トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

ストロング・メディスン

2010-07-17 20:43:50 | 世相(日本)
 アーサー・ヘイリーの小説に、米国の製薬業界の人間像を描いた『ストロング・メディスン/Strong Medicine』(1984年)がある。彼の作品では珍しく女性が主人公であり、プロパー(外交員)社員として製薬会社に入社した凄腕セールスウーマンが様々な苦難を乗り越え、ついに女性CEO (邦訳当時この言葉はなかったが)にまで上り詰めるというサクセスストーリー。この小説の中には薬害の話もあり、主人公シーリアは自社の犯した薬害について、苦境に立たされる。

 シーリアの勤務する大手製薬会社は、妊婦のつわりを抑えるという画期的な新薬「モンテイン」に社運を賭け、大々的に売り出す。この薬はフランスの会社が開発したものだったが、シーリアの会社が販売契約をとることとなった。だが、医師である彼女の夫は妊婦への投薬に疑念を表し、少数例ながらこの新薬が新生児に悪影響を及ぼすという報告も入ってくる。取締役会で唯一反対を唱えたシーリアだが、彼女の能力を評価している社長も開発部長も発売に踏み切る。TVでコーラス付きのCMを派手に流し、売り上げは順調だった。
 やはりシーリアの危惧は的中し、「モンテイン」を服用した妊婦には障害児が生まれる事例が何件も発覚する。社長もまた妊娠していた娘にこの新薬を与え、孫は障害をもって生まれてきた。そのため、娘夫婦は離婚に追い込まれ、苦悩した社長は自殺する。夫も父も失い、障害児を抱え悲嘆する社長の娘に、かける言葉もないシーリア。20年以上前に読んだ小説だが、この薬害の箇所は忘れ難い。

 先日、子宮頸がんを予防するワクチンのことを報じたNHKニュースを見た。十代前半の少女にこのワクチンを投与すれば、子宮頸がんが予防出来るという紹介であり、ワクチン接種の公費助成を求める内容だった。NHK仙台でも、宮城県内で既に公費で母親が娘にワクチン接種を受けさせたケースを取り上げていた。これらのニュースを聞き、私はふと小説『ストロング・メディスン』と、サリドマイド事件のことを思い出した。
 サリドマイド児といっても、今の若い人は初耳かもしれないが、妊婦が服用した睡眠薬で、多くの奇形児が生まれたため、その薬品名からサリドマイド児と名称された。手足が極端に未発達な状態で生まれ(アザラシ肢症)、TVで彼らを見た時は子供心に衝撃的だった。発売当初、副作用も少なく安全な薬と宣伝されたことから、妊婦のつわりや不眠症の改善のために多用され、それが被害を拡大させたたことがwikiにも載っている。

 子宮頸がんワクチンでネット検索してみたら、案の定安全性を疑問視するサイトがヒットした。特に「子宮頸がんワクチンの危険性」というサイトは興味深い。ブログ「医師の一分」でも、このワクチンが取り上げられているが、前者のサイトの方が情報が詳細である。最近あまりTVを見ない私だが、子宮頸がんワクチンの安全性を問う報道など果たしてあったのだろうか?「子宮頸がんワクチンの危険性」から、私が気になった箇所を一部引用したい。
特に最近のアジュバンド(免疫賦活剤または免疫増強剤)を添加した各種の新型ワクチンがもたらす人体への長期的な影響については、いまだ実験段階にあり、不妊症を引き起こす可能性が、ささやかれています…
ワクチンを接種しても子宮頸がんにかかる可能性がある」と製薬会社もはっきりと述べています…


 コラム「子宮頸がんワクチンの危険性」の見出しで、特に私の関心を引いたのは「新型インフルエンザ・パニックの次は“子宮頸ガンパニック”?」「ワクチン強制接種への動き」。管理人も書く通り、昨年の新型ウイルス騒動は異様だった。「執拗に「新型インフルエンザの危険性」の報道が日々、繰り返され」ていたのを異常だと感じた方も少なくなかっただろう。さらに子宮頸がんワクチンの義務化を児童に課す国が出てきており、多くの欧米諸国では、接種を促進させるために公費負担で無料化を推進しているという。だが、十代前半の児童への接種を疑問視する人もおり、ワクチン接種後の死亡例も何件かあったそうだ。

 中年世代の人なら中ピ連という女性活動団体を憶えておられるだろう。この団体の正式名は「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」であり、代表の榎美沙子は元薬事評論家だった。当時のピルは副作用が大きく、それ自体が女性の体に悪影響を与える害もあり、さらに代表にはピル解放で利益を得る製薬会社や政治家との関係もあったと言われる。女性解放活動の陰に、製薬会社が暗躍していたと見るのは的外れだろうか。

「子宮頸がんワクチンの危険性」は次のように結んでいる。「ワクチンに対する認識があまりにも安易な社会になりつつあります。「ワクチン」という言葉でごまかされてはいけません。製薬会社の添付文書にもあるように「劇薬」です」!
 ワクチンはまさにStrong Medicine、強い医薬品なのだ。薬品の使用を否定するつもりは全くないが、程度の差はあっても、副作用のない薬はないらしい。

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
下品な投稿になります (のらくろ)
2010-07-17 22:30:00
私は「平常時先端部不完全露出型」であります。

日本人の過半数は「平常時先端部隠匿型」のようです。

で、私のような方と日本人の過半数に該当する方が、ユダヤ人やイスラム教徒のような「平常時完全露出型」と決定的に異なるのは「隠匿型」又は「不完全露出型」であるがために、容易にカスが溜まるということです。

このカスが、我々全員に共通の「ふるさと」及びその周辺部に「残留」すると、mugiさんの今回のエントリーでの主要な論点である「子宮頸がん」の主要な原因となるようであります。

ですから、自戒も込めて申し上げますが、「ふるさと」回帰の場合は、上記2型に該当の方は、「事前に」カスの徹底除去に努めること。もちろん「繁殖目的」以外の場合は、「近藤さん」のお世話になることも忘れてはいけません。

子宮頸がん抑制のためには、ワクチンよりもこちらの方が「効果的」ではないでしょうか?

下品でどーもすみません。
RE:下品な投稿になります (mugi)
2010-07-18 20:58:17
>のらくろさん、

 仰る通り、ユダヤ、イスラム教徒のように外科的療法で「平常時完全露出型」になった場合に比べると、「ナチュラル型」は“カス”が溜まりやすいという問題があります。これが「子宮頸がん」の主要な原因ばかりではなく、性病を防ぐために効果があると見られ、衛生面から欧米人キリスト教徒が外科的療法を受けるケースもあるそうです。
 しかし、場所が場所だけにそれこそ、“宝”を傷つけてしまうこともあり、その反対運動も起きているとか。そして病院で「平常時完全露出型」にしてもらいたいと思う日本人も、極めてまれではないでしょうか?

 貴方のコメントにあるように、「事前に」カスの清掃並びに、「近藤さん」を利用した方が、子宮頸がん抑制に効果的だと思います。体に悪影響が出るかもしれぬワクチンより、これらの方法の方が安全性と経済面で遥かに理にかなっています。「下品な投稿」というより、全くの正論です。マスコミがワクチンを盛んに取り上げるのも、製薬会社の鼻薬をたっぷり嗅がさられているからでしょうね。
信用できない (motton)
2010-07-20 21:43:21
紹介されているサイトですが、信用できないです。

例えば、『不妊症を引き起こす可能性が、ささやかれています』といった書き方はいたずらに不安を煽るだけです。根拠があるなら、なぜ『不妊症を引き起こす可能性が論文[1]で報告されています』と書けないのでしょうか。

『「ワクチンを接種しても子宮頸がんにかかる可能性がある」と製薬会社もはっきりと述べています』もあたりまえで、むしろ100%の効能をうたう薬や副作用が無い薬の方が確実に偽物でしょう。

他にも『水酸化アルミニウムは、マウスを使用した実験において、脳内の運動ニューロンを死滅させることが知られています。』もひどいです。
水酸化アルミニウムはありふれた物質です。塩化ナトリウム(塩)の方がはるかに毒性が強い。

近代において、ワクチン(と抗生物質)が膨大な人間を死から救ったのは間違いないことであり、ワクチンを頭から否定的に書くサイトは基本的に信用できないと考えていいと思います。

# 同じサイトの『戦争について考える』もなかなか香ばしいのではありますが。
RE:信用できない (mugi)
2010-07-20 22:13:42
>mottonさん、

 仰る通り、このサイトには扇動的な記事が見られ、特に貴方も指摘された『戦争について考える』等は、左派系のニオイを感じさせられました。そして記事の末尾にも書きましたが、私も薬品の使用を否定するつもりは全くありません。しかし、昨年の新型ウイルス騒動といい、どうもワクチンの副作用にメディアは触れたがらない。様々な薬害もあった事例から、薬品に対する不信感を持つ人もいるはず。
 連日ニュースで新型ウイルスの脅威を煽るのではなく、もう少し慎重な報道を願いますが、これはないものねだりでしょうか?海外の大手製薬会社につけ込まれ、ワクチンを買わされた印象があるのです。

>>水酸化アルミニウムはありふれた物質です。塩化ナトリウム(塩)の方がはるかに毒性が強い

 そうでしたか!私は化学にまるで弱いので、情けないほどガセネタに騙されやすいですね。 教えて頂いて、有難うございました。
 このサイトの管理人は他の記事でも暇人を自称していたので、やはり信用できない人物でしょう。ルーブル下落後のロシアで、人々が団結して混乱を乗り切ったと書いているのも甘すぎる。ブルガリア研究室さんに冷戦終結後の共産圏の惨状を教えられていたので、そんな生易しいものではないはず。
RE:信用できない (motton)
2010-07-20 23:26:16
日本の医療政策は欧米より比較的保守的に思います。
特に、子どもへの予防接種は90年代に副作用をヒステリックに問題視した影響で昔より減っています。(その結果、国内製薬メーカが弱りました。海外製薬メーカーとマスコミが組んだ陰謀だったというのは冗談ですが。)

でも、確かに新型豚インフルエンザの騒動は変でしたね。(1歳の娘は卵アレルギーがあるのでワクチンが打てず罹患して悪化したらと心配したので分からないでもない。)
もしかすると、(今後発生する可能性が高い)致死性の高い新型トリインフルエンザへの予行演習だったのかもしれませんね。

PS.
塩化ナトリウムのくだりは、化学知識の話ではなくて、毒性などのリスクというものは“定量的”に論じないと何の意味もないという常識の話でした。
DHMO のジョークは、ご存知ですか。
mottonさんへ (mugi)
2010-07-21 22:11:57
 記事にも書いたとおり、私は薬害と言えば真っ先にサリドマイド児を思い出します。映画「典子は今」も観ましたが、仰る通りこの類のドキュメンタリーは、「副作用をヒステリックに問題視した影響」を社会に与えるし、私なども影響を受けている。

>>海外製薬メーカーとマスコミが組んだ陰謀だったというのは冗談ですが

 ネットの陰謀論ではこの手の書込みが結構あります。殆どがデマでしょうけど、海外製薬メーカーとマスコミの関係も否定できません。

 昨年の新型インフルエンザでは、知人の中学一年生の息子やそのクラスメートも罹り、学級閉鎖となりました。ただ、知人の話では何故か周囲の大人は罹らなかったそうで、こうなると子がいる親の身としては不安になりますよね。不可解なのは第一次大戦後のスペイン風邪のことを何度もTVで紹介していたこと。当時と今では社会体制がまるで違うのに。

 塩化ナトリウム(塩)は身近にあるものだし、料理に使う調味料というイメージしかありません。だから毒性があると言われても、ピンとこなかった。しかし、これも食用と医療用がありましたね。

>>DHMO のジョークは、ご存知ですか

 大変情けないことに、DHMOの言葉さえ知りませんでした(汗)。wikiには、簡単に言えば水とありました。ジョークのことも載っています。
http://ja.wikipedia.org/wiki/DHMO

 件のサイト管理人は、自分は科学者ではない一般人との断りもしており、「信じる、信じないは読み手の選択」とも述べていたので、やはり「DHMOのジョーク」的な陰謀論に近いかもしれませんね。妄想と断りがあるにせよ、「世界はネットワークを通じて一つになる、その時群れていた連中は家畜同然になる…」等の書込みは、ネット依存のニートを思わせました。

 本当にネットも胡散臭いサイトも多いし、私のようなあわて者など簡単に騙されてしまいます。貴重な情報を教えて頂き、改めてお礼申し上げます。