眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『ブルックリン』(録画)

2017-07-15 14:37:19 | 映画・本

(書いているうちにネタバレになってしまいました。スミマセン。未見の方はご注意下さい)


去年の公開時に話題になって、いつか自主上映されるかも・・・と待っていたのだけれど・・・最近WOWOWで見かけたら、やっぱり録画して観てしまった映画(^^;。(予想していた通り、もう一度、今度はスクリーンで観られたら嬉しいな~と思うような作品でした)

とにかく「色彩」が美しい。ヒロイン(エイリシュ:シアーシャ・ローナン)の服装の変遷、50年代初頭のニューヨークの風景、祖国アイルランドの海辺・・・観ているこちらも風のそよぎを感じるような、瑞々しい映像が続く。

あらすじを少し書くと・・・

病身の母と簿記係として働く姉ローズの3人で、アイルランドの小さな町に暮らす20歳のエイリシュは、ロクな仕事もなく、学ぶ機会にも恵まれない妹の将来を案じた姉の計らいで、ひとりニューヨークに移り住むことに。なれない土地(それも大都会!)で、なかなか親しい友人も出来ず、ホームシックになった彼女だったが、同郷の神父に勧められて地元の大学(会計士コース)で学ぶようになり、イタリア系アメリカ人のトニーというボーイフレンドも出来る。笑顔と自信が戻ってきた頃、突然故郷から届いた報せは・・・(公式HPからテキトーに引用)。

別にどうということもない話に見えるかもしれないけれど、この映画は案外「先が読めない」ところがあって、新しいエピソードに入る度に、「エイリシュはどうするんだろう」「一体どう答えるんだろう」「ちょっとアブナイけどな~」などなど、余計な心配?をしたりもした。(ダンス・パーティで出会ったトニーが、あんなに誠実でシャイなところのある人には見えなかったし・・・とか(^^;)


映画の中に「共産主義者みたい(笑)」などという会話があるくらいで、先日観た『トランボ』と同じ時代。原作には、「黒人のお客もデパートに入れるようになったんだって」「そんな店、絶対行かない!」などという場面もあるらしく、当時のアイルランド移民の話を、観た後ちょっと調べたりもした。

ジャガイモ飢饉の時代から100年ほど経っているとはいえ、アイルランドからアメリカ大陸へ移住するのは、大変な事だったと思う。

この映画では当時の社会背景を詳しく描くことはせず、2つの国、2人の男性の間で揺れ動く若い女性のラブストーリー、或いは成長物語として作られているように見える。が、それでもエピソードの端々から透けて見えるものがあって、通じるとはいえ異なる「英語」、同じカトリックでも文化・風習・食べ物も全く違う友人、老境を迎えて住む場所のなくなった数多くの先輩(同胞)たち・・・アイルランドの閉鎖的な町から新興国アメリカへ、20歳の若い女性がひとりで海を渡ることの意味、そこからもたらされるもの、失うもの、手放さざるを得ないものの数々が、キメ細やかに描かれていたと思う。


個人的に最も強く感じたのは、「これくらい自分の思うことを正直に口にして、自分の判断で物事を決めていっても構わない。人生は自分の思うとおりに生きていいんだ・・・」という感慨のようなものだった。

若いエイリシュは、ちょっと危なっかしく見えるときもあり、中途半端な状態で迷い続ける?こともある。それは生きている人間としてはごく自然なことであって、大事なのは「その結果としてどういう道を、自分の意思として選ぶか」ということ。(アイルランドで再会した男性は、ちょっと気の毒ではアリマシタが(^^;)

エイリシュは周囲の人間関係にも恵まれていて、そのことも彼女をずいぶん支えてくれていたと思う。そういう意味では、「悪い人」(というか本当の意味での人の悪さ)は出てこない映画だった気がする。(姉や神父が、どれほど彼女の将来を真剣に考えてくれていたか。親としてのワガママ(親心?)を一瞬見せてしまっても、母親も非常に聡明で我慢強い人で、だからこそ「これ以上話していたら、自分は娘を困らせるだけだ」とすぐに気づき、その場で彼女との別れを決心したのだろうと)


映画の冒頭、初めて乗った船の上で、エイリシュは手紙の遣り取りにどのくらいの日数がかかるのか、アメリカに帰る女性に尋ねる。

「そうね・・・最初は長くかかるけど、すぐに時間はかからなくなるわ」

女性の返事の意味が、最初私はわからなかった。けれど、映画の終盤で「答える」側になったエイリシュを見ながら、ハッとした。返事を待ちわびる間は「長くかかる」のだ。(でもそのうち新しい環境に馴染み、故郷からの手紙にかかる時間など問題でなくなる)

「遠くにありてこそ想う」のが故郷なのだということ。同じ国内ながら、故郷を出て40年以上生きてきた自分が味わってきた苦味と、どこか共通するものを感じるシーンだった。







(教会でクリスマスの食事を提供するシーンで歌われていたアイルランド民謡の歌詞の意味を、町山智弘さんが解説しておられたので貼っておきます。映画の中での「アメリカを作った人々」という言葉は胸に染みました)

http://miyearnzzlabo.com/archives/37844

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