むじな@台湾よろず批評ブログ

台湾政治、台湾語、国際政治情勢、アラブポップスなどについて批評

ようやく「東方台湾語辞典」をゲット!

2007-07-05 06:56:15 | 台湾言語・族群
ようやく「東方台湾語辞典」をゲットした。旧版の天理大学おやさと研究所版に比べて、時代が新しいだけあって、見やすい。挿絵もついて、旧版では重視されていなかった現代の日常語もある程度補充されている。事前に聞いていた話では語彙を減らすということだったが、どうやら「まえがき」によれば使わない語彙をカットしたのに過ぎず、実際には語彙は増えていると思う。
良いと思ったのは、旧版にはなかった gou7-si3-saN, ku-mou, kong3-ku, soの項目にso iN5-a2-thng などが追加され、さらに sian7 と thiam2 の語義説明が現代台湾語のそれとずれていたのも、語義を追加して正されていた。
ローマ字表記は旧版同様、伝統的な教会ローマ字で、漢字は基本的に総統府の「台日大辞典」に依拠したもの。これも良い。末尾には教育部が昨年公布した「台湾ビン南語ローマ字ピンイン方案」との対象表も収められている。

◆不満をいくつか
しかし不満もある。
たとえば、方言音。旧版では見だし語が南部音が基本で、北部も併記され、しかも北部音からも引くことができたのに、それは巻末の「方音差異対照表」に委ねられたが、たとえば方言音が数種類あるものは、これではわからない。たとえば「かゆ(粥)」は、新版だとbe5しかあげられていないが、これはmoai5, moe5もある。また、ian-chhiang(腸詰)は南部ではian-chhian5という言い方もあるがこれは載っていない。
また、辞書にはつきものの、間違いや不足点も目に付く。
追加された「ku-mou」の語義説明が「[形](ためらっていて)さっぱりしない」とあるが、確かにそういう意味がないわけではないが、普通使われている意味は「細かいことにこだわる」という意味だろう。さらにそこから派生して「判断が遅く、人をいらいらさせる」という意味もあるが、主に使われるのは「細かいことにこだわる」ということ。だから日本人は台湾人から見て「ku-mou」だと見られがちだ。これは実は正しく説明している辞書がない。台湾で出た台湾語辞典ではあまり収録されていないが、メリノールの台英辞典には載っている、しかし語義が「evasive, secretive」と、やはりずれている。
また「gou7-si3-saN」だが、「[名]内容の乏しい話」とあるが、これは名詞だけではなくて、形容詞、副詞的用法もあり、しかも語義としては主に「意味がない」で、さらに「重点がずれた」「悪さ(をする)」「めちゃくちゃ」「出鱈目」みたいな意味もある。また、「siaN2-mih8 gou7-si3-saN e5?」で、「siaN2-mih8 oaN2-ko」と同じように「何のことだ」みたいな使い方もある。そういえば、oaN2-koのところの語義にも、この語義と用法が載っていない。
それから、「so iN5-a2-thng」は、ちゃんと「日本語の団子で、談合と発音が似ている」と語源説明があるのが、同じように日本語の駄洒落から派生した「kong3-ku」には「くじの外れの隠語スカから、動物のスカンクを連想し、スが脱落してカンクとなり、コンクウと転訛した」という説明がない。ちょっと煩雑だからだろうか。また、これの第二語義で「失敗する、どじを踏む(→sit-pai7失敗)」だけが参照されているが、日常用語としては、「chhoah-sai2」も「どじを踏んだ、とちった」という意味で使われることが多い。
旧版から訂正されていない間違いとしては、「sam-pat」の語義注解で「▼思慮もなく軽率に振る舞う女に対していう」とあるが、今では男に対しても使うのが普通である。また、「ou-lou2-bok8-che5」という見出し語があって、さらに漢字で「烏魯木齊」とあるが、これは大間違い。最後の che は che3 であって、che5ではない。従ってこれはウルムチとも関係がない。これは2003年に陳水扁が中華民国憲法についてそう発言して、統一派メディアに「ウルムチを馬鹿にするものだ」と叩かれたときに、私が以前中国時報に「声調からいって、ウルムチとは関係ない、別の語源の言葉」と指摘したことがあるが、声調を間違えるのはいけない。もっとも、これは総督府の台日大辞典の誤りをそのまま引き写したことによるchhoah-sai2なのだが、でもメリノールの台英辞典では、ただしく「ou-lou2-bok8-che3」となっている。どうしてメリノールを参照しなかったのだろう?
ホーロー人を「Ho5-lo2-lang5」としているのも声調の誤りだろう。これは、ホーロー語のウィキペディアその他台湾の資料で「Ho7-lo2」としているように、最初の音節は7声とすべきだろう。もし5声であるなら、南北で転調が異なるはずだが、これは転調先は違わないで、3声で発音されているから、本調表記は7声にすべき。同じことは、「liam5-piN」についてもいえる。これはしかも「連鞭」の漢字を当てているが、これも疑わしい。
日常用語で次の語彙がないのが気になった。hiau-pai(高慢な)、pat-tai2ボケた、馬鹿になる)、a-sa-bu2-luh(めちゃくちゃ)、ku-mouの親戚としてniau-mou(ku-mouよりも意味が狭くさらに程度が激しい「細かいことにこだわる」)、sui-bong2(雖然=ではあるが=と同じ意味でより台湾語固有的表現)、ou-iu2--khi0(烏有去、なくなってしまう、おじゃんになる、一瞬発音だけだと「お由紀」に聞こえるw)、lau7 hoan-tian(記憶力が悪くなっている老人のボケ、李登輝転向発言に対してよく台湾人が使っていた)、それからang5-hou7(紅雨、日ごろの行いと違うことをした人を冷やかすときに、紅雨が降るという言い方をする)なども入れてもいいかもしれない。
それから気づいたことだが、「本辞典を使用される方に」のixページで、エスニックグループ別人口として、いまどき黄宣範1995年の推計数字を挙げているところも気になった。これは最近になって行政院客家委員会や文化建設委員会といった政府機関による公式の推計数字が出ているので、そっちを使用すべきだろう。黄宣範氏の研究は素晴らしいものであるが、数字そのものはもはや古すぎるし、一個人による推計に過ぎない。

◆不満はあれど使える辞書であるのは間違いない
もちろん、辞書には間違いがつきものだし、間違いがあったとしても、それは改訂時に訂正すれば済むことだ。以上つけた注文は決してこの辞書をけなしたものではない。逆に私はこの辞書の旧版を20年前の学生時代に最初に買って以来、ずっと手元に置いて愛用し、学ぶところも多かった。今回の新版も挿絵もついて見やすくなったこともあって、非常に良い辞書だと思う。
台湾語で使える対訳辞書は少ないうえ、現在一般に入手できるのがこれを除いて皆無である以上、この辞書は文句なしに台湾語学習者が購入して使いこなすべきである。間違いを探すことも勉強のうちであるし、得られるところはそれ以上に多い。
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エスニックグループ 行政院客家委員会 ホーロー語 ホーロー人 中華民国憲法 ローマ字表記
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2007-07-05 14:11:55
http://homepage2.nifty.com/Gat_Tin/tohotai.htm
『東方台湾語辞典』にみえる不適切な記述

この人の指摘は植物名に片寄っているし、不適切というほどのこともないとは思います。

むじな先生も入っているmixiの台湾語トピからの転載

「付録で本当に増えたのは白話字・台羅差異一覧だけ。他の付録も、常用量詞一覧みたいに補強されたものもあるけど、どちらかというと、これは本文の中に入れるべき情報でしょう。表を付けるなら、参考にしたというMarytknoll『台語英語字典』の量詞表みたいに、この量詞はどういう名詞に使うという排列の方が望ましいでしょう。内容も『台語英語字典』の表の方が詳細ですし。
 日本語索引は1.4万以上ありそうで、7〜8割増しになってますから、かなりの充実。でもこれを見るとインターネットも地下鉄もキーボードもかき氷も載ってないのがすぐに分かりますね。社長というのも無いけど、これは語釈不足か。」
吉田良夫の独りよがりな指摘 (むじな(本人))
2007-07-06 01:59:39
>この人の指摘は植物名に片寄っているし、不適切というほどのこともないとは思います。

GatTinは昔ニフティで中国語と広東語関係で書き込んでいた吉田良夫氏。オフで何回もあったことがあるが、すごく中華主義的で偏った人なんだよね。広東屋さんに多いタイプだけど。台湾は広東とは違うんだから、中途半端な知識で勝手に荒らさないで欲しいものだけどね。

そもそも吉田氏、台湾語そのものをわかっていないんだろうね。
だから、動植物名に偏るしかないし、それ以外だとすぐにわかっていないことが暴露されちゃっているw。
たとえば、三八と性感については、台湾語での意味は、はっきりいって辞典のほうが正しい。吉田氏は広東語の意味をむりやり当てはめようとしているだけ。広東語と台湾語ではまったく違うことがわかっていない。

>むじな先生も入っているmixiの台湾語トピからの転載

おれ、ミクシイなんて入っていないよ。

>「付録で本当に増えたのは白話字・台羅差異一覧だけ。他の付録も、常用量詞一覧みたいに補強されたものもあるけど、どちらかというと、これは本文の中に入れるべき情報でしょう。

そうは思わないが。
それにこれは「おやさと」の増補版に過ぎないし、事実上一人で書いたんだから、編集上しょうがないんじゃないかな。

>表を付けるなら、参考にしたというMarytknoll『台語英語字典』の量詞表みたいに、この量詞はどういう名詞に使うという排列の方が望ましいでしょう。内容も『台語英語字典』の表の方が詳細ですし。

別にそうは思わないが。

>日本語索引は1.4万以上ありそうで、7〜8割増しになってますから、かなりの充実。でもこれを見るとインターネットも地下鉄もキーボードもかき氷も載ってないのがすぐに分かりますね。社長というのも無いけど、これは語釈不足か。」

社長って、台湾語でどういうかは定訳はないからな。なぜかそのまま「社長sia7-tiuN2」とする場合もあるし。

ご指摘のHPでの吉田氏の批評でおかしなところ:

>ほかに改善すべき課題として、漢字から台湾語の読みを調べる手段を与えること(漢字の部首順索引など)が必要でしょう。例えば、この辞書を持って台北に行って「花枝焿」という看板を目にし、意味を調べようと思っても調べるすべがないというのではどうしようもありません。

だって、台湾での台湾語の事物の漢字は、固定したものがないから、漢字で調べようがない。
確かに漢字もあったほうが理想的だと言うのは勝手だが、それは歴史的に台湾語が抑圧されて、漢字による固定したものがないことを無視した広東語中心主義者の勝手な思い込みに過ぎない。

頼むから「広東語」の発想で台湾語を騙るのはやめてくれーーー!>吉田!

>漢字が訓読、当て字の場合注記すること、学習の便のために重要語に印をつけることなどの改善も検討すべきでしょう。

漢字は原則的に台日大辞典のものを踏襲しただけ。

>実態は『現代閩南語辞典』の新版にすぎません。

もともとそういう趣旨ですが?何を言いがかりをつけているのやらwww。

>日本語索引は充実しましたが、それによって逆にこの辞典の欠点である、語彙不足も一目でわかるようになったように思います。収録語彙13500というのは、少し学習が進むと、載っていない語彙が目立つレベル。

それなら、お前が作れよw。
というか、学習が進んだ人間は、台日大辞典を手元に置くのが常識。
まあ、世の中には、台湾語専攻の博士課程院生でも、台日大辞典を手元に持っていないようなのがいるようだけどw。

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