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今野敏『回帰ー警視庁強行犯係・樋口顕』 

2017年04月20日 | 読書

◇『回帰-警視庁強行犯係・樋口顕』著者:今野 敏  幻冬舎 2017.2 刊

    

 今野敏による警視庁強行犯係・樋口顕シリーズ第5作目。 
 今回はテロがらみの事件で、普段何かと意識しあっている公安部との捜査協力の様子が面白
く描かれている。

 都内某私立大学の近くで車の爆発事故が発生、2人の死者十数人の負傷者が出た。爆発処理班
はもちろん爆発・爆破の事案を担当する第三係(特殊犯捜査係)が出動、国際テロの疑いがあり
公安部外事第三課の捜査員が乗り込んできた。

 今回の事件はかつて樋口の指導官であった天童管理官が捜査を取り仕切っている。その天童監
理官に因幡という元同僚から電話があった。因幡はかつて天童の下で樋口らと動いていたが、あ
る事件で証拠不十分なまま厳しい追及を行い立件、裁判で無罪となって責任を取る形で警察を辞
めた。その因幡は日本を出て世界中を放浪し今日本に戻ってきた。この因幡が今回の事件のキー
マンの一人である。

 国際ジャーナリストと自認する因幡は天童に告げる。「いま日本にテロが計画されている。今
回の車の爆破事件は前哨戦で本格テロはこのあと続く。日本のスリーパーが動き始めた。私はそ
れを食い止めたいと日本に戻ってきた」
 天童も樋口も因幡が融通は利かないが正義感の強い男であることはわっかている。しかし、国
際テロ組織に通じている疑いは否めない。果たして因幡を信じていいのか。そして出張ってきて
いる公安の管理官梅田に因幡の話を隠しておいてよい者か。二人は悩み惑う。

 爆発現場近くで中東系の若い男を見かけたという目撃者が現れた。そして近くの防犯カメラに
それらしい男が映っており、ムハマンド・シーファーズ・サイードというパキスタン人の男が連
行される。しかしシーファーズは防犯カメラの人物は自分ではない。これはバングラディッシュ
人だという。
 さらに目撃証人が現れた。同大学図書館の牧田詠子という女性。資料図書を貸し出した中東人
が爆発現場近くにいるのを見たという。防犯カメラの人物とは違うというのだ。
 防犯カメラに映った人物に似た、加羅夢というバングラディッシュ系日本人が見つかり連行さ
れた。牧田はこの男こそ防犯カメラの人物だという。

 捜査陣は二人の目撃証言、二人の容疑者の証言、その勤め先のアリバイ証言など信憑性を巡っ
て議論を戦わせるのだが、なかなか結論が出せない。容疑の晴れたシーファーズを釈放するかど
うかでも警察と公安の主張は対立する。人権侵害等で公判維持がむつかしくなる警察と、事件を
未然に防ぐこと、人権より治安維持優先の公安ではなかなか議論はかみ合わない。

 結局警察の中では常識人で通る樋口の論が通りシーファーズは釈放される。ただし公安の監視
付きで。
 牧田詠子の証言の信頼度が疑われた。シーファーズから目をそらせるために加羅夢を防犯カメ
ラの男といっているのではないか。となると牧田はテログループのスリーパーか。加羅夢は釈放
しなければ。牧田は抑えるか。泳がせるか。いたずらに一網打尽を狙ってテロが先行したらどう
するのか。難問が尽きない。

 天童に因幡から電話があった。「因幡かい?」公安の梅田管理官が言う。天童と樋口はドキッ
とする。やはり公安は因幡の帰国を知っていたのか。
 「この前因幡と会ったのも知っている。ヨーロッパの諜報機関から情報が入っているんだよ」
「海外のテロ組織と関係があるというのは誤解だ。彼のジャーナリストとしての接触の中にテ
ロ関係者がいたということだ…」、「有効な情報が得られるのなら利用しよう。だが隠し事は
なしにしようぜ」梅田公安管理官は話が分かる。

 天童の代わりに樋口が因幡に会ったところ、シーファーズのアリバイを語った勤務先の経営
者、同僚や牧田詠子がスリーパーであることが分かった。さらに牧田詠子は「聖戦のための国
際戦線」の後方支援の一員であることも。
 
 牧田詠子を確保しようとしたが勤務先、自宅からも姿が消えた。しかし樋口の推理通り大学
構内に潜んでいる牧田は即身柄を確保され拘引された。シーファーズの関係者も捕まった。
 テロの主役シーファーズが監視に目を盗み姿をくらました。テロの目標地が靖国神社である
ことを牧田が明らかにした。牧田はイランのモグラだった。

 因幡と樋口は靖国神社で自爆のリスクを負いながらも格闘の末見事シーファーズを捕縛する。 

 樋口の一人娘照美は大学4年生になった。妻の恵子から「照美が夏休みに世界をバックパック
旅行したいと言い張っている。何とか言い聞かせて」と言われていた。忙しい最中なので「若
い女の一人歩きは危険だ」と言い放しになっている。反抗期は終わっているのに、娘と話をす
るとなるとぎくしゃくするのは何か根本的な問題があるせいかもしれない。それが刑事という
仕事のせいだとしたら絶望的だ。と樋口は思う。そんな心配性の男だ。

 そこで因幡から「バックパッカーなど止めた方がいい。旅をするには悪いことではない。
だが、目的のある旅にするべきだ。でないと、記憶にも残らない。ただ疲れ果てて途中から日
本に帰ることばかり考え始める。」こんなふうに言われ、思い切って「バックパッカーは止め
ろ」と照美に言った。
 ところが…。どういうことになったかは本書をお読みください。

 時流を汲んで、テロ事案を巡って公安と刑事が協力し合ってことに当たるという珍しいケー
スを設定したアイデアはいいけど、せっかくの機会なのでスリーパーの牧田詠子やシーファー
ズの関係者などにもっと話をさせたり動かしたりしてほしかった。因幡のような人物像が全く
伝わってこないので存在感がない。 
                                                                                       (以上この項終わり)

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