トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

世界を震撼させた日本人テロリスト その③

2017-06-30 21:10:09 | 世相(日本)

その①その②の続き
 wikiで初めて知ったが、岡本公三は熊本県出身である。「テロリストは地獄の果てまで追いつめろ!」のブログ主も熊本県民だし、私も岡本がもし宮城県民だったら、より憤慨しただろう。但し、岡本に影響を与えた人物に宮城県出身者がいたことを今回初めて知った。その者こそ映画監督の若松孝二
 1971年、岡本は鹿児島大学にやってきた若松・足立正生監督の映画『赤軍-PFLP世界戦争宣言』に共鳴、上映運動を展開する「赤バス隊」に参加し、日本赤軍に加わったのは1972年3月だった。ロッド空港乱射事件はそれから僅か2ヶ月後なのだ。
 wikiには岡本の渡航費用等30万円を支援したのは若松であり、若松プロダクションには岡本が書いた「借用書」が飾られていることも記されている。

 宮城県涌谷町(わくやちょう)出身ということもあり、河北新報では若松を社会派映画監督と持ち上げ、2012年10月に死去した際、追悼特集まで載せていた。尤もwikiの経歴だけでもチンピラ並みの粗暴な男であることが伺えるし、農業高校中退の非インテリだった。河北は若松が岡本を支援していたことを全く触れず、“社会派映画監督”等は狡猾なイメージ・ロンダリングに過ぎない。
 若松の映画を私は1本だけ見たことがある。『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』がそれで、封切時には河北が大きく紹介している。題名通り、日本中を震撼させた極左集団・連合赤軍による山岳ベース事件と、それに続くあさま山荘事件ををテーマとした作品である。

 この作品はリアル性で評論家から高く評価されたそうだが、私には “実録”と銘打っているにも関わらず、国家権力に追い込まれた若者たちというスタンスで同調的に描いた作品としか思えなかった。実際は凄惨だったはずの同志へのリンチシーンでは殆ど流血もなく、妊娠8か月で惨殺された金子みちよ(享年24歳)に至っては、死体を映すだけで顔には痣ひとつ無し。
 赤軍指導部は金子の腹から赤ん坊を取り出すことも検討していたのだが、そんな台詞は一切なく、赤軍派シンパによるイメージ・ロンダリング映画だったのだ。

 2008年6月半ば、この映画の感想を記事にしたが、それから9か月後、次のコメントがあった。
 (dufhgi)
2009-03-07 12:38:57
この事件をあなたのように片付けて納得してしまうの人がほとんどでしょうね
だからこそ人間は懲りもせず同じような過ちを繰り返すのですが・・・
なんにしろこの映画だけで全体を理解するのは不可能です
当事者の書いた本がいくつか出ているので読んでみてください

 4行でも、明らかに赤軍にシンパシーを感じている者からのコメントは不快だったし、私も嫌味たっぷりな返信をした。
もちろん、この映画だけであの事件の全てが理解出来るとは私も思っておりません。あの上映時間内では到底描ききれる内容のものではないし、監督の意向もあり、スタンスにより解釈はかなり異なってくる。そう仰るあなた自身、あの事件をどれだけ把握されているのでしょうね。
 当事者の書いた本にせよ、赤軍派に限らず人間は自己正当化と弁護が強く働くので、それが全てを物語るとは到底言えません。総括や反省したフリをしつつ、少しでも己に有利な証言やプロパガンダを図る目的もあると私は睨んでいます。それを赤軍派シンパは針小棒大に拡大解釈、“普通の若者”による善意あふれる反国家闘争とでもこじ付ける。
 当事者の本を鵜呑みにするのは単純極まる見方ですが、どうもあなたは当事者の書いた作品をそっくり信用したいようですね…

 当事者の書いた本を読んだブロガーによる記事もあり、「人生論的映画評論」で取り上げられている。ここでも評価は低く、<『実録』の名の下で希釈化され、削られた描写が照射した『事件』の闇の深層>の見出しで始まっている。「「実録という名の映像のトリック」と断言した一文に、共感者を得た思いになった。
 あさま山荘事件でも人質の夫人に対し、必ずしも最も倫理的で柔和な対応をした訳ではない事実が記されている。実際は夫人は洗濯用紐で拘禁されており、「実録」とは言えない。ブログ主に言わせれば若松は、「丸ごとイデオロギーに浸かった作り手」ゆえ、史実とは異なる創作映像の作り手といえる。

 映画では敵役となった警察権力だが、ブログ主の次の文章は重い。
私には寧ろ、催涙ガス、発煙筒、放水などという原始的な「武器」によって対応せざるを得ない、この国の守備警察の「迎撃能力の縛り」の現実に驚きを禁じ得ないのだ
 ネットでは山岳ベース事件犠牲者の死体画像を転載する記事もあり、まさに【閲覧注意】状態。リンチの果て惨殺された2人の男女の遺体には言葉を失う。共に25歳の死だった。

 クリスチャンは己の信じる宗教をよく「愛の宗教」と自慢するが、この聖書の一節はテロリストのような凶悪犯罪者に実に相応しい。
だれでも、人を撃ち殺した者は、必ず殺されなければならない」(レビ記:24-17)

◆関連記事:「総括という名のリンチ殺人
 「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
 「テロリズム―まず憎悪ありき

よろしかったら、クリックお願いします
人気ブログランキングへ   にほんブログ村 歴史ブログへ

『事件』 ジャンルのランキング
コメント (4)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 世界を震撼させた日本人テロ... | トップ | 年上妻 »
最近の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
岡本という姓 (madi)
2017-07-07 11:14:00
 わたしは姓が岡本なので(血縁はありません)、イスラエルでは嫌われているとおもっていましたが、切手収集家仲間のイスラエル人では別に気にしていないということでした。秘書に杉原というながいるが、それがいい名前として知られているかということもとくに気にしていないということでした。

 親戚の経験ではアラブでは岡本が歓迎されることがあるようです。
Re:岡本という姓 (mugi)
2017-07-07 21:11:04
>madi さん、

 興味深いお話を有難うございます!イスラエルであの忌まわしい事件は、岡本の名と共に記憶されているかと思いきや、必ずしも拘りはないようですね。杉原の名さえ特に気を引かないというのは面白い。

 今は不明ですが、かつて東南アジアでは、日本人男性はオカモトと呼ばれることがあったそうです。避妊具メーカーの名にちなんでらしく、アラブとは別の歓迎をされたとか。
英語でのオカモトは (madi)
2017-07-10 00:31:44
避妊具の意味の一般名詞として通日地域がおおいのです。
Re:英語でのオカモトは (mugi)
2017-07-10 22:30:54
>madi さん、

 何しろシェアNo.1を誇るメーカーですからね。関係のないオカモトさんには迷惑ですが。ただ、このメーカーは避妊具ばかりではなく、様々な産業用品も生産しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%82%AB%E3%83%A2%E3%83%88

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

世相(日本)」カテゴリの最新記事