ミニ菜園/畑の作物・水彩画

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ダイアン・ジェーンズの『月に歪む夜』

2016年10月11日 | 読書

月に歪む夜(原題:THE PULL OF THE MOON)』
                                            著者:ダイアン・ジェーンズ(Dian Janes)
                                            訳者:横山啓明
                  2012.9 東京創元社 刊 (創元推理文庫) 

    
  読んでいくうちになぜかデジャヴ(既視感)にとらわれた。前に読んだのではない
   か。
  読んだ本をまた借りてしまって、すぐ返したことは何度もあるが、今回は読んでい
 て新鮮さが薄く、読んだような初めてにような…。認知症の前駆症状ではないかなど
 と余計な心配をしたりして気分が良くない。

  著者は英国バーミンガムの生まれ、二児の母で本作は処女作という。処女作にして
 は構成もよく、語り口も丁寧でなかなかの力作である。年若い主人公の揺れ動く気持
 ちが巧みに描かれている。
  話は主人公のケイトが若き日のひと夏の事件を回想するスタイルをとっているが、
 交互に語られる現在と回想の話の連系が実に巧みである。

  50代の主人公ケイト(ケイティー)は一通の手紙を受け取る。かつて恋人であった
 今は亡きダニーの母ミセス・イワニセヴィッチからだ。「…息子の身に何が起こった
 か是非知りたい」ので会いに来てほしいというのだ。出会いの時から苦手だった。会
 いたくはないのだが。彼女はダニーの死の経緯を疑っている。そしてダニーと結婚す
 るはずだったケイトに真相の告白を求めているのだ。
  今は大学を出て小学校の教師となったケイトは何百キロも離れたミセス・イワニセ
 ヴィッチの住む介護施設へと出かける。

  ケイトはあの狂ったような夏休みの事件を回想する。1972年の19歳の夏を。

  あのころ、同じ大学に通うケイトとダニーは恋人の仲、ダニーの親友のサイモンの
 叔父が夏休み中、家を自由に使ってもよいという夢のような話がきた。ただし庭に池
 と石庭を作るという条件で。

  家や勉強から解放された3人は、まるでヒッピーのような自堕落な毎日を過ごしてい
 たのだが。
  ある日遊びに行った浜辺でトゥルーディーという、同じ年恰好の魅力的な娘に声をか
 けられ、結局4人で生活し始めることになる。出身地も、生立ちも判然としない謎に包
 まれたトゥルーディーの出現で、次第に彼らの人間関係が微妙に狂い始める。

  近くにある「ペティスの森」で昔殺人事件があった。霊感体質だというトゥルーディ
 ーはこの森の探検をしよう、交霊会を開き被害者と出会うなどと騒いで3人を辟易させ
 る。
  ケイトは、突然訪ねてきたダニーの両親からダニーがケイトと結婚することになって
 いると聞いたと語られ激高する。勝手に振舞うダニーに不信感を抱いたケイトを巧みに
 誘惑したトゥルーディー。女性同士のベッドインシーンをサイモンに目撃される。

  さて、その夜ダニーがペティスの森へ幽霊狩りに行こうと誘う。懐中電灯を頼りに暗
 い森の中を進む4人。電池切れで暗闇に迷うケイトの耳にトゥルーディーの悲鳴が届く。
  トゥルーディーは殺されていた。警察の追及を恐れた3人は、犯人が誰かもわからな
 いままトゥルーディーの死体を家に運び、造成中の池に埋める。トゥルーディーは突然
 出て行ったと言えばいい。

    良心の呵責に耐えかねたサイモンは恐るべき事実をケイトに告げる。実はダニーは
 1年前に大学で起こったレイチェルという同級生の殺人事件の犯人だという。サイモン
 が警察に偽証し罪をまぬかれたというのだ。だとしたらトゥルーディーもダニーが?。
  ケイトはこの家から、二人から逃げようとする。しかし車の運転もできないケイト。

  「あなたが殺したのね」ケイトはダニーを問い詰める。
  「君のためさ、君のためにやったんだよ」、「あの女は俺たちの間に割り込んでき
  た」、「トゥルーディーは君を辱めた、知ってるんだ二人のことを。止めなければ
  ならなかった」。暗然とするケイト。

  サイモンが酒でアスピリンを大量に飲み死んでいた。そばにはろれつが回らないほ
 ど酔ったダニーが転がっている。ケイトは「二日酔いにならないように」とダニーに
 大量のアスピリンを溶かした飲み物を与える。ダニーは死んだ?ようだ。
  「人殺しは私だ」3人の死体があるこの家からどう逃げ出せばいいのか。  

  朝になった。サイモンの叔父が現れた。予定より早く帰って来たのだ。二つの遺体
 を救急車で運ぶ。しかし昏睡状態のダニーはすぐには死ななかった。ケイトはショッ
 ク状態にあるという好都合の隠れ蓑で、警察から責任を問われることもなかった。
  ケイトはフランスの友達の家にいることになっていたので両親にこっぴどく叱られ
 た。ダニーの子をおなかに宿していることが分かって、母親は激怒した。 
 
  おおまかこれが本作のあらすじであるが、うまくできているしそれなりにスリリン
 グではあるがサイコサスペンスというほどのものではないと思う。幾分好都合な仕立
 てもあるし、不自然な部分もある(トゥルーディーは行方不明で新聞に取り上げられ
 ていた。町で何人かの人に会って話をしている。警察が調べないのか。産後すぐに里
 子に出した息子が、大きくなってケイトの小学校に生徒として現れる。ダニーの面影
 を見て驚くなど)
  だがそうしたアラも補って余りあるものがある作品だ。

                            (以上この項終わり)

   

  

   

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