りん日記

ラーとか本とか映画とか。最近はJ-ROCKも。北海道の夏フェスふたつ、参加を絶賛迷い中。

映画『おくりびと』 感想

2008-09-18 22:33:14 | 映画
脚本:小山薫堂
監督:滝田洋二郎
出演:本木雅弘 広末涼子 山崎努 吉行和子 余貴美子 笹野高史 山田辰夫



ああああ
ものすごくいい映画見ちゃいました。
日本の映画賞総ナメじゃないでしょうか。
賞を総ナメにしそうな映画と自分がすごくいいと思う映画が
一致することが少ないのですが、これは一致しました。
もう本当に本当に素晴らしかったです。


以下どう素晴らしかったか、内容に触れつつ書いています。
ネタバレされたからといってそれほど影響はない類のストーリーではありますが、
これからご覧になる予定があって先入観持ちたくない方は
この先お読みにならないでください。












***************************************************************************

モックン。。。美しかったー
その考え深げな落ち着いた目が。スッと通った鼻筋が。
うつむいたときに下まぶたに落ちる長いまつげの影が。
顔の小ささと肩幅のバランスが。
指の先の先まで神経が行き届いた手の動かし方が。
子供用の小さめのチェロを慈しむように抱える仕草が。

すべてが、ほうっとため息つきたくなるような美しさ。
モックンの場合、もともと容姿的に恵まれているのに、
その外見的な美しさにさらに内面からにじみ出てくる美しさが加わって、
完璧でした。
素晴らしい人ですわ、本木雅弘さんて。
早めに解散できてよかったね、と思う。(大きなお世話か)


広末涼子も可憐でよかったです。
この人、普通にしてると、永遠の少女的な透明感を感じさせつつも
そのまなざしはすべてを包み込むような母性を感じさせて私は好きなんだけど、
なんだか妙に自分をエキセントリックな方へエキセントリックな方へ持っていきたがりません?
実際エキセントリックなひとだからなんでしょうか。
それとも周りにエキセントリック方向でプロデュースしたがる人がいるんでしょうか。
役をやっていない普通のときも、普通にしていればいいのにな、と思います。
(これも大きなお世話か)


そして、この夫婦二人を取り囲む脇役の大御所陣。
日本演劇界の至宝たち。
素晴らしかったなぁ~

山崎努。私が最近見るこの人は全部同じ、
すごく権力を持っていて助平で何を考えてるかわからなくてなぜか必ず足が悪いという役ばかりで
もうこれしかやらないの??と思っていたんだけど、
今回のはよかったなぁ。
モックン演じる主人公小林が納棺士という職業に就く過程は映画の中でていねいに描かれるけど、
小林を雇う山崎努演じる社長がなぜこの職業に就いたかは描かれていない。
だけど、いまの社長になるまでにいろいろなドラマがあったんだろうな、
いろいろなことを見て経験した上でのいまのこの人なんだろうな、というのを
抑えた演技の中で感じさせる。
素敵でした。

あと笹野さんね。よかったなぁ。
吉行和子演じる女性が一人で切り盛りする銭湯へ毎日通い続ける笹野さん。
物語後半で急逝してしまう吉行和子を見送るときに見せる寂しげな無念そうな顔。
でもその寂しさを呑み込んで、「また会おうな」と微笑んでみせる。。。
ああ、こう書いてても涙が浮かんできます。
初老の男女の、淡い恋。いいなぁ。いいなぁ。
杉本哲太演じる息子に吉行和子の思い出をしみじみと語ったあと、
ニッと笑っていうセリフ。
すでに涙でぐしゃぐしゃになってるのに最後に笑わせてくれて、
だけどどんな思いでその言葉を口にしたのかと思うとやはりきゅーっと
胸が締め付けられて、まさに泣き笑い。
家で見てたら声上げてた、きっと。ハンカチがもうぐちゃぐちゃです。

山田辰夫さんもよかったんだよね~
私にはドラマ『はるちゃん』の番頭さんでおなじみの山田辰夫さん。
あいかわらずコワいのよ。
日本海溝より深く眉間にしわ寄せちゃってさ、
奥さんを亡くした喪主の男性って設定なんだけど、時間に5分遅れて到着したモックンたちを
「あんたら死人でメシ食ってんだろうがっ」っていきなり吐き捨てるように怒鳴りつけるの。
だけどね、山崎努が遺体を清めて、死化粧を施して生前の顔に近い顔になると、
振り絞るようにその奥さんの名前を呼ぶのよ。
「ああああ、この人は奥さんを亡くして本当に本当にツラいんだ。
生前もきっとこんな険しい顔してばっかで優しい言葉もろくにかけたことなさそうだけど、
それでもすごく好きだったんだ、きっと」
と思ったら、もお、たまらなかったですよー
いまもこの文章打ちながらだーだー泣いてます。
ずっと眉間にしわ寄せてるだけで、大して表情は動かないのよ。
ほんのわずかなの、変化は。
だけどね、こう、作業を見守るうちにだんだん下がっていく肩とかね、
うつろになっていく目とかね、見ていると、
「ああ、そうなんだね、わかるよ、うん、ツラいんだね、
奥さんが好きだったんだね、うん、うん」ってさー。。。


ほかにも、死者を送る様々な家族が出てくるわけです。
主人公が呼ばれるのは通夜を終え、納棺の直前というタイミングだから、
その家族のドラマとしてはラストのラスト。
その別れのシーンに至るまで、それぞれに様々なドラマがあったはず。
だけど映画では語られない。
最後の場面だけを切り取って見せられる。
だけど、語られていないそのドラマを感じるの。
具体的にはわからないけど、その別れに至るまでの憎しみ、悲しみ、諍い、苦労、喜び、愛情。。。。
送るひとが送られるひとに寄せる思いをひしひしと、感じるの。

私がそれを感じることができたのは、主人公小林が感じていたからなんだよね。
個人を大切に思う遺族の気持ちを小林が感じて、それを尊重して納棺の作業を行っていたから、
その気持ちが所作のひとつひとつに表れて、それで見てる側も感じ取れたのだと思う。

みなさんは、「納棺」の作業を実際にご覧になったことがありますか?
祖父母を四人見送った、そのどのときか具体的には思い出せないけど、
映画の中での納棺の所作を見ていて、自分自身もそれを見たことがあったのを思い出しました。

「納棺」は、ただ遺体を棺に収めるのではなく、
口の中に綿花を詰めたりして顔の表情を整えたり髪を整えたりし、
それまで着ていた衣服を脱がせて身体も清拭して死装束を着せ、
男性は髭を剃り、女性にはメークを施すといった作業もします。

私が見たときはたぶん身体の清拭をして着替えをさせるだけだったように記憶しているのですが
(宗派や場合によっていろいろバリエーションはあるそうです)、
見守る遺族に肌が見えないように布などで覆いながら、
流れるような手際の良さで作業が進められていく、その手さばきに見とれたことを覚えています。
遺体はもちろんぐったりと横たわっているだけですから、ただでさえ扱いにくいだろうに、
一人で、肌を決してこちら側には見せないようにしながら、服を着替えさせる。
相当練習を積まなくてはああは動かないだろうと思わせるような、滑らかな熟練した動き。
それでいて決して事務的・機械的になることはなく、
ひとつひとつの動作を確かめるように、ていねいに、祈りすらこもっているような、
独特の厳粛な手つきで進めていく。
最初に顔を覆う布を外して布団をはぐったときは、
遺体をはっきり見るのが怖いような厭うような気持ちがあったけど、
納棺の作業を見守るうちに、不思議とそういう気持ちはなくなって、
最後のお別れのときには棺の中に横たわる顔をしっかりと見て、
しっかりお別れを言うことができました。

映画の中でモックンはその所作を見事に自分のものにしてスクリーンに再現していて、
素晴らしかったです。
死者を尊重する気持ち、送るひとの悲しみに寄り添おうとする気持ちが伝わってきた。



んんんん、ほんとに、なんべん素晴らしかったと言っても言い足りないです。

涙だけじゃなく、くすくすと笑いがちりばめられているのもよかったよ。

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4 コメント

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Unknown (とおりすがり)
2008-11-01 14:02:38
昨日、たまたま夜時間が空いたので
久し振りにレイトショーでも見に行こう
と偶然選んだのがこの作品でした。

夜9時半上映。
観客3名。(私も入れて)

…驚きました。
自分の涙腺がこんなにゆるかったことに。
(ちなみの40歳男です。)

これまで生きてくると、数多くの死に別れを
しているわけで、それをひとつひとつ思い出
してあたたかい涙が止まりませんでした。

で、この映画を他の人はどう評価しているの
かなあと見ていたところ、りんさんのブログ
をみつけたところです。

あまりに的確な評価をされていたので、うれ
しくてついコメントしてしまいました。

失礼致しました。




Unknown (りん)
2008-11-01 22:24:43
~とおりすがりさん
おお、通りすがりにこうしてコメントつけていただくのも
とっても嬉しいんです、ありがとうございます!

泣けましたか、そうですか。
ええ、泣けますよねー、ほんとに。だーだーと。
もっと若かったらきっとこんなには泣けなかったろうと思うと、
年をとるのも捨てたものではないかも、と思えました。

久しぶりにご覧になった映画が満足できる作品で良かったですね。
私が見たときは午前中の上映を見たのですが、
ふだんはあまり映画館に足を運ばないであろう
年配の方々がたくさんいらしてて、かなり混んでいました。
それはそれで良い雰囲気だなーと思ったです。
はじめまして(^^♪ (のろ君)
2009-03-03 23:06:13
りんさん、はじめまして。
オスカーを受賞したことで映画館に足を運ぶ人の数も増えているそうですね。
僕も「おくりびと」に感動した一人として、嬉しく思います(^^♪

≫納棺の作業を見守るうちに、不思議とそういう気持ちはなくなって、最後のお別れのときには棺の中に横たわる顔をしっかりと見て、しっかりお別れを言うことができました。

この映画が切欠で、りんさんの記事を読むことができたことを嬉しく思います。
また、ときどき遊びに来させてくださいね(^^♪
Unknown (りん)
2009-03-05 08:36:38
~のろ君さん
コメントありがとうございます!
受賞、しましたねー。
日本アカデミー賞は総ナメだろうとは思いましたが、
本家のアカデミー賞までとってしまうとは、びっくりです。
でもそれだけの価値のある映画だったと思います、本当に。
英語版でのタイトルが『Departures』(旅立つ人)と、
邦題の『おくりびと』とは立場が真逆になってるところが
面白いと思いました。

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