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沖縄の現在を憂えるなら、猿田佐世氏の『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』を読むべきだ

2017-05-13 | 沖縄


沖縄の現在を憂えるなら、猿田佐世氏の『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』を読むべきだ。 (角川新書2017年3月刊 )

2017年5月12日朝日新聞朝刊 新聞スクラップ
米軍基地集中「差別だ」54% 沖縄県民調査
 沖縄の日本復帰から15日で45年となるのを前に、朝日新聞社は沖縄タイムス社、琉球朝日放送と合同で電話による沖縄県民世論調査をした。米軍基地が集中していることは「本土による沖縄への差別だ」という意見について、54%が「その通りだ」と答え、「そうは思わない」の38%を上回った。▼33面=「本土と格差」81%
 「その通りだ」は年齢が上がるにつれて増える傾向にあり、60代以上では7割を超えたが、18~29歳では「そうは思わない」が大きく上回った。自民支持層では「その通りだ」39%に対し、「そうは思わない」が49%だった。今回、調査対象を18歳以上に広げたため単純比較はできないが、2013年12月の調査の同趣旨の質問では「その通りだ」は49%、12年4月調査では50%だった。
 県内で最も重要だと思う課題については、「基地問題」を選んだ人が33%で最も多く、「教育・福祉などの充実」(28%)、「経済振興」(19%)を上回った。
 調査は4月22~23日に実施。回答の一部は4月25日付朝刊に掲載した。
「本土と格差」81% 世代間に意識の差 沖縄県民調査
 朝日新聞社などが実施した沖縄県の有権者を対象にした4月の世論調査では、「沖縄と本土には、さまざまな格差がある」という見方について、「その通りだ」と答えた人は81%に上った。日本に復帰して45年が経ったにもかかわらず、本土との格差を今も強く実感している県民の姿が浮かび上がった。
 過去の調査の同趣旨の質問と比べると、「その通りだ」は2002年4月は74%▽10年5月は85%▽12年4月は78%と高い数値が続く。今回の調査で「その通りだ」と答えた人のうち、「格差の中で、一番問題だと思う」ものを尋ねると「所得」を選んだ人が43%と最も多く、「基地問題」が33%と続いた。一方で、世代間の意識には違いがはっきり出た。格差について「その通りだ」を選んだ人のうち、一番問題だと思う格差について60代以上は4割以上が「基地問題」を選んだが、30代の58%は「所得」を選択し「基地問題」は13%だった。 (小山謙太郎)
 
■沖縄県民調査 質問と回答
 (数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。◆は全員への質問。◇は枝分かれ質問で該当する回答者の中での比率。〈 〉内の数字は全体に対する比率。丸カッコ内の数字は4月15、16日の全国調査の結果)
◆翁長雄志知事を支持しますか。
 支持する58▽支持しない22
◆安倍内閣を支持しますか。
 支持する31(50)▽支持しない48(30)
◆今、どの政党を支持していますか。
 自民20▽民進7▽公明4▽共産4▽維新1▽自由0▽社民3▽日本のこころ0▽沖縄社大0▽そうぞう0▽その他の政党1▽支持する政党はない46▽答えない・分からない14
◆沖縄県は5月15日、日本に復帰して45年を迎えます。沖縄が日本に復帰して、よかったと思いますか。
 よかった82▽よくなかった5
◆「沖縄らしさ」は、まだ残っていると思いますか。かなり失われたと思いますか。
 まだ残っている57▽かなり失われた32
◇(「まだ残っている」と答えた57%の人に)それは、何だと思いますか。(択一)
 方言8〈5〉▽自然5〈3〉▽伝統文化43〈24〉▽精神や助け合いの心33〈19〉▽生活様式8〈5〉
◇(「かなり失われた」と答えた32%の人に)それは、何だと思いますか。(択一)
 方言23〈7〉▽自然21〈7〉▽伝統文化12〈4〉▽精神や助け合いの心20〈6〉▽生活様式23〈7〉
◆今、沖縄県で最も重要だと思う課題はなんですか。(択一)
 経済振興19▽教育・福祉などの充実28▽基地問題33▽沖縄独自の文化の継承6▽自然環境の保全12
◆沖縄と本土には「さまざまな格差がある」という見方があります。その通りだと思いますか。
 その通りだ81▽そうは思わない14
◇(「その通りだ」と答えた81%の人に)格差の中で、一番問題だと思うのはどれですか。(択一)
 所得43〈35〉▽就職8〈6〉▽交通網2〈2〉▽教育13〈10〉▽基地問題33〈27〉
◆沖縄県の今後についてうかがいます。沖縄県はどのような自治のあり方を目指すのがよいと思いますか。(択一)
 今の沖縄県のままでよい35▽より強い権限を持つ特別な自治体になる51▽日本から独立する4
◆米軍の基地問題についてうかがいます。本土に比べて在日米軍の基地や施設が集中していることは、本土による沖縄への差別だという意見があります。その通りだと思いますか。
 その通りだ54▽そうは思わない38
◆米軍基地が今より縮小したら、沖縄の経済はよくなると思いますか。
 よくなる36▽悪くなる18▽変わらない38
◆アメリカ軍の普天間飛行場を、名護市辺野古に移設することに、賛成ですか。
 賛成23(36)▽反対61(34)
◆普天間飛行場を名護市辺野古に移設するため、安倍政権は今、辺野古沿岸部での埋め立て工事を本格的に始めようとしています。安倍政権のこの姿勢は、妥当だと思いますか。
 妥当だ23▽妥当ではない65
◆アメリカ軍基地が集中する沖縄の負担軽減について、安倍内閣が、沖縄の意見を、どの程度聞いていると思いますか。(択一)
 十分聞いている3(5)▽ある程度聞いている24(36)▽あまり聞いていない39(40)▽まったく聞いていない31(13)
 <調査方法> 4月22、23の両日、コンピューターで無作為に作成した固定電話番号に調査員が電話をかけるRDD方式で、沖縄県内の有権者を対象に調査した。有権者がいる世帯と判明した番号は1967件、有効回答は896件、回答率は46%。


武良コメント

猿田佐世氏の『自発的対米従属 知られざる「ワシントン拡声器」』 (角川新書2017年3月刊 )は、これまでの日米外交は、アメリカの少人数の「知日派」と日本の政治家やマスコミが互いに利用しあい政策を実現するという「みせかけの対米従属」によって動いてきたが、トランプ大統領が出現し、いま日本は何をなすべきかと、ワシントンでロビー活動に長年携わった著者による緊急提言の書である。
論じられている内容は次の通り、

第一章 外交は劇である
「歴史的和解」を演じる歴史修正主義者たち
「劇」の通りに現実が動いていく
日米間の情報ギャップ
シンポジウムや講演も「外交劇」
見抜かれていた「日本政府のプロパガンダ」
第二章 自発的対米従属
「ワシントン発」の報道の作られ方
政策に跳ね返る「知日派の声」
「ワシントン拡声器」の効用
TPP推進は「日米財界の声」
「アメリカの声」により原発ゼロ閣議決定見送り?
なぜアメリカは日本に原発維持を求めるのか
自ら選んだ「従属」に気付かない恐ろしさ
第三章 トランプ・ショックと知日派の動向
「トランプの政策は『破滅のレシピ』だ」
日米関係維持に懸命な知日派
反トランプの知日派が政権に入る可能性
トランプ・ショック後の「逆拡声器」現象
日本の声を使った「トランプ困るコール」
第四章 今後の日米関係の展望
日本の軍事力増強と自衛隊の任務増加の可能性
軍備拡張の好機を得た安倍政権
原発問題のゆくえ
熾烈になる貿易交渉
キーマンとなる知日派は誰か
第五章 外交・安全保障における市民の声の具体化のために
「逆拡声器」の驚き
既得権益層同士が利用しあう外圧
マルチトラック外交の重要性
安保・外交分野にも躊躇せず支援がなされる社会に
第六章 今、日本の私たちがなすべきこと
リベラル陣営からの提案を
「どうしたいか」を考える
沖縄基地問題への具体的提案
新しい日米関係を切り拓くために

 この最終章の第六章、「沖縄基地問題への具体案」の項で、猿田佐世氏は次のようなことを提言している。

 本当はいろんな考えをもつ「I」がいて、それが集まって「We」になっているはずだが、外交の現場で日本を語っている人々は「様々なIの集まり」としてではなく「単色のWe」を使って話している。沖縄に基地が必要だと言う時にいう「We」には沖縄の人たちは入っていない。鳩山政権が誕生したとき、辺野古の基地建設については「最低でも県外」と公約して従来の日米外交路線とは異なる道を取ろうとしたが、この「単色のWe」を使って話している外交の者たち、つまりワシントン拡声器の日本製の外圧によって退陣に追い込まれた。今、トランプが沖縄からの米軍撤退に言及し、アメリカの知日派から「トランプ困るコール」が繰り返され、日本がその声にも押されて自信を持ってトランプ氏に働きかけるという「逆拡声器」の動きが目立った。日米のエスタブリッシュメントはこうして、双方で拡声器効果を利用しながら、日米外交を既定路線に戻そうとしてきた。
鳩山政権誕生の時に行われていた「鳩山困るコール」をアメリカ側に伝えることで、日本の「We」の人たちが、従来の路線とは異なる道を取ろうとする鳩山の「I」を取り込んで、鳩山の政策は頓挫した。
多くの世論調査では、政府の見解とは異なり、原発反対や辺野古基地建設反対の立場の方が多数の「We」であり、鳩山元首相も選挙で勝利した多数の「単色のWe」のはずである。だが、外交では「We」は上層のエスタブリッシュメントのことになってしまう。
その仕組みに意義を申し立てていくしかない。
これとは違う外交の姿かあるのだということを提示していかなければいけない。自発的対米従属に物申さなければ、不作為による承認となってしまう。

というような現実的な提言をしている。
 双方とも外交を担うエリート官僚たちは、自分たちの行為が本当の民意に適っているか、ということを考える思考回路などない、ということが明確に描き出されている。彼等は従来路線が支障なく「粛々」と勧められるためにだけ力を注ぐ。そのことで官僚としていかなる失態も演じてはならないという自己保身的振舞いをするだけなのだ。
 そんな仕組で日米安保も沖縄の基地負担も、従来からの規定路線と考える、外交エリート官僚によって支えられている。そこに民営の反映などどこにもない。
アメリカと日本の外交を担う人たちの、民意からかけ離れたそんな独善的な「単色のWe」による外交に意義申し立てをして、それに対抗できる現実的なロビー活動によって、「I」の集合である本当の「We」による外交を確立しなければないない、ということだ。
そうでなければ、今回のような「沖縄県民」のアンケートに表れた「声」が反映される外交はいつまでも実現しないということを教えてくれる著書である。


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