眺めのいい部屋

人、映画、本・・・記憶の小箱の中身を文字に直す作業をしています。

『メッセージ』

2017-06-13 22:44:22 | 映画・本

映画の冒頭、幼い娘と相手をする母親の映像が続く。淡い光、優しい音・・・切ないほど一生懸命娘を見つめる母親の瞳に胸を衝かれ、「(かつての)私なんかと全然違うなあ。大事な子で、この人もいいおかあさんなんだ」などと思いながら見ているうちに、子どもは病気で亡くなったのを知る。「ああ、そうだったんだ」

その後に続く現在の母親の日常、その佇まいが、どちらかというと暗く寂しそうに見えるせいで、私はきれいにダマサレテしまった(^^;。(で、SFの「ファースト・コンタクト」としての物語は、その直後から始まる)

あらすじを少し書くと・・・

地球上の12ヶ所に突然現れた、巨大な楕円形の飛行物体。それらがどこから何のためにやってきたのかを知るために、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムズ)は物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)らと共に、「地球外生命体」の言語を解読するよう要請される。
「シェル(殻)」と呼ばれる飛行物体の中に入って相手とのコミュニケーションを図り、情報を集めるうちに、ルイーズは断片的な不思議な夢?を見るようになる。ほとんど不眠不休の1ヶ月の後、彼らの文字の解読にほぼ成功する頃、世界各地では「彼ら」との解読・交渉?結果が各国で異なるようになって・・・

こういう「SF」としての展開が、この映画ではずっとドキドキハラハラ、緊張度が落ちないまま進行する。
素晴らしい音響効果(アカデミー賞受賞とか)。中々姿を見せない「地球外生命体」の大型生物を思わせる静かな迫力。墨絵のような、彼らの書き言葉の美しさ。
対する地球人たちの、自分たちの歴史認識(侵略する・されるの連続としか考えられない)からしか、彼らを見ることの出来ない狭量さ・・・それは現在ただ今の世界の様相でもあって、SFと言いながら、とてもリアルな内容を含んでいると感じる。

その一方で、この映画はひとりの女性科学者の生き方、その選択を描くささやかな物語でもあって、原作の「あなたの人生の物語」というタイトルの方が、私にはしっくり来るものがあった。(映画の原題は "ARRIVAL" 。タイトルが3つとも違うのも面白い)

「地球外生命体」に対して、ルイーズたちは種族名を「ヘプタポッド(七本脚)」、個体名は「アボットとコステロなんてどう?」などと命名するのがいかにもアメリカ~?だけれど、実際の彼らは地球人よりずっと知的に高い生き物に見えた。

彼らの言語と「時」の観念の関係や、それを苦労して解読する過程で、(おそらくは彼らに「選ばれて」)彼らの本当の力に触れ、言語と共にその一端を自分の身に取り込むことになるルイーズ・・・

その結果、最後に彼女が迫られた選択と、彼女が選んだもの、そしてなぜそれを選んだのかという理由について、私はしみじみ納得するものがあった。自分でも同じ選択をするだろうと、ごく自然に思った。冒頭の映像で自分が感じたものも、ここに繋がっていたのだと。

それでも、「選択」後の彼女の人生のエピソードがひとつひとつ浮かぶようで、胸が詰まった。


映画はまだ上映中だし、何を書いてもネタバレになりそうで、思っていることが素直に書けない。(そもそも自分の受け取り方で、合っているのかどうかにも不安が残ったり)

原作者(テッド・チャン)はSF界ではとても有名な作家だそうで、家にも彼の小説の載った短編アンソロジーがあったので読んでみた(「商人と錬金術師の門」)。「時間」の考え方が独特で、この『メッセージ』にも通じる作品だと感じた。

原作の「あなたに読む物語」もいつか読んでみたいと思う。

『メッセージ』では、前半はわざと観客のミスリードを図っていて、何がどういう順番で起きているのか(エイミー・アダムスの年齢変化も外見からは判らず)わかりにくいまま話が進む。それでも私が、最初からずっとこの映画に惹き付けられて観ていたのは、未読の原作と相性がいい(多分)のと、その物語を最高のデザイン、最適の音(音楽・音響)で映像化していると感じたからだと思う。(読んでもいない小説のことを厚かましくも書く自分(^^;;;)

こういう映画を「スクリーン」で観られたのが本当に嬉しい。



http://blog.livedoor.jp/hayasinonene/archives/50199029.html (日記ブログより)

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