【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

詰むかもしれない将棋

2017-10-21 06:57:35 | Weblog

 「詰み将棋」には一つの問題点があります。それは「この問題には必ず正解がある」と最初から宣言してあること。江戸時代に「詰むや詰まざるや」という本があったそうですが、これもあまりに難しすぎて解答者が頭を抱えるからこんなタイトルになるわけで、実際にはすべて「詰み将棋」だったわけです。
 だけど実戦では「この場面では詰みがある」ことは誰も教えてくれません。だから実戦トレーニングとしては「詰むか詰まないかは自分で発見しろ」という「詰み将棋」というか「詰むかもしれない(詰まないかもしれない)将棋」の問題集の方が実力をつけるには有効かもしれません。

【ただいま読書中】『応天の門(2)(3)』灰原薬 作、新潮社、2014年、580円(税別)

 菅原道真少年は、相変わらずの毒舌です。平安時代のホームズといった感じで、まずは「怨霊が取り憑いた本(木簡)」の謎を道真はさらりと解きます。しかしそのとき道真の過去がちらりと蘇ります。
 在原業平は、かつて攫って逃避行をした藤原高子のことをまだ思っています(そして高子も)。藤原良房は、姪の高子を清和帝の女御として入れようとしていました。清和天皇は良房の娘の子ですが、皇室にさらに藤原の血を色濃く入れることで支配力を増す計画です。しかし高子の屋敷に物の怪が出現。しかし男は屋敷に立ち入り禁止。そこで高子は策略で道真を屋敷に呼び入れます。物の怪の謎を解かせるために。道真はしぶしぶそれに応じますが、在原業平への友情を感じ始めたから、二人のために動こうと思ったのかもしれません。
 高子との関係から藤原家と業平の仲はぎくしゃくしていますが、菅原家もまた藤原家との仲がぎくしゃくしていました。道真の兄は疫病で死んでいるのですが、その裏に藤原家との関係があったのです。
 在原業平は少しずつ「物の怪と簡単に怯えるな。必ず何か仕掛けがある」という道真の考え方の影響を受け始めています。しかし自分に良くないことが次々起きると「呪われている」と怯えます。やはり平安時代の人です。というか、物の怪などを全然信じないで知性の人として生きようとする道真の方が(平安の世では)“異常”なのでしょう。現代社会であってさえ「知に働けば角が立つ」のですから。




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