まんがパウチ (レビュー・ネタバレ)

漫画の絵とストーリーを、真空パウチするように書きとめました。
【ファイアパンチ】【進撃の巨人】【カラダ探し】など

四月は君の嘘 5話「暗い海」

2016年11月28日 | 四月は君の嘘
公生は椿が漕ぐ自転車の後ろに乗っている最中も、楽譜に集中していた。
これほど楽譜に集中したのは、何年ぶりだろう。
楽譜に集中すると、母さんの声が聞こえる気がした。
「繰り返し繰り返し楽譜を読み込んで、何度も何度も弾きこむのよ。そうやって完璧にするのる譜面の指示通り、作曲家の意図通り完璧に、正確に。全ては譜面に書いてあるのよ」

その母のピアノに対するストイックな指導法に、世間は好き勝手な事を言っていた。
誰に何を言われても、僕がただ一人、母さんの味方なんだと思って下を向いてやり過ごしていた。



そうこうしているうちに、汗だくの椿と渡の自転車は無事、時間前に会場に到着した。
「ありがとう、行ってくるよ」

世間はもう桜が散る4月も末だけど、公生を見送った椿は「もうすぐ春が来るよ」と言った。
きっと公生にとって、時間が動き出し、うまれかわる春となるはず。





いつも時間をかけて練習を積み上げて、完璧に仕上げることを徹底されていた公生にとって、この練習なしのぶっつけ本番、しかも・・・あんな・・・ムチャクチャなヴァイオリストに合わさなきゃならないなんて・・・。
辞退した方がいい・・・これじゃ恥をかくだけだと公生は焦っていた。



一心不乱に必死に譜面に向かう公生に、かをるはいきなり頭突きをかまし、それから、顔を極限まで公生の顔に近付けて言った。 「私を見て。」




「顔をあげて私を見て。下ばかり向いるから五線譜の檻に閉じこめられちゃうんだ。
大丈夫、君なら出来るよ。ずっと昼休み聴いてたでしょ、譜面はいつも目に入る所にあったでしょ。
私達なら出来る。モーツァルトが言ってるよ、「旅に出ろ」って。おもいっきり恥かこうよ、二人で」





14番の名前が呼ばれた時、公生はビクッと体を硬直させたが、その公生の手を、かをるが取って引っ張った。
「行こ」



厳格で譜面に忠実な母とは正反対の・・・天真爛漫、奇想天外、ジェットコースターみたいに僕は君に振り回されてばかり、この人自身が、行き先のわからない旅の様だと思った。



その背中に「君は自由そのものだ」とつぶやくと、君は振り向いてかろやかに言った。
「違うよ、音楽が自由なんだよ」
僕は・・・、厳格な音楽しか知らなかった僕は驚いた。



僕はまた舞台に立っている。



僕達の為の静寂、ここにいる全ての人が、僕らが音を鳴らすのを待っている・・・・。
公生の心臓は、ドクンドクンと大きな音で脈打ち、嫌な汗が流れてきた。

会場がざわめく。「有馬だよ、ピアノの有馬君、有馬公生だ」
かをりの演奏を期待していたあの審査員は、かをりの連れてきた伴奏者に驚いた。
(彼がなぜ伴奏者を?人工と天然、随分ミスマッチなカップルだ。どんな演奏をするつもりだ)と二人を見つめた。

かをりは、いつもそうしているように「エロイムエッサイム エロイムエッサイム我は求め訴えたり」と言って伴奏者を見て、クスッと笑った。伴奏者がガチガチに強張っていたから。

宮園かをりのコンクールが始まった。
公生は、出だしをうまく入り音もちゃんと聴こえ、この曲でよかったと少し安堵した。
会場では、椿が公生がまたピアノを弾く姿に感動して見守っていた。


コンクールらしい譜面に忠実な演奏が続いたと思った矢先、かをりが公生に目配せをした。



きた!!!



かをりの個性丸出しのオリジナルな演奏に、公生はくらいついていく!
審査員の男はそのピアノの技術に驚愕した。この無茶苦茶なヴァイオリンに事もなげに合わせ、かつ1音も漏らさずに正確に弾いてくるとは!!


だが、公生はふと観客席に母の視線を感じた。いる!母が会場にいて、演奏を聴いている!
それに気づいた瞬間、楽譜から音符がはがれて消えていき・・・音が聴こえなくなっていった。



焦れば焦る程に、ピアノの音は聴こえず、深くて暗い海の中に沈み込んだようになっていった。









『マンガ』 ジャンルのランキング
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 四月は君の嘘 4話「カラフル」 | トップ | 四月は君の嘘 6話「後ろ姿」 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL