縁側の陽だまり

日常の記録

blue light

2017-09-28 | 読んだ本の記録
読んだ本の備忘録

『正解するマド』乙野四方字・著 東映アニメーション・原作 野﨑まど・脚本(2017、ハヤカワ文庫JA)
アニメ『正解するカド』のスピンアウトノベライズ。アニメに関する情報を知っていた方が楽しめるが、朧気な知識でも楽しめることには楽しめる。(私は朧気な知識で読んだ)
大抵アニメのノベライズの場合、作品に準じたノベライズやスピンオフノベライズだったりするが、これはスピンアウトノベライズで、スピンアウトノベライズって何だよというわけだが、読めばこのスピンアウトノベライズというキャッチコピーがしっくりくるはず。
あらすじは、アニメ『正解するカド』のノベライズを任された作家・乙野四方字が小説を書けずに悩んでいるところへ異方存在のザシュニナの幻覚が現れて…というもの。
この小説に施された仕掛けを作るのは根気のいるものだったと思う。素直にその仕掛けが凄いと思ったし、何より物語に引き込まれた。
そして、野﨑まどの作品が読みたくなる。野﨑まど作品プレゼン小説でもある。そんなノベライズだった。(これを読んだあとに『野﨑まど劇場』『野﨑まど劇場(笑)』を買って読んだ。面白かった)


『少年たちは花火を横から見たかった』 岩井俊二・著(2017、角川文庫)
アニメ映画『打ち上げ花火、上から見るか、横から見るか』の公開にあわせて、原作者である岩井俊二が物語を再構築し小説化したものである。
小学生男子5人組。「花火ってさ、横から見たら丸いと思う?平べったいと思う?」何気なく発せられた言葉から、少年たちは花火を横から見るため花火大会の日に灯台へ行くことを約束するが…。
アニメ映画の方は物語自体は好ましい世界観であったものの、途中で気が削がれる場面が何度かあってどうしても映画の世界に入り込むことができなかった。映像は綺麗だったし、物語の子どもだからこその怖いもの知らずな行動と子どもだからこその無力な感じにノスタルジーと切なさがあって良い部分もあったのだけれど。
アニメでは中学生設定にされていたが、小説では小学生の設定。
小説を読んで、改めてこの物語の世界観自体は凄く好きだと思った。この小説全体に流れる空気が好きだ。ノスタルジーに駆られた。同じような体験をしたわけでもないのにどこか懐かしさを感じるのはどうしてだろう。


『キネマ探偵カレイドミステリー』斜線堂有紀・著(2017、メディアワークス文庫)
発売直後にあらすじからして好みと思い買ったものの、少し前まで放置していた。私はそんなのばかりだ。二作目が出るタイミングで読んだ。
ドイツ語の単位を落とし大学留年の危機に陥った奈緒崎は、担当教授に留年回避の条件として休学中の秀才・嗄井戸高久を大学に連れ戻すことを命じられる。さっそく、奈緒崎は嗄れ井戸の元を訪ねるが、嗄井戸は白髪で映画好きの引きこもりだった…。
読み出したら、一気に読んでしまった。ミステリーと映画ネタの融合具合が素晴らしい。知っている映画や観たことのある映画が登場すると、何だかそれだけでわくわくしてしまう。(単純だなー)
日常ミステリ(殺人事件があるもののそこまでシリアスではない)かと思いきや、最終話でまさかのサスペンス的な展開に驚いた。


『キネマ探偵カレイドミステリー~再演奇縁のアンコール~』斜線堂有紀・著(2017、メディアワークス文庫)
キネマ探偵シリーズの二作目。全3話からなる連作短編。前作ラストからどうなることやらと思っていたら、普通に日常回から始まり、奈緒崎と束のデート回からのラストのトレジャーハント回でのまた何やらありそうな含みのある終わり方。嗄井戸の部屋にある嗄井戸が好きな映画だという『ストーカー』のDVDに隠されていた映像。嗄井戸が巻き込まれた事件の謎と再び対峙するときがいつかやってくるのだろう。
個人的に一番好きな話は第二話「自縄自縛のパステルステップ」。私が大好きな映画作品が物語の鍵となっていたので嬉しかった。
この作品は観たことある映画でも観たくなる。観てない映画も観たくなる。そして、はやく続きが読みたい。


『黒猫シャーロック~緋色の肉球~』和泉弐式・著(2017、メディアワークス文庫)
大学進学をきっかけに一人暮らしを始めた恭平は、実は猫の言葉がわかるのだった。恭平はとある出来事によって鍵しっぽの風変わりな黒猫に出会う。その黒猫は退屈から逃れるためにいつも謎を探していた。恭平はそんな黒猫をシャーロック呼ぶことにした。猫の言葉のわかる青年と謎解き好きな黒猫が織り成す日常ミステリー。
話のタイトルがシャーロックシリーズの作品タイトルを捩りつつ猫風にアレンジしてあって何だか微笑ましい。猫とミステリーの組み合わせは良い。ミステリ的な驚きはあまりなかったものの全体的に楽しめた。


『八日目の蝉』角田光代・著(2011、中公文庫)
これは妹に借りて読んだ本。たぶん、一年くらいは借りっぱなしだった。
野々村希和子は衝動的に不倫相手の赤ちゃんを誘拐してしまう。見つからないようにとにかく逃げる希和子たち。逃げ場所は友人宅、区画整備のために住民のほとんどが退去している住宅地、カルトのような団体、そして島。彼女たちの逃亡の行方は…?
二章からなる構成。
一章は誘拐した側である野々宮希和子の視点で語られ、二章では誘拐された側である松山恵理菜の視点で語られる。
二章で、一人暮らしをしながら大学生活を送る恵理菜のもとに誘拐されていたときにいた場所のひとつであったカルト系団体で当時一緒だった千草が訪ねてくる。彼女は何とかカルト団体から抜け出すことができたが、それらに関することを本にするための取材として恵理菜を訪ねた。二章終盤に千草が発する「八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じてなくちゃいけないほどに、ひどいものばかりでもないと、私は思うよ」という言葉にぐっときた。命の尊さを感じたし、ちゃんと生きなきゃいけないなという気持ちになった。


『少年少女飛行倶楽部』加納朋子・著(2011、文春文庫)
単行本が出たときからずっと読みたいと思いつつ、読めていなかった本。本を読むのって私の場合、大体タイミングが噛み合ったときで、今このタイミングで読めて良かったと思っている。
中学1年の佐田海月は幼なじみの樹絵里に誘われて『飛行クラブ』に入部した。部の目的は空を飛ぶこと!?曲者だらけのメンバーのなか、果たして海月たちは空を飛ぶことができるのか?
読み始めたばかりのときは『飛行クラブ』って一体何だよとか「空を飛ぶ」ってそんなのどうするのなんて思っていた。
部員が規定数に達していない飛行クラブは部として認められない。部活動と承認されるためにメンバーは集めに奔走する。集まったメンバーも一癖ありそうな人ばかり。
海月の職場体験先で偶然気球のバスケットを見つけたところから一気に物語は加速する。最後の最後で頓挫しそうになりながらも、真剣に空を飛ぼうとする海月たち。もう本当に眩しかった。何かに対してそうやって一生懸命になれるって凄いし、そういうのって素敵だ。
海月たちのひたむきさに胸打たれつつも、顧問の立木先生の大人の意見もわからなくなかった。何かあってからではどうしようもないからね。物語的には、先生は顧問として役に立ってないのに最後の最後で邪魔すんなと思ったけど。
読んでいて色々考えさせられる部分があった。最後の海月と部長のやりとりにニヤニヤしたりもした。
読んで良かった。へんてこだけれど素敵な青春小説。


他にも色々読んではいるが、本を読むのが遅い。音楽を聴いてしまいがちだからだ。あとは、精神的余裕が無いと本が読めない。今は今度観る予定の映画の原作を読んでるが、映画を観る前に読み終わりそうにない。
好きな漫画が終わったり(打ち切り)休載したりで何だかなー。雑誌移籍はまあいいけど、謎の寂しさがある。
今はいつも追い詰められているような気持ちになる。自分なんかどうせ…というようなことを考えてしまう。言いたいことが言えないとストレスが溜まる。色んなところに気を遣っているし、気にかけても報われない。それはやるべきことであり当然のことだから。やれてなかったりできてないときには注意をされるか文句を言われるだけだから。
主観と客観の狭間で複雑な感情になる。気にしないで生きろよと自分自身に声を掛けたりする。それでも、つい気にしてしまう。
今の世の中の流れは不穏で、息苦しい。社会全体が殺伐としていて余裕がないように感じられる。
そんなこと暗いことを書きつつも、別にネガティブに陥っているわけじゃない。ただ、何なんだって思ってることを吐き出さないとおかしくなってしまうからこうして書いているだけ。

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