【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

体成分

2016-10-25 06:58:09 | Weblog

 めったに食べることはありませんが、私はトリュフよりは松茸の方が美味しいと感じます。
 西洋人にとってオリーブ油は特別な存在だそうです(オリーブの木の下で生まれたのはアルテミス、アポロン、ロムルス、レムス……と錚々たるメンバーですし、塗油の儀式なんてものもあります)が、私は胡麻油の方が美味しく感じます。
 私の体は、西洋料理よりは日本の料理で出来上がっているようです。

【ただいま読書中】『オリーブの歴史』ファブリーツィア・ランツァ 著、 原書房、2016年、2200円(税別)

 古代にオリーブは、シリア・パレスチナ・クレタ島でそれぞれ独立して栽培されるようになったようです。紀元前2000年頃、バビロニア帝国のハンムラビ王はオリーブ油交易に関して厳格な規則を定めました。油の使用目的は、香油・化粧・灯火でした。ローマ人はオリーブをヨーロッパ全域に移植し(今でも当時のオリーブ畑が残っている場所があるそうです)食用にも用いるようになりました。
 ローマ帝国が崩壊し気候が寒冷化するとアルプスより北のヨーロッパではオリーブ栽培は衰退します。オリーブ油が“再発見”されたのは西暦1000年頃から、キリスト教がヨーロッパに広がるのとほぼ同じ時期でした。ただしその用途はほとんどが食用でした(その他は、灯火用と石鹸の原料です)。
 古代エジプトでは、オリーブの収穫は「純潔」に関する儀式を経た労働者だけが行うことができ、神像に近づけるのはオリーブ油を体に塗った者だけに制限されていました。古代ギリシアでは、処女か童貞だけがオリーブ栽培に従事できると考えられていました(実際にそうしていたかどうかは不明です)。16世紀フィレンツェでは前夜にセックスをしていない男性だけがオリーブ栽培に従事できました。ユダヤ教(とキリスト教)ではオリーブは聖なる存在でした。ノアが放したハトが持ち帰ったのはオリーブの枝でした。これはつまり「神の言葉」です。「香油」は聖書(新旧ともに)に頻繁に登場します。
 宗教と医術は相性が良いものですが、オリーブ油はその両方の機能を果たしました。香油だけではなくて、軟膏の原料としても有用だったのです。さらにスポーツ用として、競技会の前に全身に塗り込む用途もありました。
 油を絞るのに適しているのは、完熟する前の実です。完熟すると油は質が落ちます。しかし未熟な実は苦みがあって食べるのには向いていません。完熟すると苦みが減るのでそれを乾燥させて塩漬けすることで食べることができるようになります。この製法を発見したのは古代エジプト人のようです。
 北アメリカにオリーブを持ち込んだのは、ヒスパニックあるいはイタリア系の移民で、気候が適したカリフォルニアで農園が作られました。しかし多くの人にとってオリーブはあまり人気のある食品ではありませんでした。それが変わったのは第二次世界大戦後。「ヘルシーな食生活」として「地中海式ダイエット」と「エクストラヴァージンオリーブオイル」が注目されるようになったのです。それも異常なくらいの熱心さで。著者は「そもそも『地中海式ダイエット』って、中近東とヨーロッパで全然違うし、ヨーロッパでもギリシアとイタリアとフランスとスペインとで全然違うぞ」と指摘し、オリーブ油がまるで“信仰の対象”に祭り上げられていることから、古代の「宗教の象徴」に戻ったみたい、と皮肉っぽく感想を述べています。もしかしたら歴史は一方向に進歩するのではなくて循環するのかもしれません。

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