まんがパウチ (レビュー・ネタバレ)

漫画の絵とストーリーを、真空パウチするように書きとめました。
【ファイアパンチ】【進撃の巨人】【カラダ探し】など

四月は君の嘘 3話「黒猫」

2016年11月28日 | 四月は君の嘘
僕、有馬公生は雑念を払っていた。



払っても払っても、頭に浮かんでくるのは、先日見た「宮園かをり」のバァイオリン演奏の映像と音と観衆の喝采。
追い払うために奇声をあげたところを、友人の「渡」に見られて驚かせてしまった。

渡は、最近ぼーとしている僕を見て「さてはお前、好きなコの事を考えてたろ。タイムリーなかをりちゃんかぁ?わかるよ、かわいかったもんなあ」と一人で納得したので、僕は慌てて否定した。
「んなワケないだろ、だって・・・渡を好きなんだよ、僕を好きになるハズないよ」と。


でも渡は「そんなのカンケーないじゃん、心惹かれるコに好きな人がいるのは当然、恋をしているそのコは輝くんだもん。だから人は、理不尽に恋に落ちるんだ」と言う。



僕は感心して渡を見た。そのポジティブな考え方に、渡がモテる理由がわかった気がした。
でも、僕は渡のようにはなれない。 「でも、僕には無理だ。きっと」

渡は前を閉ざす僕に「無理かどうかは女の子が教えてくれるさ」と言うので、僕は「渡は良いことを言う」と感心した。渡の言う通りだと思った。





気がつけば、茜色の雲のスクリーンに・・・瞼の裏の暗幕にリフレインする。
何度も何度も何度も・・・その度に僕の心は・・・・
母さんが僕に残したものが散っていくような気分になって・・・
もう一度聴きたいけど聴きたくない。
もう一度会いたいけど会いたくない。

そんな自分でもコントロールできない裏表な感情にさいなまれていた時、校門の桜の木の下に立つ彼女を見た。


僕を見つけた彼女の頬が少し紅潮したことは、桜の薄桃に紛れてわからない。

こういう感情を何て呼んだかな
こういう気持ちを何て言ったかな


彼女は僕を見るなり「友人A」と僕を呼んだ。僕が友人Aで、主役は渡。


君は春の中にいる。


彼女が校門で待っていたのは渡で、でも渡は今日はケイコちゃんと一緒に帰宅したのをあたふたとごまかしていたら、僕は彼女に代役を任命された。渡と一緒に行きたかったカフェに、一緒に行く役の代役。エキストラの次は代役だった。


彼女は、僕の目の前で、美味しそうに楽しそうにワッフルを頬張っている。
あんなに凄い演奏家なのに、こうしていると普通の女の子にしか見えないや、そんな事を考えながら彼女を見ていると、店の片隅に置いてあるピアノから音色が聞こえてきた。



店に来ていた子供達が、習いたての「キラキラ星」を弾いて遊んでいた。
彼女は、店の片隅に置かれたピアノを「幸せなピアノ」と言ったけど、僕は可哀想なピアノだと思った。
ピアノに水や湿気は厳禁だと母さんに叩き込まれていた僕には、生花に囲まれたピアノは管理、保存状態が良くないと思った。


彼女は立ち上がって子供達に話しかけに行くと「あのお兄ちゃん超上手だから教えてもらおっか」と子供達に吹き込んでいた。

僕はもうピアノは弾かない・・・と断ったけど、子供達はキラキラした目で待っていて、断り切れなかった。
少しだけ・・・のはずが指が、手が、体がピアノを覚えていた。



店にいた人達がその音色に驚き、そして聞き惚れる素敵な「キラキラ星」が店内を流れる。
宮園かをりは(ほら、やっぱり、幸せなピアノじゃない)とその光景を見ていた。




でも、中盤で僕はハッとしてその手を止めた。
やっぱり僕はダメなんだ・・・・。





店を出ると黒猫がいて、僕は以前飼っていた黒猫を思い出して猫を眺めていたら、いつの間にか彼女が横に来ていた。
「ピアノはもう弾かないの?」と彼女がポツリと僕に聞いた。
「やっぱり・・・・君は僕を知ってるの?」と聞き返した。

森脇学生コンクールビアノ部門優勝、ウリエ国際コンクール2年連続入賞、彩木コンクール最年少優勝、などなど
その演奏は正確かつ厳格、”ヒューマンメトロノーム”
8歳でオーケストラと、モーツァルトの協奏曲を協演した神童
「君の事を知っているのは私達の常識。君は私達の憧れだもの」



「どうしてやめちゃったの」
その質問は鋭く僕に突き刺さり、目の前の黒猫の瞳が、僕を責めるあの目にダプる。



どうしてって・・・・「ピアノの音が聴こえないんだ。初めは聞こえるんだけど、途中から集中する程、その演奏にのめり込む程・・・奏でた音は春風に攫われた花のように、もつれながら遠ざかって、消えてしまう。
聴こえないのは、僕の演奏するピアノの音だけ、自分の音だけが聴こえない」





僕は思う。これはきっと罰なんだと。



でも、そんな話に宮園かをりが同情するはずもなく「甘ったれんな!!弾けなくても弾け!!手が動かないなら足で弾け!!悲しくてもボロボロでもドン底にいても、弾かなきゃダメなの。そうやって私達は生きてゆく人種なの」と前を向いていた。




”私達”・・・ちがう、僕は彼女とはちがう。
「うん、君はそうかもしれない」
君といると渡の言っていたことが、なんとなくわかる気がする。
(恋をしているからそのコは輝くんだ)
君は食べ物に恋をして、日常のささいなことに恋をして、ヴァイオリンに恋をして、音楽に恋をして、渡に・・・・。
だから君は輝いているのかな。

こういう気持ちを何て言ったかな、これはたぶん、こういう気持ちは”憧れ”って言うんだ、きっと。




そんな僕の気持ちにおかまいなしに、彼女はある決意をした。
「よし決めた。私の伴奏者に任命します!!」

彼女は僕の意見も返事も聞かず、聴衆推薦で残ったコンクールの二次予選の伴奏者だと決めた。

君は、春の中にいる。かけがえのない春の中にいる。





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