むじな@金沢よろず批評ブログ

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無視できない42%の力、台湾市民社会の成熟 国民党も自制するだろう

2008-03-29 18:43:08 | 台湾政治
そういえば、58%対42%という差ばかりが問題になりがちだが、それは事前に逆転勝利の可能性もあるという指摘が各所から出てきた来る意外感から票差がクローズアップされているのであって、冷静に見てみると、先にもあげたレファレンダム同時実施という技術的な不利にもかかわらず、あえて台湾の民主主義にバランスが必要だという確固とした意思、候補者の能力をちゃんと見極めたうえで、42%、544万人もが謝長廷に投票し、さらにほぼ同数がレファレンダムにも投票したというのは、台湾市民意識の高さを示すものである。42%、544万人もの人びとに改めて敬意を表したい。あなたがたは立派です!

というのも、日本や米国で、果たして民主主義の意味を考え、政策や能力をちゃんと見極めたうえで、投票する人間が42%もいるだろうか?おそらく20%にも達しないだろう。
それが台湾で42%、544万票もいたということはある意味で驚異的であり、台湾人を見直した次第だ。

また、それほど考えず安易に投票したと見られがちな58%、765万人の中でも苦悩した人は少なくないだろう。事実27日の三立「大話新聞」では「視聴者からのファックス」として「私は能力や政策的に謝長廷を支持していたが、最終的に馬英九に投票した」としてその理由を「これまでの8年のように国会空転による沈滞を避けたかった」と紹介していた。
つまり、潜在的な謝長廷支持者であっても、国会運営を憂いて仕方なく馬英九に流れたという側面があるということだ。

だとしたら、現象的に220万票、16ポイント差という差ばかりが強調されていることも、それぞれの投票の意味合いを考えれば、謝長廷支持の42%、544万票のもつ力と意味合いはその数字以上のものを持っているといえるだろう。これは未来の馬英九政権に対する強力な監督・批判勢力となるということである。また馬英九に入れた58%も決して国民党に白紙の手形を渡したということを意味しないという意味合いが見えるはずである。
2012年には行って来いで8ポイントの差は、いくらでもひっくり返る可能性がある。
だからこそ国民党や馬英九も勝った後、顔を引き締めているのだ。
(それに比べて、2ちゃんねるにおいて「たれ猫」を名乗る元軍人だとか一部の深藍のはしゃぎぶりは、頭が悪すぎる。将来馬英九政権が躓いて、不人気になるとすれば、現在いい気になっている支持層やシンパたちの愚かさがその種を播くといえるだろう)
そうでなくても馬英九の政治家としての能力の低さはつとに有名であり、8年間野にあった国民党も以前ほど人材がいないことも指摘されているのだ。

また、馬英九当選で調子に乗った一部の国民党議員が、謝長廷の息子が兵役中で休暇をとって父親の選挙会場で壇下から応援していたことを「軍務違反」と騒いで、追い詰めようとした。その主な人物である廖汝順が、すぐさま国民党支持層を含む市民から「お前は血も涙もない」と一斉に非難を浴びて、謝長廷の息子への追及を停止せざるを得なくなってしまった。

要するに、それだけ市民の声は強まっているということだ。国民党も以前のような独裁、特務政治など迂闊なことはできない。かといって、なまじ「経済浮揚」という期待を与えて政権復帰しただけに、短期間で経済が上向かなければたちまち引きずりおろされることだろう。
それは「野党から与党となった不慣れ」だった陳水扁政権に対する風当たりよりも早く、強く訪れるはずだ。なんといっても国民党は「かつて長期政権を握ったことがあるベテラン、プロ」で、だからこそ、市民から信任と期待を受けたのだから。

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