トーキング・マイノリティ

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食を巡り宗教対立 その①

2017-07-13 21:40:16 | マスコミ、ネット

 他の地方紙は不明だが、宮城の地元紙・河北新報のインド関連報道には決まったパターンがある。インド首相の訪日は第2面でベタ記事扱いで報じるか、時に報じないこともあり、まして首相の国会演説となれば報道しない。但し日印原子力協定関連となると、インド首相の来日動向よりも大きく紙面を割く。
 河北がインド関連ニュースで取り上げるのは社会問題や宗教対立が大半であり、この方面では比較的大きな見出しで報じる傾向がある。7月3日付の国際・総合面(第5面)で、暫くぶりでインドの宗教対立を報じていた。見出しのトップが「牛肉巡り宗教対立」、続けて「神聖視ヒンズー教」「食用のイスラム教」「相次ぐ暴力事件」の見出しが並ぶ。件の記事全文を紹介したい。

ニューデリー時事】インドで人口の8割を占め、牛を神聖視するヒンズー教徒が、食用肉として牛肉を扱う少数派イスラム教徒に対し暴力を加える事件が相次ぎ、根深い宗教対立として社会問題化している。6月には牛肉を売った少年が殺害される事件も発生。ヒンズー至上主義団体と関わりの深いモディ首相も、懸念を表明する事態に発展している。
 インド紙タイムズ・オブ・インディアによると、首都ニューデリー近郊を走る列車内で6月22日、イスラム教徒のジュナイド・カーンさん(16歳)が十数人の男に囲まれ、刃物で刺されるなどして死亡した。同行していた兄弟の話によれば、カーンさんは購入した牛肉を運んで帰宅中、男らに咎められ、殺害されたという。

 同29日にも東部ジャルカンド州で男性が殺害された。同様の暴力事件は全国で頻発し、タイムズ・オブ・インディア紙によると、2014年以降、イスラム教徒23人が殺害された。22日の事件では、逮捕された容疑者の中にニューデリーの市職員2人が含まれた。公務員まで事件に関わる現実は憎悪の深刻さを示している。
 モディ首相はこうした事件を受け29日の演説で、「牛の名の下の殺人は許されない」と懸念を表明した。ヒンズー至上主義団体を母体とする与党インド人民党(BJP)出身のモディ首相は5月、食肉処理を前提とする牛の売買を禁止するなど流通規制を進めてきたが、6月22日の事件後、各地でイスラム教徒らによる抗議活動が発生、社会の混迷が深まっている。

 多くの日本人はインドに無関心だし、上の記事だけを見れば、たかが牛を運んでいただけの16歳の若者を、寄ってたかって殺害したのだから、“リアル土人国家”呼ばわりするのは当然だろう。日本や欧米諸国とのあまりの社会基準の違いに、慄然とした新聞読者は多かったと思う。
 だが、ある程度インドに興味のある人ならば、牛肉を巡る毎度の宗教対立と特に驚かないだろうし、この類の対立は英領インド時代からあったことを知っているはず。記事は“社会の混迷が深まっている”と結んでいるが、各地でイスラム教徒らによる抗議活動が発生するのも何時もながらだし、“社会の混迷”が日常化している国なのだ。

 むしろ私は、タイムズ・オブ・インディアが発表した犠牲者数に注目した。2014年以降、ムスリムが23人が殺害されたとあるが、犠牲者数はこれより多いことも考えられる。警察組織はほぼヒンドゥー教徒やシク教徒で占められ、ムスリムが殺害される事件にあまり熱意を持たない傾向があり、事件として処理されないこともあるのだ。
 3年半で30人ほどが殺害されたと仮定すると、年平均8.5人となり、思った以上の少なさに驚いた。こう書くと、このブログ主は何を言っている、正気か、と思った読者もいるだろう。そんな方にはインドの総人口を考えてほしい。2015年時点で総計13億1000万人とされ(wiki)、中国に次ぐ世界第2位の人口大国である。

 牛を巡るヒンドゥーとムスリムの対立の火種は常にあり、多数派の前者は独立後から牛肉の食肉を禁止する方針を次々と打ち出していた。特に現首相モディの出身地であるグジャラート州ガンディーの故郷でもある)はその傾向が強く、牛肉売買は絶対譲れない問題となっている。
 尤も世界第1位の人口を誇る中国でも食を巡る対立はあり、こちらは豚肉なのだ。漢族と回族などのムスリム少数民族が揉める最大の原因は、やはり豚であり、漢族固有の異民族差別主義が背景にある。但しインドと違い、こちらの民族対立は日本では報じられない。

 2012-3-11付の記事でも書いたが、何しろ河北新報とは台湾の国旗を“白旗”で載せるほど、中共に異様に忖度しているクズ地方紙でもある。台湾の正式な国旗すら挙げないだけで、この新聞社の在り様が知れよう。
その②に続く
 
◆関連記事:「タマス―暗黒―
 「ヒンドゥー至上主義

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