◇ 『臨場』 著者: 横山 秀夫 2004.4 光文社(初出は「小説宝石」)

警察では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることを「臨場」という。
変死の疑いがある事件現場において臨場し、自殺か他殺かの判断で打率10割の異能の男
がいる。
L県警刑事部捜査第一課調査官倉石義男。「終身検視官」の異名を持つ。通常人事では5
年で異動すべきところ、「余人をもって代え難し」と、10年近く検視の仕事を担う。とにかく変
人で、上司の刑事部長も屁とも思わない。常人の眼が及ばないところから事案の真相に迫る。
「赤い名刺」、「眼前の密室」、「鉢植えの女」、「餞」、「声」、「真夜中の調書」、「黒星」、「十七年
蝉」の8編収録。中にはちょっと無理筋と思える話もあるが、やはり筆力のある作家の作品と
納得する。
◇ 『一瞬の光の中で(Caught in the Light)』
著者: ロバート・ゴダード Robert Goddard
訳者: 加地 美知子

これまでに読んだ著者ゴダードの作品「蒼穹の彼方へ」や「千尋の闇」でご紹介のとおり、
ロバート・ゴダードは稀代のストーリーテラーと評されている。今回読んだ作品もこの評判に
違わずインターテーメントの極致を満喫させる。それにしても筋がこんなに入り込んでいる
と、時々読み過ぎたページを後戻りして筋道を確かめながら読み進むことになる。
主人公の英国人イアン・ジャレトは写真家。ウィーンで出会ったマリアン・エスガードと一瞬
のうちに恋におちる。双方とも配偶者がいるのだが、お互いすぐに家庭を捨て外国で一緒に
なろうと、落ち合う場所を決めて別れた。イアンはすぐに妻と離婚する。娘にも別れを告げ再
会の地でマリアンを待つのだが、彼女は来ないが電話が来た。
「やっぱり行けない。間違いだった。私を見つけようとしないで。」
娘を捨て、妻と別れて、結局はしごを外されてしまったイアンは必死の思いでマリアンを探し
求める。
エスガードという名前を 頼りに探し出した土地で「ジョスリン・エスガード」という墓石を発見
する。
銀塩写真術はフォックス・タルボットが発明(1800〜1877)したとされるが、それより15か
ら20年前に素人科学者であったジョスリンの妻マリアン・エスガードが太陽画映像の保存法
を発見したとの設定(事実関係不明)。その陽画がエスガード一族に残されており、歴史的価
値は莫大なものになる。
マリアンを探しているうちに彼女が掛かっていた心理療法医ダフネによってイアンが探し求
めているマリアンは150年も前のジョスリンの妻であって、実はエリス・モバリーという女性に
マリアンが憑依(乗り移って)して行動していたらしいことが分かる。自然発症の心身症患者
だというのだ。さらにそこにはかつてイアンが自動車事故で死なせてしまったイソベルという
女性が絡んでくる。マリアン画憑依下エリスの独白は一挙に100年もタイムスリップし、突然
現代に立ち返る。エスガード家の係累が事件をさらに複雑にする。
イアンとマリアン(実はエリス)出会いの真相は・・・。
これから先の内容を述べると読書の楽しみを奪ってしまうことになるので止めるが、細かい
字の2段組みで474ページの本は、読みではあるが一気に読ませるところが凄い。
(以上この項終わり)
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