価」編

2010-12-31 22:20:24 |    日本酒


「愛と評価」と言う表題は、内容が取りにくいが、結構、根の深い根源的なまた普遍的な問題を含んでいる。
 うるさい話が嫌いな人は読まない方が良いかも知れない。


日本酒に関して気になる話を耳にした。
驚くと同時に呆れたのだが、日本酒を愛する一消費者として考えてしまったので、自分の考えを記事にして2010年の日本酒を締めくくりたい。


その話は、この秋頃のことだったらしいが、筆者はその後伝聞として聞いた話なので、事実がどのようなものだったか明確には承知していない。
 その場に居合わせてもしないし、関係者から直接話しを聞いたわけでもない。だから、事実の問題よりも話の本質・理論的側面を問題としているのである。


日本酒の会sake nagoyaという日本酒の会がある。
筆者も毎月の定例会に参加して、日本酒を楽しみ勉強させてもらっているかけがえのない会である。


定例会は、毎月1回第3金曜日に定席「旬菜どころかのう」で開催されている。
 会と言っても毎月の会費納入義務が課せられているわけではなく、当日に会費さえ支払えば誰でも参加できる極めてオープンな会である。


申し込みは先着順で新規参加者も常連さんも同じ取扱いで、人気銘柄が登場する月には、直ぐ満席になり常連さんが締め切りの憂き目を見ることも多い、非常に平等な運営が行われている。
 締め出された常連にしてみれば、平等すぎる・悪平等だとの気持ちもあるだろうが、そんな声を出さない程常連さんは紳士・淑女揃いのようだ。


この会の特色は、当日の参加者全員による日本酒のブラインド評価を行うことだ。
 出品酒(約12銘柄)をブラインド評価のため番号のみ書かれたデキャンターから猪口に注いで、10点満点で評価する。
 日本酒を飲み込んだベテラン・マニアも初心者も同じ10点満点で評価する、これも平等だ。
 今利いている酒の銘柄が何なのかは、酒の瓶からデキャンターに移している幹事以外は誰も知らない。有名銘柄とかスペックとか価格とか何も情報はない。自分の舌が頼るべき唯一もので、他に何も助けてくれるものはない。
 ここでの評価基準は個人の嗜好に拠るもので、要するに好き嫌いである。
 個人の評価シートは、その場で回収され集計され、当日の参加者全員でのブラインド評価結果が公表される。


1位から最下位まで順番にブラインドが外され、評価結果と銘柄が白日の元にさらされる。
 有名な酒が意外にも下位だったりすることもある。自分が最下位に評価した酒が1位だったりすることもある。


参加者全員の評価結果という事実の持つ重みが表面化し実感できるスリリングな瞬間である。
 この全員の評価結果は、後日日本酒の会のサイトにアップされる。


全員による評価が終われば、その後は普通の宴会である。
 銘柄の書かれた瓶から、お猪口に注いで飲むことが出来る。
全体の評価と自分の評価と銘柄を見ながら、色々な感慨を込めて再び利くことになる。



これでこの記事の事前準備が終り、ここからが「日本酒 愛と評価」の本論である。


問題は、全員の評価の結果の公表にある。


この秋頃、こんな話が日本酒の会にあったそうだ。
1.評価を公表するのは良くない。失礼だ。
2.参加者が評価を強制させられている。
 直接、話を聞いたわけではないので細かい趣旨とかニュアンスは判らないが要約すれば以上の表現になる。


筆者は、全く違った見解を持っているので参加者の一人の声として記事にするのが、この「日本酒 愛と評価」である。


まず、1の問題について。
論点は2つある。
1つは、評価の公表の持つ意味。
2つは、参加者自身の嗜好の自覚


1.【評価の公表の意味】
参加者全員の評価結果を公表するのは、発売している蔵元・造っている杜氏にも大きな意味がある。失礼どころか感謝されるべきことと考える。


上位になった銘柄は特段論じる必要はないが、問題は下位になった場合である。
 つまりこれを悪評と考えるべきなのかという問題である。
伝聞では、この話は、居酒屋の店主が蔵元から聞いた内容が話として伝えられたとのことだが、営業妨害だ・民事訴訟を起こし損害賠償を請求するという穏やかでない話もあったそうだ。


どの蔵元・杜氏も自分が販売・醸造している酒は可愛い。その酒が最下位に評価されたりすれば、悲しいことは確かだ。
 ただ、それで公表してほしくないと本当に思うのだろうか、蔵元から日本酒の会に苦情が入ったということは聞かないし、滋賀県の酒特集の定例会にはわざわざ滋賀から蔵元・杜氏さん達が定例会まで足を運び参加され、評価結果に一喜一憂されておられた。


日本酒の会の毎月の参加者は50名程だが、前に書いたように全くの初心者から全国の銘柄のスペックを諳んじ印象を語れるほど飲み込んだ剛の者まで参加している。
 言い換えれば、母数は少ないが日本酒に関心がある日本人による評価の統計データなのである。


世の中に日本酒を楽しむ会は数多いが、特定の酒屋・料理店・居酒屋などが主催するものが多く、内容は扱っている銘柄とか提供している銘柄を楽しむ企画である。
 日本酒の会のように特定のテーマのもとに毎月10銘柄以上をブラインド評価をし、公表している会は寡聞にして聞かない。


蔵元・杜氏にとってわが子のように可愛い酒が、一般消費者にどのように飲まれたかは当然知りたいことのはずだ。
 もし蔵元・杜氏がそのように考えないとしたら、物事の道理・本質をしらないボンボン・偏屈職人でしかない。
 造られ・販売される酒は一点物の芸術作品とは異なる。消費者が身銭を出して買ってくれてなんぼのものである。
 いくら造っても消費者が買ってくれなければ、死蔵品になり商売にならないのは明白だ。こんな道理が判らない様な蔵では将来は暗いとしかいい様がない。


有名な経済学者のケインズの言葉に「美人投票」がある。
ケインズは自分自身が株で成功した実利にも強い学者であったが、空理空論家ではなく現実をよく見ていた。
 投資行動の原則は、美人投票の結果を当てるようなものである。自分が美人と思っても大多数の人が美人と思わなければ投資にならないのである。
 なぜならば、独りよがりの投資は、他の人の評価を得られず、投資のリターンが得られない。言い換えれば、自分が良い酒だと思っても、消費者が良いと思い金を払ってくれなければ売れないのである。
 金を払って飲んでくれる多くの消費者の評価が得られるような酒を出さなければ商売にはならず、趣味で終わってしまう。
 つまり商品設計の段階から消費者の好む酒を造り・販売することが業として酒を作り続けることの要件である。


評価の問題は難しい。
消費者意識の発達したアメリカには、Consumer Reportsという月刊誌がある。
 この雑誌は、非営利の消費者組織であるコンスーマーズ・ユニオン(Consumers Union)が1936年から発行しているものだがアメリカの消費者行動に大きな影響を与えているそうだ。


日本酒の評価にかんしては、最も権威があるのは全国新酒鑑評会だが、これは市販酒ではないし、評価者もプロが多く、一般消費者ではない。
 だから、この新酒鑑評会に参加しない蔵もあるようだ。


日本でも日本酒に関するConsumer Reportsのような雑誌があれば、製造・販売者も消費者も便利だが、そのような雑誌は存在しない。dancyuの特集のようなものは存在するが、選択の基準が明確でないし、透明性も不明だ。


このような環境の中で、日本酒の会の参加者による評価・公表は、大袈裟に言えば機能としてはConsumer Reportsと同じなのである。
 特定の蔵・酒屋と全く関係の無い一般消費者により行われる厳密なブラインド評価結果である。
 あるテーブルの参加者たちは、評価の条件を同じにするために、利き酒が終わるまで料理に手をつけない。食べることにより利き酒が影響されることを防ぐためだ。それくらい真剣に酒に向き合い厳格に禁欲的に利いて評価している。それは日本酒への愛からである。
 だから全体の評価結果は、全国の酒好きの消費者の参考になるし、心ある道理の判った蔵元・杜氏にも参考になる、本当は金を出しても手に入れたいデータがフリーで手に入るのである。


参加者全員の評価を公表することは、蔵元・杜氏に失礼でも何でも無く有益なことなのだ。


有価証券市場では、価格操作の目的で悪意を持って人を騙す目的で噂を流すことがあるが、これは法律で禁じられている。いわゆる風説の流布である。
 日本酒の愛好者が、どのように評価したかを公表したからと言って、それは悪評ではない。愛による評価なのだ。その結果を公表したからと言って、名誉毀損・損害賠償の訴訟が成り立つはずもない。



2.【嗜好の自覚】
伝聞では、その蔵の関係者は、判りもしない素人が酒を評価して何が解るのかと言ったそうだ。


本当の話かどうか分からないが本当だとすれば視野の狭い人だ。
ブラインド評価の持つ事実は大きな意味を持つ。全体評価と自分の評価との間を行ったり来たりすることにより、酒だけでは無く自分と言う厄介な妄念を客観的に見て、公と私を自覚することも出来る。
 己を知ることは、社会生活でも宗教でも株式投資でも世の中の多くのことで必要とされることだ。


ブラインド評価をしている時は、全く情報がない。自分が好きな酒に高得点を与えようにも、それが入っているかどうかも入っていても何番なのかも判らないので、高得点を与えようがない。
 すべてが終わり公表されたとき、自分が1位にした酒が愛知・岐阜の酒だったりすると嬉しいものだし、もし全体評価でも1位だったりすると我事のように嬉しく感じるものだ。


逆に、好きな銘柄なのに、ブラインド評価のために下位にランクづけしてしまい、そうした自分に驚くこともある。


全体評価と自分の個人的評価とを見比べると、大変勉強になる。
自分の嗜好とは一体何なのか、それを知ることができるのだ。
好き嫌いは子どもでも解るが、自覚することは難しい。


会に出て、同好の士と話をしたり、全体の評価結果と自分の評価結果を比較検討すると、自分の嗜好・好みがあぶり出されてくる。
 嗜好は十人十色、蓼食う虫も好き好きだが、それだけでは自分の嗜好はわからないままだ。
 会に出て様々な銘酒を飲み、人の意見を訊き、全体評価と個人の結果を謙虚に見比べるときに自分が自覚できる。


日本酒の会は、日本酒を愛する人の勉強の場であり、ブラインド評価をして、他の評価と比べてみるとき大きな収穫が得られる。
 愛することは誰でも出来る。しかし他人の目の評価で検証することによって、自分の好きな日本酒への愛が自覚できる。


この意味でブラインド評価と公表は、個人の自覚の鍵と言える。



次に2番目の問題。
「2.参加者が評価を強制させられている。」


この問題は、誤解に基づいている。
参加者も人それぞれであり、色々な考えで参加される。
以前こんなこともあったようだ。
3000円で酒10銘柄と料理が楽しめるのであれば、グループで参加し、宴会をしょうというものだ。
 50名の参加者の中であるグループだけが宴会状態になることは出来ない。
 それは、この会の目指すところを誤解している。
勿論、ブラインド評価が終われば、目隠しを外して、酒を改めて飲むのだから全体が宴会状態になる。
 だが、個人のブラインド評価をするのがこの会の特色なのだ。


ブラインドの目的は、明示されていないが、各人が酒を愛を持って評価し、参加者全体の評価と比べ自分というものを知り、自分と言う妄念を離れて、それぞれの酒の公的な評価を知ることだ。それが自覚というものだ。


この会の参加者は、ある種のリゴリズムを要求される。
目の前に出された肴を横目で睨みながら、ひと通り評価するまでは、公平さの観点から自己を抑制して手をつけない人も参加しているのである。
 勿論、食べながら利いても良いし、そうしている人も多いだろう。どちらにせよと強制されるものではない。
 だが、個人のブラインドの評価はしなければならないのである。
ある酒を評価するということは、その酒に対する愛と責任が必要だ。だがそれは誰から強制されるものではない。そこにリゴリズムが存在する。


酒は楽しく飲むことは論を待たない。気を許した酒友との語らいの宴は楽しい。
 このような宴の機会・場所は数多くある。探せば苦労なく見つけられるはずだ。
 楽しいだけで良いのなら、そのような宴に参加されれば良いのだ。


この会は、ブラインド評価という方法によって、日本酒への理解と愛と自分を自覚する場所なのだ。



2011年も、ブラインドが外された時の驚きと全体評価を聞かされた時の自覚とを楽しみに日本酒への愛を語り合うために、この会に参加するつもりだ。



 

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2009/10/11 今日の晩酌 MINO-KOKU-SAMUROCK

2009-10-11 22:27:16 |    日本酒


今日の晩酌は、小左衛門のサムライプロジェクト第1弾。
先日の美濃里祭で購入したもの。



「MINO-KOKU-SAMUROCK 純米吟醸」
中島醸造(株) 500ml ¥940(税込み)
http://www.minokoku.jp/mi_jyunmai.html



 




純米吟醸
精米歩合: 55%
アルコール濃度: 15.7~16.6%


印象:
まず、冷やで飲んでみる。
立ち香は仄か。甘い入り口、酸のふくらみは無く、スッキリとしている。舌触りは滑らかである、フレッシュな活発さと言うより落ち着いた味わいだが、終盤に近づくにつれて辛味が増し、後口はやや重めに感じる。後口はピリ辛系。


ぬる燗にしてみる。
入り口の甘い印象は減り、酸のふくらみが増す。終盤にかけての辛味は変わらない。
 酸のふくらみが増し、丸い舌触りの後の辛味の押しは食中酒に向いている。
 食事に晩酌するのであれば、燗の方が良さそうだ。


 


 

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2009/02/03 清洲桜醸造「濃姫の里 隠し吟醸」& 紙パック研究

2009-02-03 22:29:57 |    日本酒



日本酒の容器について関心がある。
日本酒の容器と言えば、いまだに一升瓶が中心。
一升瓶でない場合も、四合瓶その他のガラス容器が多い。
ガラス以外は少数である。缶入りと紙パック位である。


筆者は、蔵が一升瓶でしか供給しないのは職務怠慢だと考えている。これは、業務用の容器であって家庭では甚だ扱いにくい。大きすぎて冷蔵庫に入れられない。1本買うと飲み続けなければならない。


高級酒の小容量のものを供給して欲しいが、まだ殆ど見かけない。
小容量のものはワンカップ大関タイプのものが多い。
一升瓶もワンカップもガラスであり、取り扱いにくい点は共通している。
 割れる、かさばる、光を通すのは取り扱いにくい。


その点紙パックは取扱が楽である。
①割れないので鞄に放り込んでおいても安心、冷凍庫もOKだろう。
②四角いのでかさばらず、積むことが出来るので冷蔵庫のスペースファクターがよい。
③光を通さないので日本酒の品質保寺にも良い。

 

此処に書くのは③の研究である。
昨年の4月24日の記事の研究結果である。
http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/e/234d4e58e4bb951863c95c2ea9e84c76


昨年の5月19日にCOCOストアーで180mlを2個購入し、1個は家庭用冷蔵庫の扉のポケット、1個は食卓近くのテーブルの上で今日まで保存した。
 1個は冷蔵、1個は常温で8ヶ月保存した結果、隠し吟醸はどうなったか?
 最近売っていたものを1個買い、保存したものと比較した。


 


写真は、左が常温保存のもの 中が冷蔵庫保存のもの 右が、最近購入したもの。
 蔵の出荷は、それぞれ2008/04 2008/04 2008/11 である。


 


色であるが、写真で見ると殆ど同じに見えるが、肉眼では常温のものがやや色が濃い。中と右は変わらない。
隠し吟醸は元々無色透明ではなく僅かに吟醸色がある。

 

 



 左-常温 右-冷蔵 僅かに左の方が色づきがある。

 



 左-冷蔵 右-最近購入のもの

 



 紙パックの中は、日本酒が触れる部分にはアルミが張られている。



さて、吟醸酒なので冷蔵庫で冷やしたものを、利いた結果である。


①常温熟成のもの
 立ち香は殆ど無い、室内の常温保存だが老香、熟成香は全く感じない。
 甘い入り口の後、厚みのある味を感じる。3つの中では最も旨味がある。酸の厚みがあるが引きが速い。後口は次第に辛くなる。最後はピリ辛であるがキレはよい。評価8.3。


②冷蔵熟成のもの
仄かな吟醸香あり、微かであるが、甘い梨の様な香りがある。
入り口スッキリとしているが、まったりとバランスの取れた味。まったりとした厚みのある味が長く続く。後口は辛味系。
常温熟成に比べスッキリとして辛口の印象。最近のものに比べ後口の雑味が無くキレが良い。評価8.5。


③最近購入のもの
軽い吟醸香があるが、梨の様な香は無い。入り口はスッキリとしている。まったりとしたバランスの取れた味。後口は辛味と苦味。残り口がやや重い。舌触りが3つの中で最もドロリとしている。この舌触りは添加アルコールのものと思われる。評価8.0。


香り、味のバランスで冷蔵のものが最も良いと思うが、常温以上の温度で食中酒にするなら常温のものが最も良いかも知れない。
 常温も冷蔵も紙パックでの8ヶ月の保存で、アルコールのドロリとした舌触りが失せ、スッキリとした後口になった。隠し吟醸は、すぐ飲むより、6ヶ月程度熟成させた方が1クラス上の味わいになることが判った。

 

実験の結果、推測通り紙パックの保存容器としての能力は高いものがある。完全な遮光性が良い結果をもたらしていると考えられる。

 

次は、4個購入して、常温・冷蔵で1年後、2年後の熟成を研究してみよう。
 2年後このブログが続いていたら報告できるかも知れない。


 

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2009/01/24 今日の酒 「初緑 特別純米 無濾過生原酒 19BY」

2009-01-24 22:04:34 |    日本酒



「初緑 特別純米 無濾過生原酒 19BY」高木酒造(岐阜)
原料米:ひだほまれ 100% 精米歩合:55% 使用酵母:協会1801号 日本酒度:+3 酸度:1.5 アルコール度:16度
杜氏:畠山勝美 1,312円(720ml)


 


香り高い。甘い香り、軽い甘さの入り口。広がりのある酸のふくらみがある。滑らかな舌触りで透明感高い。後半から苦味と辛味が出る。後口は辛味系。
 美味い酒である。特別純米だが、吟醸酒の造が感じられ、純米大吟に間違える世界を持っている。価格を考えるとお薦めである。


高木酒造は、岐阜県で人気の紙パック酒の蔵元だが、昨年から特定名称酒にも力を入れ始めた。その銘柄が、「初緑」である。
同社のHPによれば、
『~初緑の由来~
「水と緑に囲まれた山里の酒」という意味がこめられた銘酒「初緑」は江戸後期天保年間に、尾張の殿様より命名されました。』という由緒ある銘柄らしい。
 大吟醸から特別純米まで、昨年4月の飛騨・美濃酒蔵の集いで初緑を利いたが、19BYの初緑では、白ラベルの特別純米が最も気に入った酒だった。
 http://blog.goo.ne.jp/nabanatei/d/20080427


 20BYが1月20日から発売になったらしいが、日本酒度が+2となっている。19BYより少し甘くなっているのだろうか?


 

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