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2017年197冊目『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』

2017-09-17 15:59:27 | おすすめビジネス書

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評価 (3点/5点満点)

著者は、カリフォルニア大学平スティングズ校法科大学院労働生活法センター初代所長のJoan C.Williams氏。

この本では、中間に位置するアメリカ人、富裕層でも貧困層でもないアメリカ人を「ワーキング・クラス」と呼んでいます。

2016年の米大統領選挙を契機に、日本でも米国の「白人労働者」の存在が注目されるようになりました。彼らこそは、当初異端の泡末候補だった不動産王ドナルド・トランプの大躍進を支えた原動力であり、同氏のコアな支持層と目されたからです。

中西部のラストベルト(錆びれた工業地帯)を中心に、それまで政治に対して冷笑的だった白人労働者が大挙して投票所に足を運び、民主党優勢の下馬評を覆したことはエリート層にとって大きな衝撃でした。

彼らにとって、トランプの勝利はポピュリズム=反権威主義・反エリート主義の象徴でした。ワシントン(=既成政治)に失望していた有権者を再び政治回路の中に引き戻した点は、ある意味、米国の民主主義が健全に機能していることの証左とも言えるでしょう。

エリート層と白人労働者に存在する深い断絶を、本書は14の章を通してつまびらかにしていきます。

一般的にミドルクラスが縮小すると、社会全体の余裕がなくなることから、国内的には排外主義的傾向、対外的には孤立主義(自国第一主義)的傾向がそれぞれ強まるとされます。選挙期間中からのトランプの一連の言動は、こうした風潮と合致するものであり、トランプ大統領は今日の米国において生まれるべくして生まれた存在だとさえ言えます。

ミドルクラスが縮小し、閉塞感が増し、社会のセグメント化が進む中、エリートやリベラル、さらには政治が一体どうあるべきかという著者の根源的な問題意識は、日本にとっても確実に重みを増しているでしょう。その点で、本書は日本の今後を占ううえでも参考となります。

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