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私が訪ねた美術館の報告。

清水隆慶展

2008-04-07 11:27:25 | Weblog
仏師 清水隆慶展  新春特別展示

場所:京都国立博物館 平常展示館5,6室
入場料:500円  2/3(土)無料
観覧日:2008.2.23(土)


未知の人 清水隆慶を見に行った。この日は運良く無料の日だったが、さして混んでいるようでもなかった。部屋に入ると、平安時代、鎌倉時代の大きな仏像がまず目につく。その間に小さな彫像が置かれてある。何だろうと思ってみるとこれが清水隆慶の作品だった。初めての彫像だった。
小さな小さな人物像が5,6段に並んでいる。3cmくらいだろうか。全部を合わせると100人位。それで「百人一衆」なのだ。一番上が宮殿人。あとは虚無僧、子供をおんぶした人、喧嘩の仲裁をしている人、杖をついた盲人、僧侶、踊りを踊る人、子供、さまざまな人々がさまざまな姿に彫られている。木造彩色で細かいところまで丁寧に作られている。筋肉の動きもみえる。自筆でこの像について書いてある。それによると、ふと目覚めた時、寺の鐘の音を聞きながら、町を行く人を思い出しながら造ったとある。そして、「老いらくのてんごうゆるせ秋の暮」という俳句を添えている。「老いらくのてんごう」とは老人のいたずらのこと。仏像作りがこんなものを作ってしまったという照れがある。のびのびと楽しみながら作ったことが伝わってくる。京都の人らしく仏像造りの時余った材料で勿体無いから何かに使おうと思ったのかもしれない。

初代清水隆慶は1659年生まれ1732年没した江戸時代初期の仏師である。清水隆慶は4代までつづく。「初代清水隆慶位牌」は1726年68歳の作で、位牌の下に自身の胸像を安置している木造彩色である。位牌に胸像も添えてあるのはその時代としてだけでなく今でも驚かされる。位牌と胸像を見ながらおまいりするのは何となく遊び心があって面白いし、独創的だ。
「髑髏」は木造彩色で実物そっくりだが1/2の大きさである。実物大でない大きさは技術的に難しい。そこに隆慶の腕の確かさを見る。眼孔の奥まできちんと彫られている所からこれは実物を実際に見て制作したのであろう。この時代、髑髏を彫刻するのは非常に珍しかったのではないか。髑髏に興味を持ったその心が面白い。
「関羽立像」は1730年72歳の作。関羽は中国蜀漢の時代の武将。義の人で劉備を助けて功があった。子孫が義を忘れないようにと作ったものだ。木造彩色で鮮やかな作品。衣が翻る様も華麗である。
「竹翁座像」も木造彩色である。竹翁は江戸時代前期の古浄瑠璃の太夫で、近松門左衛門などとも親交があった。羽織袴も折り目正しく、袴の折り畳まれた襞がふんわりとして木彫とは思えない。

「維摩居士座像」は維摩経の修行者があばら骨がみえるほどやせ衰えて座っている。しかし、赤と緑の彩色で非常に鮮やか。他に「大黒天立像」がある。

「二代清水隆慶位牌」は初代とは血縁関係にはない二代目の作品で、初代と同じく位牌と胸像だ。「冨士見西行像」は西行が富士山を仰いでいる像である。杖に全身の力をかけて、片足を爪先立ちしている。それが非常に面白い。西行の冨士見図は他の人々によって作られた作品もあるだろうが、比較してみたら面白いだろう。他に「利休像」がある。

江戸時代の仏師は彫るだけでなく彩色もできたのだ。題材も竹翁などの太夫から髑髏まで多岐に渡る。彫刻だけでなく、俳句も作るし、字もうまい。和歌も詠んだ。「わが影のうつりてすむはあくた川うき名をながす名をやとどめむ」。

初代も二代も仏像の残り木を使って、小さな像を作った。残り木だから、何を造ってもいい。仏像を作る時の緊張を離れて自由に心を遊ばせている。肩の力を抜いて、楽しんでいるから見る方も楽しい。


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