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拾い読み★2016-344≪コラム記事≫

2016年12月09日 20時12分35秒 | マリーンズ2016
2017新人王にロッテ1位・佐々木千隼が
最有力である2つの根拠


 5球団の指名が競合し、ソフトバンクに入団する田中正義(創価大)も同じパ・リーグになるが、田中は自身も「課題が多い投手」と認めるように、来季すぐに結果を残せるかというと不安要素が多い。そのボールを1球見ただけで「モノの違い」を感じられる稀有な存在だが、大学生相手でも盗塁を多く許していた大きなモーションや拙いフィールディングなど、プロで弱点を突かれる可能性は高いだろう。

 一方、佐々木はサイドスローに近いスリークオーターから、最速153キロのストレートとキレのあるスライダー、シンカーを操り、総合力で勝負する。ドラフト会議では1位指名でクジを外した5球団すべてが「外れ1位」として佐々木に再入札した。ある球団スカウトは「佐々木が外れ1位に残っていることを想定していたチームはなかったはず」と語り、また「どの球団も深読みし過ぎて失敗した」と言うスカウトもいた。外れ1位の5球団重複は、史上初の出来事だった。

 そんな佐々木が新人王に近いと感じる根拠は何か。大きく分けて2つの要因があるのだが、もっとも大きな根拠は「悪いなりに抑える能力の高さ」だ。

 ドラフト会議後に行なわれた秋の明治神宮大会では、佐々木の口からこんなコメントが聞かれた。

「調子はよくなかったんですけど、悪いなりの投球ができました。これはシーズン通して考えてきたことだったので」

 明治神宮大会での佐々木は、見るからに状態が悪そうだった。ストレートが走らず、スライダー、シンカーに頼るピッチングに終始した。初めて佐々木を見た観戦者は、もしかしたら「こんなものなのか」と思ったかもしれない。

 状態が悪かったのも無理もない。佐々木は今年1年、年間通して投げ続けてきた。春・秋のリーグ戦だけで合計126回1/3を投げ、夏は大学日本代表として日米大学選手権で投げ、秋のリーグ戦後には明治神宮大会の出場権を決める横浜市長杯で2試合完投している。疲れが溜まらないほうがおかしい状況だった。

 しかし特筆すべきは、これだけ登板していながら、佐々木が崩れた試合はほとんどなかったということだ。

 桜美林大で佐々木とバッテリーを組んだ大平達樹(3年)は、佐々木のゲームメイクのうまさを絶賛する。

「初球でストライクを取れる確率が高いので、キャッチャーとしてはすごく助かっています。去年まで僕はレギュラーではなかったのでバッテリーを組んでいなかったんですけど、佐々木さんが試合中に崩れるところも見ていました。でも、今年はほとんどそういうシーンがありません。1点取られても、そこから踏ん張れるのが悪いなりに抑えられる要因なのかなと。ピンチの状況でも崩れないのはすごいです」

 1点を失っても、ビッグイニングにさせない。勝負どころでスイッチを切り換えてランナーをホームに還さない。佐々木は、まさに「勝てる投手」の共通点をすでに備えているのだ。

佐々木が大学で大きな成長を遂げた理由。それは桜美林大の特別コーチを務める野村弘樹氏(元横浜)の存在が大きい。ドラフト会議当日、野村氏に佐々木への指導について聞く機会があった。その際、野村氏はこう話していた。

「佐々木を初めて見たとき、すごいインステップで投げていたんです。これではコントロールがブレてしまう。そこでステップから直して、体重移動を指導していきました。少し言ったことでも、すぐに対応できてしまう。すごく吸収力が高い選手でした」

 佐々木も野村氏に指導を受けた変化をこのように語っている。

「体の使い方が下手だったので、それを野村さんに『こういう風に動くといいよ』と教わりました。特に体重移動と、体の開き。スピードはそこそこ出ていたんですけど、バッターにとってそれほど速く感じないボールでした。真っすぐの質はだいぶ変わったと思います」

 そして、佐々木が新人王に近いと感じるもうひとつの根拠。それは、佐々木の骨の髄まで染みついている「反骨精神」にある。

 佐々木は「都立高校出身者初のドラフト1位」ということで話題になった。近年は都立高校もレベルアップしているとはいえ、将来有望な選手は強豪私学に流れがちだ。そんななか、佐々木は都立日野高で腕を磨き、3年夏の西東京大会ではエースとして早稲田実、日大鶴ヶ丘と名門私学を撃破している。

 また、進学先の桜美林大も準硬式野球部だったのが、2008年秋から硬式野球部となった新興勢力だった。首都大学リーグでは東海大、日本体育大、筑波大といった名門を相手に戦ってきた。

 今年6月に行なわれた大学日本代表選考合宿でのこと。この合宿では、直前の大学選手権で中京学院大を初出場初優勝に導いた吉川尚輝(巨人1位)が注目を浴びていた。そんな吉川とシート打撃で対戦した佐々木は、148キロの迫力満点のストレートで空振り三振を奪っている。登板後、佐々木ははっきりと「吉川くんは意識していました。テレビで見て、いいバッターだなと」と口にした。

 強敵を前にすると、自然とアドレナリンが出て最高のパフォーマンスを発揮する。そんな「雑草育ち」も、日本ハムやソフトバンクといった強敵に立ち向かうロッテという球団のカラーによく合いそうだ。

 心配があるとすれば、秋の明治神宮大会の悪い状態を引きずってしまうことだろう。特にシンカーに頼っていた感があり、シンカーを曲げようとすればするほど体の開きが早くなり、ストレートが走らない悪循環に陥っていた。

 しかし、それも杞憂かもしれない。最後の最後、大学ラスト登板となった明治神宮大会の決勝・明治大戦で、佐々木は珍しく大崩れを見せた。4回まで無失点と踏ん張っていたが、5回に一挙4失点。今年1年通して、めったに見られなかった1イニングの大量失点だった。

 試合後、佐々木は涙を拭いながら「まだまだ実力が足りなかった」と言葉少なに語っている。新興チームを全国準優勝に導いた達成感など微塵も感じさせず、ただただ「負けて悔しい」という感情だけが伝わってきた。

 反骨の男・佐々木千隼は、2017年のキャンプインまでに、もう一段スケールアップして現れるのではないか……。その予感が現実になったとき、「2017年新人王」の座もより現実感を伴って近づいてくるはずだ。

(Number)










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