【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

見えるために見えない

2016-12-05 06:38:31 | Weblog

 太陽は、世の中のものを見えるようにするために、自分自身は見えにくいようにしています。

【ただいま読書中】『「美しい顔」とはどんな顔か ──自然物から人工物まで美しい形を科学する』牟田淳 著、 化学同人、2013年、1600円(税別)

 「黄金比は本当に美しいのか?」という“挑発”から本書は始まります。黄金比は「1:約1.62」で、その比率は一般的な名詞やキャッシュカードに採用されています。白銀比というのもあって、これは「1:約1.41(正確にはルート2)」で、A版やB版の紙(ノート)の比率です。
 正方形から非常に細長い長方形まで、様々な四角形のどれが美しいと感じるかの調査では、欧米人では「黄金比」を選ぶ人が多かったのですが、日本人では「正方形」が人気でした。
 円・楕円での欧米人での調査では、1:1.5の楕円が一番人気でした。日本人の調査は現在計画中だそうです。ただ、この調査での楕円は横長のものが並んでいますが、これを縦長に置いたらまた違った印象になるのではないか、というのが私の予想です。
 では「顔」は?
 女性芸能人の「顔」写真を並べて、誰が美しいか、の大規模調査を著者は行いました。ヘアスタイルは変化するので、写真で「髪に隠されていない顔面部分」だけに注目して縦横の「比率」を出すと、正方形タイプ(縦横が1:1)の人には「美人」と答える人が少なく、黄金比タイプ(面長)の人を「美人」と答える人が多い傾向が見られました。ちなみに「モナリザ」の顔も黄金比だそうです。アンケートでは、正方形タイプは「可愛い」「子供っぽい」、面長タイプは「美しい」「大人」という印象を持つ人が多かったそうです。ということは、可愛く見せようと思ったら、前髪を垂らして顔を正方形タイプに見せる、という戦略もありそうです。
 では人気キャラクターは? 好感度が高いキャラトップ10のうち半数(トトロ、ドラえもん、ミッキーマウスなど)が白銀比でした。こちらは「全身」の話なので、顔面とは違った結果になったようです。
 自然界には「シンメトリー」が多く存在します。それらは美しいものですが、面白いことに「カオス」もまた人間は美しく感じます。
 人工物には「機能美」というものがあります。たとえば流線型は静止状態でも美しく感じられます。面白いのは、たとえば流線型を採用した電気炊飯器も「美しく」感じられること。炊飯器は走る機能を持たないのに、なぜなんでしょうねえ。
 ところで「美しい」って、何でしたっけ?

 



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