(NEW)ごんぼねっこ日記

「ごんぼねっこ」とは、ゴボウのような根のこと。懸命に根を張っても、ごんぼねっこは疎まれがち。ジサマの人生もそんな気がして

捨てたもんじゃない(2)

2017年01月29日 | 日記


その子は改札口から、
ジサマたちに向かって真っすぐに走ってきた。

目から涙があふれている。

聞くと、
携帯をどこかに落としたとのこと。

「連絡しようにも、できなくて…」
「どうしよう、どうしよう、そればっかりで」
「まさか、先生が来てくれてるなんて思いませんでした。」

そう言って、涙を流した。

そっか、
俺だって、人の番号なんか覚えてないから、
携帯なくすと、こうなるのか…

つくづく実感した。

***

名古屋からの電車の中、
水であふれたアパートはどんなふうになっているのか、
下の階の方の部屋はどうなってしまったのか、
下の方はどれほど怒っているのか、
なにをどうすれば…

あれこれ考え、
あっちこっちに連絡したりしているうち、
ポンと携帯を置き忘れたようだ。

普通じゃないから、
こういうことが起きる。

気が付いて、
東京駅で歩き回って探したらしい。

どこにもなくて、どうしようもなくて、
駅に届け出て、電車に乗った。

電車の中でも、
どうしよう、どうしよう、
頭の中はぐるぐる空回りするばっかりだった。

どうしよう、どうしよう…

そう思って、電車を降り、
改札口を出るところでジサマたちを見つけた。

不安の連続だったから、
一気に涙があふれたようだ。

連絡が途絶えたわけが、
やっと分かった。

が、
泣いているところではない。
もうすでに9時を過ぎた。

少しでも早くアパートに行って、
下の階の方に謝らなければ…

ジサマの車で急いでアパートに向かった。

***

アパートに着いたのは、
9時半をとっくに過ぎた。

管理会社の話では、
朝6時ころ働きに出る方らしく、
そういう状態の中で、
真夜中に水道管破裂騒ぎを起こされたこともあって、
怒りが爆発したらしい。

その日は、
部屋のかたずけをするために、
早く帰ってきていると管理会社の方は言っていた。

働きから帰ってきたその方に、
管理会社が
「娘さんが名古屋から向かっている。」
と話したところ、
「もういいから、わざわざ来ることないから」
と言っていたという。

夜中の怒りも、だいぶ収まったようだという。
そう言われても、
娘にすれば不安がなくなったわけではない。

***

下の部屋は暗かった。

室内のかたずけ、
そして明日の仕事のために、もう休まれたのかもしれない…
明朝、謝ることにして、チャイムを押すことはやめた。

それならば、
今度は携帯の問題だ。
とにかく、悪用されないようにしなければ…

運のよいことに、
アパートのすぐ近くに、そのメーカーの携帯ショップがあった。

もう10時。
シャッターは締まっているが、明かりはついている。

とりあえず、駆け付けた。

正面ドアから、中に向かって、
すみません、すみません~
大きな声で、その子が叫んだが反応はない。

バサマが、裏へ回ったら、
なんと、
ちょうどスタッフが出てきたところにばったり。

事情を話すと、
夜遅くにもかかわらず、即座に対応。

そして、
電話で対応に当たってくれた方も、
感激するような対応だった。

電話の主が中国名のうえ、
携帯の契約者、親が生まれた年、その他もろもろ
あまりよくわからない状況…

なのに、
本当に心のこもった対応をしてくれた。

そばで聞いていて、
なんだかこういう「日本」を誇らしく思ってしまった。

***

アパートに戻るとき、
その子は、
「とんでもないことばかり続いた一日だったけど、
でも、それ以上にうれしいことがいっぱいあって」
「すごくハッピーでした。」

そう言っていた。
そして、
そういうハッピーなことは、次の日も続いたのだ。

(明日へ続く)
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