鈴木海花の「虫目で歩けば」

自然のディテールの美しさ、面白さを見つける「虫目」で見た、
身近な虫や植物の観察や飼育の記録。

夏休みの虫ガールたち―その② まゆ子ちゃん

2012-08-16 07:47:11 | 日記
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 まゆ子ちゃん作:標本箱をのぞきこむランドセル(取り外し可)をしょったジンメンカメムシとコノハムシの虫人形。






 6月の『虫愛ずる一日』イベントで、そう子ちゃんのほかにもうひとり、
声をかけてくれた小学生がまゆ子ちゃんでした。
 まゆ子ちゃんを一目みた瞬間、ああ、この人は虫が好きで好きでたまらないんだなあ、とわかりました。
だって、その笑顔は、純度100%の喜びにあふれていたから。


 お母さんによると、まゆ子ちゃんは2歳のころから、毎日ポケットをダンゴムシでいっぱいにして家に帰ってきたそうです。虫は好きじゃないお父さんとお母さんから、なぜか生まれた天性の虫好き少女。
 虫が大好きなんて、お友達にいじめられるんじゃないか、娘がオタクになっちゃったらどうしよう・・・・。
両親の悩みは尽きませんでした。


 いっぽうまゆ子ちゃんは、10歳になる現在まで虫が好きな気持ちをもちつづけ、
日ごろの虫とのお付き合いをもとに、『アブライモモムシ』という、人間の言葉を話す架空の虫が登場する物語を書いて、朝日小学生新聞の文芸賞をゲットしたのです。


 「まゆ子が虫の話で賞をいただいて、主人も私も深く反省しました。
今まで、私たち親は虫の好きな子どものために、なんにもしてあげてこなかった、と」。
そこで、なにかごほうびを、と両親は考えた。
うふふ・・・・・まゆ子ちゃんの心は決まっていました。


それは、(たぶん両親にとっては想定外だった)ずっと夢見ていた虫に会いに行くマレーシアへの旅行でした。
「幼稚園のころ、テレビ番組でコノハムシやジンメンカメムシのことをやっていて、
わあ、すごいおもしろい虫がいるんだなあ、と思って忘れられなくて。
それがたしか、マレーシアとかいう国だった」

 念願のマレーシア旅行で、まゆ子ちゃんはジンメンカメムシやアカエリトリバネアゲハやトゲナナフシ、そしてずっと会いたいと思っていたコノハムシに出会うことができ、
その旅行記がまた">『マレーシアへ虫とであう旅』という記事となって、
朝日小学生新聞に掲載されたのでした。
(『アブライモモムシ』はこちらで読めます)

夢見ていたマレーシアの昆虫館で。






 夏休みの一日、まゆ子ちゃんのお宅にお邪魔しました。

 居間には、あちこちに飼育箱。
カミキリムシやカマキリは飼育箱に入っているけれど、
コノハムシは並んでいるいくつかのグアバの鉢の葉っぱにしがみついていて、放し飼い。



タイコノハムシ。


 図鑑や写真集では見たことがあるコノハムシ。
ほんとうに葉っぱそっくりの形態や模様もおもしろいけれど、
この虫の魅力は、その動きにある!!!



 ゆっくりと、葉が微風にゆれるごとく、体をゆらす。
それが、なんとも心なごむ動きなんだなあ。
コノハムシって、袖のふくらんだドレスを着た、
ウエストのほそーいどこかの国のお姫さまが、
両手を高く差し上げているみたいに見えません?


この両手挙げポーズがメルヘンな雰囲気をかもしだしている。



 黄色っぽい色のジャワコノハムシのジャーちゃんは、
最初は緑色だったのが、半月ほど黄色のカーテンにとまっているうちに、
こんな紅葉した葉っぱみたいな色に変化した!



カーテンの色に合わせて、緑から紅葉色に変化したというジャワコノハムシのジャーちゃん。



顔は、ナナフシに似ている。葉っぱのような肢の先端から細い肢先が出ている形状も芸が細かい。

 コノハムシは単為生殖の虫(危機的状況になるとオスも出現するらしい)なので、
ジャーちゃんはなんと、一日3回、ほぼ決まった時間にひとつずつ卵を産むんだそう。 
しかも産卵管の先っぽからあっちこっちに、プッ、と卵を飛ばすんだって。おもしろすぎ!!!
(ただし、日本で卵を孵化させるのは、非常にむずかしいらしい)

 

 それにしても、まゆ子ちゃんのご両親エライ!
まったく虫と関係ないクラシック音楽の道を歩んでピアノを専攻してこられたというお母さんは、
まゆ子ちゃんの虫さがしの冒険につきあってマレーシアでヒルに噛まれてもめげず、
毎日まゆ子ちゃんと虫の世話をしているし、
お母さんよりさらに虫が苦手なお父さんは、
しだいに慣れてきたとはいえ、
仕事から家に帰ると、居間のあちこちに虫が・・・・・。
たとえ、ひとり娘のためとはいえ、これはなかなかできることではないと思う。



 ケーキやプリンを食べながら虫の話をいっぱいして、
夕方、近所へ虫さがしに行こうか、ということになり、
うれしさに跳びはねるまゆ子ちゃんが手に持ったのが、捕虫網と・・・・・・
自作のジンメンカメムシとコノハムシの人形。




ちゃんとコノハムシの特徴が表現されている。

 キェー、かわいい!
節足動物の特徴である肢の節が、
ヒモの結び目で表現されているのが、
さすがただの人形ではありません。
ちゃんとよく見て、その特徴を表現しています。
それに、虫への愛情が、あふれている。

 それにしても、ジンメンカメムシの人面度は、生物界広しといえども文句なしのナンバーワン!
海野和男さんのサイトで見られるジンメンカメムシ。

ジンメンカメムシ のプロフィールは、http://eco.goo.ne.jp/nature/unno/diary/200509/1126454181.html 界 : 動物界 Animalia

 門 : 節足動物門 Arthropoda
 綱 : 昆虫綱 Insecta
 目 : カメムシ目(半翅目) Hemiptera
 亜目 : カメムシ亜目(異翅亜目) Heteroptera
 科 : カメムシ科 Pentatomidae
 属 : ジンメンカメムシ属 Catacanthus
 種 : ジンメンカメムシ C.incarnatus
 学名 :Catacanthus incarnatus
 和名 :ジンメンカメムシ、オオアカカメムシ
 英名 :Man-faced Stinkbug

同じく海野和男さんのサイトで、幼虫も見ることができる。





 ところで、そう子ちゃんもまゆ子ちゃんも、
日本にいる虫ではナナフシが大好きというのが共通しているところがおもしろい。
しかも「私と同じで動きがゆっくりでマイペースだから」という理由も同じ。


 まゆ子ちゃんの将来の夢は、ナナフシやコノハムシの新種を見つける昆虫学者。そして研究でわかったことを、物語にする昆虫学者兼作家だって。
いいなあ、私もそんな風になりたかったよ、と、もうすでに手遅れの私は思うのでした。

 そう子ちゃん、まゆ子ちゃんが、これからいろいろある長い人生を通じて、
ずっと虫の美しさや面白さに目をみはる喜びを持ちつづけられますように!


 




  姉妹サイト『バニャーニャ物語 その18 紅茶がおいしい夜でした』も更新しました。

 バニャーニャはもう秋。
こちらにも、不思議な虫が登場して、
カイサが飼育しようと四苦八苦。





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